2018-1016-man2974
万葉短歌2974 紫の2786
紫の 帯の結びも 解きもみず
もとなや妹に 恋ひわたりなむ ○
2786 万葉短歌2974 ShuF579 2018-1016-man2974
□むらさきの おびのむすびも ときもみず
もとなやいもに こひわたりなむ
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第11首。男。
【訓注】もとなや(本名也)。
2018-1016-man2974
万葉短歌2974 紫の2786
紫の 帯の結びも 解きもみず
もとなや妹に 恋ひわたりなむ ○
2786 万葉短歌2974 ShuF579 2018-1016-man2974
□むらさきの おびのむすびも ときもみず
もとなやいもに こひわたりなむ
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第11首。男。
【訓注】もとなや(本名也)。
2018-1015-man2973
万葉短歌2973 真玉つく2785
真玉つく をちこち兼ねて 結びつる
わが下紐の 解くる日あらめや ○
2785 万葉短歌2973 ShuF578 2018-1015-man2973
□またまつく をちこちかねて むすびつる
わがしたびもの とくるひあらめや
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第10首。男?女?
【訓注】真玉(またま)。をちこち(越乞)[04-0674真玉付 彼此兼手(またまつく をちこちかねて)、02-0220彼此之 島者雖多(をちこちの しまはおほけど)、など。07-1300に「遠近」]。我が(わが=言)[10-2129言恋(あがこひ)、11-2534言恋]。下紐(したびも)[この用字、集中すべて「したびも」訓]。
2018-1014-man2972
万葉短歌2972 赤絹の2784
赤絹の 純裏の衣 長く欲り
我が思ふ君が 見えぬころかも ○
2784 万葉短歌2972 ShuF571 2018-1014-man2972
□あかきぬの ひたうらのきぬ ながくほり
あがおもふきみが みえぬころかも
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第9首。女。
【訓注】赤絹(あかきぬ=赤帛)[下記注]。純裏の(ひたうらの=純裏)[総裏の]。我が思ふ(あがおもふ=我念)。
【編者注-きぬ】原文用字は、「衣」がふつう。「絹」は、07-1264買師絹之(かひてしきぬの)、09-1723(題詞)「絹歌一首」、16-3791(長歌)絹帶尾(きぬのおびを)、の3か所。「帛」は、衣料用語としては、ここだけ。
2018-1013-man2971
万葉短歌2971 大君の2783
大君の 塩焼く海人の 藤衣
なれはすれども いやめづらしも ○
2783 万葉短歌2971 ShuF571 2018-1013-man2971
□おほきみの しほやくあまの ふぢころも
なれはすれども いやめづらしも
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第8首。男。
【訓注】大君(おほきみ=大王)[「武烈即位前紀に拠れば、天皇の塩はもっぱら敦賀産(越前角鹿〔つのが〕産を用いたという。] 海人(あま=海部)。なれ(穢)[<「褻(な)れ」と「馴れ」とを懸ける>。03-0413藤服 ・・・ 未著穢(ふぢころも ・・・ いまだきなれず)、07-1312下服而 穢尓師衣乎(したにきて なれにしきぬを)、11-2622塩焼衣 雖穢(しほやききぬの なれぬれど)、-2623八塩乃衣 … 穢者雖為(やしほのころも ・・・ なれはすれども)、-2971藤衣 穢者雖為]。
2018-1012-man2970
万葉短歌2970 桃花染めの2782
桃花染めの 浅らの衣 浅らかに
思ひて妹に 逢はむものかも ○
2782 万葉短歌2970 ShuF571 2018-1012-man2970
□ももそめの あさらのころも あさらかに
おもひていもに あはむものかも
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第7首。男。
【訓注】桃花染めの(ももそめの=桃花褐)。浅らの衣(あさらのころも=浅等乃衣)。浅らかに(あさらかに=浅尓)[2018-1008-man2966 参照]。
2018-1011-man2969
万葉短歌2969 解き衣の2781
解き衣の 思ひ乱れて 恋ふれども
何のゆゑぞと 問ふ人もなし ○
2781 万葉短歌2969 ShuF571 2018-1011-man2969
□とききぬの おもひみだれて こふれども
なにのゆゑぞと とふひともなし
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第6首。男。
【原文】12-2969 解衣之 念乱而 雖恋 何之故其跡 問人毛無 作者未詳
2018-1010-man2968
万葉短歌2968 橡の2780
橡の 一重の衣 うらもなく
あるらむ子ゆゑ 恋ひわたるかも ○
2780 万葉短歌2968 ShuF571 2018-1010-man2968
□つるはみの ひとへのころも うらもなく
あるらむこゆゑ こひわたるかも
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第5首。男。
【訓注】橡(つるはみ)。あるらむ子(あるらむこ=将有児)。
2018-1009-man2967
万葉短歌2967 年の経ば2779
年の経ば 見つつ偲へと 妹が言ひし
衣の縫目 見れば悲しも ○
2779 万葉短歌2967 ShuF571 2018-1009-man2967
□としのへば みつつしのへと いもがいひし
ころものぬひめ みればかなしも
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第4首。男。
【訓注】妹が言ひし(いもがいひし=妹之言思)。見れば悲しも(みればかなしも=見者哀裳)。
【類想歌】04-0514 我(わ)が背子が 着(け)せる衣の 針目おちず 入りにけらしも 我(あ)が心さへ 作者未詳
15-3753 逢はむ日の 形見にせよと たわや女の 思ひ乱れて 縫へる衣ぞ 作者未詳
2018-1008-man2966
万葉短歌2966 紅の2778
紅の 薄染めの衣 浅らかに
相見し人に 恋ふるころかも ○
2778 万葉短歌2966 ShuF571 2018-1008-man2966
□くれなゐの うすそめのきぬ あさらかに
あひみしひとに こふるころかも
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第3首。女。
【訓注】浅らかに(あさらかに=浅尓)[「下へは軽い気持で、さして心も入れずに」。集中、ここと、12-2970浅尓(あさらかに)の2か所だけ。下記注]。
【編者注-あさらか】浅らか[・なり]。形動。「あっさりしたさま。浅い。薄い。」(『詳説古語辞典』)
2018-1007-man2965
万葉短歌2965 橡の2777
橡の 袷の衣 裏にせば
我れ強ひめやも 君が来まさぬ ○
2777 万葉短歌2965 ShuF571 2018-1007-man2965
□つるはみの あはせのころも うらにせば
われしひめやも きみがきまさぬ
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(2964-3100、137首)の第2首。女。
【訓注】橡(つるはみ)[下記注]。袷(あはせ)。我れ(われ=吾)。
【依拠本注-橡】どんぐりの実で、薄黒色の染料。褪せにくい色である。衣服令に「家人ハ、橡墨(つるばみすみぞめ)ノ衣」とあり、橡色の衣は、身分の低い人が着た。
*** 万葉集 巻12 寄物陳思の部(2964-3100、137首) 始 ***
2018-1006-man2964
万葉短歌2964 かくのみに2776
かくのみに ありける君を 衣にあらば
下にも着むと 我が思へりける ○
2776 万葉短歌2964 ShuF570 2018-1006-man2964
□かくのみに ありけるきみを きぬにあらば
したにもきむと あがおもへりける
○=出典未詳。
【編者注】「寄物陳思」(きぶつちんし、2964-3100、137首)の第1首。女。
【訓注】かくのみに(如是耳)。衣にあらば(きぬにあらば=衣尓有者)。我が思へりける(あがおもへりける=吾念有家留)。
【類歌】16-3804 如是耳尓 有家流物乎 猪名川之 奥乎深目而 吾念有来 作者未詳
(かくのみに ありけるものを いながはの おきをふかめて あがもへりける)
2018-1005-man2963
万葉短歌2963 白栲の2775
白栲の 手本ゆたけく 人の寝る
味寐は寝ずや 恋ひわたりなむ ○
2775 万葉短歌2963 ShuF568 2018-1005-man2963
□しろたへの たもとゆたけく ひとのぬる
うまいはねずや こひわたりなむ
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第100首。男。
【訓注】白栲(しろたへ=白細)。手本(たもと)。寝る(ぬる=宿)。味寐(うまい=味宿)[「味のよい眠りの意で、男女の共寝に限っていう」]。寝ず(ねず=不寐)。
*** 万葉集 巻12 正述心緒の部(2864-2963、100首) 終 ***
2018-1004-man2962
万葉短歌2962 白栲の2774
白栲の 袖離れて寝る ぬばたまの
今夜は早も 明けなば明けなむ ○
2774 万葉短歌2962 ShuF567 2018-1004-man2962
□しろたへの そでかれてぬる ぬばたまの
こよひははやも あけなばあけなむ
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第99首。男。
【訓注】白栲(しろたへ=白細)。袖離れて寝る(そでかれてぬる=袖不数而宿)[「<不数>は重ねない、繰り返さない」]。ぬばたま(烏玉)。
2018-1003-man2961
万葉短歌2961 うつせみの2773
うつせみの 常のことばと 思へども
継ぎてし聞けば 心惑ひぬ ○
2773 万葉短歌2961 ShuF567 2018-1003-man2961
□うつせみの つねのことばと おもへども
つぎてしきけば こころまとひぬ
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第98首。女。
【原文】12-2961 虚蝉之 常辞登 雖念 継而之聞者 心遮焉 作者未詳
2018-1002-man2960
万葉短歌2960 うつせみの2772
うつせみの 現し心も 我れはなし
妹を相見ずて 年の経ゆけば ○
2772 万葉短歌2960 ShuF565 2018-1002-man2960
□うつせみの うつしごころも われはなし
いもをあひみずて としのへゆけば
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第97首。男。
【訓注】うつせみ(虚蝉)。現し心(うつしごころ=宇都思情)。我れ(われ=吾)。年の経ゆけば(としのへゆけば=年之経去者)。