A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

まずは大成功・・次なる試みは

2008-01-16 | MY FAVORITE ALBUM
Mercy ,Mercy / The Buddy Rich Big Band Recorded live at Caesars Palace

新たな試みというものは常にうまくいくとは限らない。
事業であれ、音楽であれ、それは何の世界でも同じだ。
そしてプロの世界はビジネスとしての成功がなければその先はない。
夢と希望をもってスタートしたものの、第一段階の成功を収める前に評価を受けることなく挫折し、そしてせっかく周りから期待されたにも関わらず力及ばず解散してしまうケースは多い。

満を持して、'66に新たに結成されたバディーリッチのオーケストラは、ジャズ全体が低迷し、ロックが台頭しつつある中でスタートした。ビッグバンドビジネス自体がどのバンドもうまくいかなくなっている中で、大方の意見は「成功は難しいのでは・・・?」というものであった。
しかし、予想に反して旗揚げ公演は盛況を極める。
ジャズクラブでの演奏の模様を収録したアルバムも立て続けに発売され、スタジオでの新たな録音も行われる。まずは順風満帆のスタートを切ったといえよう。

その成功を踏まえてよりパワーアップされたリッチのオーケストラは、第2期ともいえる段階に突入していった。
まずは起用するアレンジャーの拡大。最初はオリバーネルソンやビルホルマンの有名どころに加え、若手のアレンジを登用していた。新たにウェスモンゴメリーのアルバムで名を売出したドンセベスキーのアレンジなども採用し、ますますその幅を広げていった。
演奏を引っ張るリーダーであるリッチの意欲を感じる。「どんな作品でも持って来い、ちゃんと俺のドラムで極めてやるぞ」とでも言いたげな感じだ。

結成時のバンドのメンバーはジーンクイルなど何人かのベテランを据えてスタートしたが、若手中心に入れ替わっていった。今回は、メンバーも大分入れ替わり中心に再び核となるプレーヤーを据えた。
中でも目玉はアルトにあのアートペッパーを。そしてハーマンやケントンのオーケストラで実績のある実力者ドンメンザ。そして若手のホープ、ラバーベラ兄弟の末弟パットラバーベラ。リードトランペットにはアルパチーノが加わる。

曲も若手の作品を採用する他に、当時の流行の曲を積極的にレパートリーに組み込む。
このアルバムのタイトルの「マーシー・マーシー・マーシー」は、言わずと知れたザビヌルが作曲したキャノンボールアダレーグループの大ヒット曲。そして、ロリンズのアルバムでも有名になったバカラックの映画のタイトル曲 「アルフィー」も。

さらにリッチのオーケストラは、ステージの演奏でのクライマックスに演奏する「大作」をレパートリーに加えていた。ショーケースとなる最初の大作はウェストサイドストーリーメドレー。どのコンサートでも、必ずといって良いほどリクエストが殺到したとか。
今回このアレンジを提供したBill Reddleが、新たな曲「シャネル1組曲」を提供した。

この陣容で、新たに作られたのがこのアルバムだ。
タイトルは「マーシー・マーシー・マーシー」。
結果はリッチのオーケストラの初期の代表作といってもいいほどヒットすることになる。

新たに加わったメンバーが期待を裏切らない素晴らしい演奏を随所で繰り広げる。
中でも「シャネル1」のドン・メンザのテナサックスのプレーがこのアルバムの白眉であろう。
アートペッパーもアルフィーでフィーチャーされるが晩年はコンボ中心。ビッグバンドに加わってのプレーは珍しいものだ。

そして、ライブのステージもラスベガスのシザースパレスへと昇格している。
スタート当時はサミーデービスのバックオーケストラとしてラスベガスの舞台に立ったが、今回は単独でのステージ。リッチのオーケストラもいよいよ全国区で注目されることになる。

1. Mercy, Mercy, Mercy         Zawinul 5:34
2. Preach and Teach           Burke 4:06
3. Channel One Suite          Reddie 12:50
4. Big Mama Cass             Sebesky 3:22
5. Goodbye Yesterday          Piestrup 6:18
6. Acid Truth               Menza 5:50
7. Alfie                   Bacharach, David 3:49
8. Ode to Billie              Joe Gentry 3:39

Produced by Richard Bock

<PERSONNEL>

Buddy Rich (ds)
William Prince , Al Porcino , Kenneth Fraulk , David Culp (tp)
Jim Trimble , Richard Stepton , Peter Graves (tb)
Don Menza , Pat LaBarbera (ts)
Art Pepper , Charles Owens (as)
Joe Azarello (p)
Walter Namuth (g)
Gary Walters (b,fender bass)

Recorded live at Caesars Palace Las Vegas , 1968


Mercy, Mercy
Buddy Rich
Pacific Jazz

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ムードテナーは日本人にとって歌心を感じるものなのかも・・・・

2008-01-14 | CONCORD
Scott Hamilton and Warren Vache with Scott’s band in New York City

大分昔になるが、サムテイラーとかジョージオールドといった「むせび泣くようなテナー」が流行った。このテナーサウンドが日本人の感性にぴったり合ったのか、演歌も含めて様々な曲の「ムードテナー」のアルバムが数多く発売されたものだ。
自分がまだジャズを本格的に聴き始める前は、これもすっかりジャズだと思っていたのだが・・・。

スコット・ハミルトンのコンコルドでのリーダーアルバムの3作目。
地元ニューヨークに戻って自分のグループでの録音となった。これまでのアルバムはリーダーアルバムであっても自分のグループではなく、コンコルドで活躍しているベテラン達との共演であった。
まあ、何の実績もない新人としては、まずは名前を売るためには仕方がなかったのだとは思うが。

予想に反してか、あるいは思惑通りだったのかは分からないが、30年前にタイムスリップしたようなテナーは評判を生み、ハミルトンもすっかり話題の人となった。
オーナーのジェファーソンも「スコット・ハミルトン」の名前で十分に通用すると判断したのであろう。
3作目はニューヨークに来る前からハミルトンと一緒にプレーをしていたリズムセクション仲間とのアルバム。それも、地元ニューヨークで録音することになった。

さらに、ニューヨークで一緒に演奏をしてきたベニーグッドマンのグループにも一緒に参加したコルネットのウォーレンバッシェ。そしてピアノにはゲストにノーマンシモンズを加えた編成だ。
新人の女性歌手Sue Melikianも2曲で加わる。なかなかストレートな歌い方に好感を持てたが、その後、彼女の名前を聴くことはなかった。

いつも一緒にやり慣れているメンバーとの演奏。呼吸が合っているのは勿論だが、いつものハミルトンより一層リラックスした演奏に聞こえる。
一曲目の”Tea for two”。
スローテンポでハミルトンのテナーでピアノだけをバックにスタートする。途中でアップテンポになり他のメンバーも加わってスインギーな演奏で終わる。
この一曲にこのアルバムのすべてが集約されているような気がする。ビバップ以前のスイング時代、そして中間派の見本のような演奏だ。

コルネットのバッシェもグッドマンのグループに加わる時は、当然のようにオーディションを受けた。しかし、グッドマンが後に言うには、「オーディションは必要なかった。ああだこうだという必要はないし、周りを気にせずに自分の好きなように演奏すればまだまだ伸びる」と。ハミルトンに負けない逸材だったということだ。その後の活躍を見るに、グッドマンの目(耳・・?)は確かだった。

そして、アルバムの最後に収められている”Danny boy”。
締めの一曲でハミルトンのテナーが再びフィーチャーされる。思い切りスローなテンポで、おなじみのダニーボーイが始まる。
メロディーを大事にして忠実にビブラートを利かせた「むせび泣くようなテナー」が続く。そして、アップテンポになることなくそのままクロージングに。

これぞ、最上質な「究極のムードテナー」だと思う。

1. Tea for Two                 Caesar, Youmans 6:44
2. You Took Advantage of Me        Hart, Rodgers 2:20
3. Freego                    Hamilton 5:36
4. Darn That Dream              DeLange, VanHeusen 4:51
5. I Love You                  Porter 5:52
6. There Will Never Be Another You    Gordon, Warren 2:59
7. You're Getting to Be a Habit with Me   Dubin, Warren 4:16
8. Raus!                     Hamilton, Vache 5:18
9. Danny Boy                  Weatherly 4:24

Produced by Carl Jefferson
 
Scott Hamilton (ts)
Warren Vaché(Cornet, Flugelhorn)
Norman Simmons (p)
Phil Flanigan (b)
Chris Flory (g)
Chuck Riggs (ds)
Sue Melikian (vol)

Originally released on Concord CJ-70

Scott Hamilton and Warren Vache (With Scott's Band in New York)
Scott Hamilton
Concord Jazz

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3作目・・何か新しいことを感じさせるものが?

2008-01-12 | MY FAVORITE ALBUM
The New One / The Buddy Rich Big Band

確かこのアルバムは、バディーリッチが新しいBIG BANDを立ち上げてから第3作目。
このアルバムが出た時、期待をしながら聴いた記憶がある。
サド・メルのオーケストラが出現したほぼ同時期に登場したのがこのバディーリッチのオーケストラ。
サド・メルはソリッドステートレーベルで洗練されたサウンドのファーストアルバムを出した後、2枚目のビレッジバンガードのライブアルバムで本領を発揮した。
一方、バディーリッチのオーケストラはアップテンポ中心でライブの熱気が伝わるアルバムで鮮烈なデビューを果たし、2枚目もその続編ともいえるアルバムが続いた。
そして、それを追うようにこの3作目。
リッチのドラムのように、新たに誕生したリッチのバンドが次から次へとエネルギーを繰り出す勢いを感じたものであった。

タイトルの「THE NEW ONE」を見て、さらに何か新しいものがあるかというとそうでもなかった。リッチの新しい流れを汲んだBig bandサウンドの集大成とでもいうスタジオ録音のアルバムだ。
一曲目の”Away We Go”で始まる、このリッチのバンドを象徴するようなスイング感が何ともいえない心地よさだ。パンチが効いたアンサンブルやソロが多い中で、一時の清涼剤としてスローバラードでは、”Somethig for Willie”でトロンボーンをフィーチャー。Boiceがウィリースミスに捧げた自分の曲。ベイシーライクな、“Standing Up in a Hammock”では、本家ベイシーに負けないリズムワーク。リッチの超アップテンポのブラッシュワークに圧倒される。

そして、このアルバムで何か新しい試みは・・・?と思って、ライナーノーツを見ると。
すると、単なる8ビートや3/4拍子ではなく、12/8、9/8、とか、6/8とか変拍子の曲が多い。
どんなリズムでもリズムが心地よく決まって、リッチ独特のうねるようなスイング感を感じる。
変拍子といえば、その頃ドン・エリスがかなりマニアックな変拍子にチャレンジしていた。リッチは、どのようなリズムでも違和感はなく自然なスイング感がある。
4ビートでも、8ビードでも、さらに変拍子にもピッタリ合うこのリズム感がリッチの特徴かもしれない。そしてこれが新しい試みだったのかもしれない。

1. Away We Go*        Ferguson 3:11
2. Machine           Reddie 3:38
3. The Rotten Kid*        Greco 5:11
4. New Blues          Piestrup 4:54
5. Something for Willie      Boice 4:08
6. Standing up in a Hammock   Potts 2:40
7. Chicago           Fisher 2:08
8. Luv             Mulligan 2:56
9. I Can't Get Started      Duke, Gershwin 3:50
10. Group Shot         Piestrup 5:07
11. Diabolus*          Ferguson 8:58

<Personnel>
Produced by Richard Bock

Buddy Rich (drums)
Oliver Mitchell, Yoshito Murakami, Charles Findley, John Scottile (trumpet)
Jim Trimble, John Boice , Robert Brawn (trombone)
James Mosher (alto sax); Ernest Watts (alto sax, flute)
Jay Corre, Robert Keller (tenor sax, flute)
Mayer Hirsch (baritone sax)
Ray Starling (piano)
Richard Resnicoff (guitar)
James Gannon (bass)

Recorded on Jun 15, 1967

( * )
Buddy Rich (drums)
Russell Iverson, Yoshito Murakami, Charles Findley, John Scottile (trumpet)
Samuel Burtis, Jack Spurlock, Robert Brawn (trombone)
Charles Owens (alto sax); Ernest Watts (alto sax, flute)
Jay Corre, Robert Keller (tenor sax, flute)
Frank Capi (baritone sax)
Russel Turner (piano)
Richard Resnicoff (guitar)
Ronald Fudoli (bass)

Recorded on Nov 30, 1967

The New One!
The Buddy Rich Big Band
Pacific Jazz

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たまには4ビートを忘れて、徹底的にボサノバで・・・・・

2008-01-09 | MY FAVORITE ALBUM
Yes, I Had No 4 Beat Today / Toshiko Akiyoshi

秋吉敏子の70年代以降の活動はオーケストラ中心であったが、時にはピアノをメインにしたアルバムも。オーケストラを操る敏子の表情も魅力的だが、ピアニストとしての敏子の指捌きも素敵だ。Concordへのデビュー作もその一枚であった。
そのトシコのピアノというとやはり基本は4ビート。今度は、「たまには4ビートを忘れたピアノの演奏を」という企画で作られたアルバムだ。
アルバムのタイトル“Yes, I Had No 4 Beat Today”も洒落ている。

4ビートを忘れたといっても、彼女の場合はハンコックやコリアのようにフュージョンをやった訳ではない。
アントニオカルロスジョビンが亡くなったこともあり、「彼の作品を何曲かやろう」と曲選びをしているうちに、「いっそうのことすべてボサノバにしてしまおうか」ということに相成り、結果生まれたのがこのアルバム。

ボサノバのピアノアルバムというと、エレキピアノを使って何となくイージーリスニング風になりがちでありが、そこはトシコのまじめに取り組む性分の本領発揮。ボサノバのリズムにも徹底的に拘ったのか、リズムセクションは本場ブラジルのメンバーを起用。曲によってはオーケストラのメンバーが管楽器のバックを加え、「彼女のボサノバの演奏のすべて」を聴ける素晴らしいアルバムになっている。

曲はボサノバの世界では有名なワンノートサンバやワンスアイラブドがあるかと思えば、クラッシクの名曲G線上のアリアも。ラテン調のアレンジで有名なアマポーラ(この曲はマリガンとブルーベックの演奏がお気に入りだ)や、ティコティコ、さらには、彼女のオリジナルでConcordのアルバムやオーケストラでも演奏したWarning!・・・・・。
バラエティーに富んでいるが、どれも本番物のボサノバだ。
何をやってもトシコの作品には手抜きがない真剣さを感じる。

1. Once I Loved
2. Pollination
3. Tico Tico
4. Air / G線上のアリア
5. One Note Samba
6. Star Eyes
7. Amapola
8. Warning ! Success Maybe Harardous To Your Health

Produced by Toshiko Akiyoshi

Toshiko Akiyoshi (p)
Lincoines Golnes (eb)
Duduka Dafonseca (ds)
Valtinho Anastacio (Per)
Ivo Araujo(Surudo, Chocalh,Repinique,)
Scott Wendholdt (tp)
Scott Whitfield (tb)
Ray Stewart (Tuba)
Lew Tabakin (ts)
Roberta Cooper (Cello)

Recorded at Power Station Studio B,NYC,on August 2&3,1995
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2人の“ジョーンズ”のアレンジャーとしての飛躍の原点はやはりベイシーか・・・・

2008-01-08 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
BASIE ONE MORE TIME / Count Basie

オーケストラとアレンジャーの関係は実に微妙だ。
リーダーが自らアレンジをする場合は、自分の考えたアレンジをいかにイメージどおり実際に演奏できるかにこだわるであろう。
一方で、アレンジを行わないリーダーはいかに自分のオーケストラのプレーを引き立たせてくれるアレンジを提供してくれるかをアレンジャーに求めるであろう。
どちらにしても、このバランスが合ったときにオーケストラとしての最高の演奏が聴ける。

カウントベイシーは、自らはアレンジを行わないタイプ。アレンジどころか譜面を読むのも苦手だったとか。盟友のエリントンとは好対照だ。
このカウントベイシーのオーケストラに曲を提供したアレンジャーはたくさんいるが、ベイシーオーケストラのアンサンブルに新風を吹き込んだのは、やはりクインシーとサドの2人の「ジョーンズ」だろう。
奇しくも、2人ともベイシーへのスコアの提供を契機として自分、その後自分のオーケストラを編成することになる。やはり、自分のやりたいことを思う存分やるには自分のバンドを持たなければということだろう。

57年にルーレットレコードに移籍したベイシーは、それまで以上に多くのアレンジャーを起用してオーケストラのサウンドを広げようとした。白羽の矢を立てた一人に、ガレスピーのオーケストラで本領を発揮し、その後自己のアルバムを出して作編曲家として売り出し中だったクインシーがいた。そして、バンドのメンバーであったサド・ジョーンズやフランクフォスターにもアレンジを提供させた。
サド・ジョーンズのアレンジは段々複雑になり最後はベイシーのお気に召さなくなったという話であるが、一方のクインシージョーンズのアレンジは簡素で効果的な味付けだ。
アレンジ自体が実にメロディックなのも特徴だ。このクインシーの醸し出すサウンドがベイシーオーケストラのソフトなアンサンブルと実に良くマッチする。

このアルバムでは、曲もすべてクインシーが作曲したものが選ばれている。
過去にハリー・アーノルド楽団のために書いた名曲”The Midnight Sun Never Sets“や”Meet B.B.”ガレスピーのワールドツアーのために書いた”Jesica's Day”、そしてレナホーンに捧げた”For Lena And Lennie”は、その後自分のオーケストラで有名な”Quintessense”というアルバムにも・・・。
クインシーのお馴染みの曲が収められ、ベイシーのアルバムというよりは”Quincy Jones Song Book”という様相だ。それに、アレンジはベイシーのために今回書き下ろしたもの。
元々良い素材であるクインシーの曲が、ベイシー風の味付けによって一段と引き立つ。
クインシーは演奏には参加していないが、トランペットセクションには良きライバルであるサド・ジョーンズの姿も。クインシーの曲を演奏しながらサド・ジョーンズも自分の音作りに想いを巡らせていたことであろう。
そして、クインシーが自分のオーケストラを立ち上げヨーロッパに赴いたのは、このアルバムが録音された年の59年。このアレンジを書きながら、すでに自分のオーケストラの構想を練っていたのであろう。
自己のオーケストラでも、ここで演奏された曲を何曲も取り上げている。
ベイシーを超えるオーケストラを目指して。

1. For Lena And Lennie
2. Rat Race
3. Quince
4. Meet BB
5. The Big Walk
6. The Square At The Round Table
7. I Needs To Be Bee'd With
8. Jesica's Day
9. The Midnight Sun Never Sets
10. Muttink

<Personnel>
Snooky Young, Thad Jones, Wendell Cully, Joe Newman (tp)
Al Grey, Henry Coker, Benny Powell (tb)
Marshal Royal(as,cl), Frank Wess (as,ts,fl)
Frank Foster, Billy Mitchel (ts)
Charlie Fawlkes (bs)
Count Basie (p)
Freddie Green (g)
Eddie Jones (b)
Sonny Payne (dr)

Arranged by Quincy Jones

Recorded at :N-YC, Dec 19, 1958 (1,2,4,5,9)
Chicago, Jan 23 & 24, 1959 (3,6,7,8,10)
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Concordに日本人が初登場・・・久々のピアノトリオで。

2008-01-07 | CONCORD
FINESSE / TOSHIKO AKIYOSHI

ConcordにTOSHIKOが登場した。それを知った時、少し驚きを感じた。
74年にビッグバンドのアルバムを出してから、レコーディングでもコンサートでも活躍を続けていた秋吉敏子。すっかりピアニストのTOSHIKOではなく、アレンジャーでありバンドリーダーとしてTOSHIKO&TABACKINになっていた。もちろんオーケストラの演奏の中で彼女のピアノを聴くことはできたが、それはオーケストラの演奏の中。
それに彼女のオリジナル曲中心のビッグバンドの演奏では、いわゆるスタンダード曲のピアノのプレーを聴く術もなかった。

彼女がニューヨークから西海岸に居を移したのは72年。そして、その地で念願であったビッグバンドを立ち上げることになる。
ビッグバンドファンの自分としては、第2のサド・メルを期待して最初のアルバム「孤軍」を早速買い求めた。内容の素晴らしさにすっかり惚れ込んで、その後新しく出るアルバムを心待ちにしていたものだ。丁度、サド・メルの新しいアルバムには多少不満も感じてもいたので。
東のサド・メルに対しての、西のトシコ&タバキンの旗揚げであったが、その内容はサド・メルに負けない完成度の高さだった。その曲想と演奏の中にも日本的な文化の香りを常に意識した作品は否が応でも「ジャズの世界にも日本あり」を感じさせ、聴く方でも嬉しくなったものだ。たまに見かける外国人が作る日本調を意識した作品に何か違和感を覚える中、彼女の作品は一味も二味も違ったものであった。

そんな時、このTOSHIKOの久々のトリオでのアルバムはまさに不意打ちだった。
Concordが得意とするベテランミュージシャンの突然の復帰である。
誰が仕掛けたのだろうか?
ドラムでこのアルバムにも参加している、ジェイクハナは、TOSHIKOがその昔バークレーに通っている時、地元ボストンでのプレーメイトであったそうだ。ハナは元々ボストン生まれ、当時(1950年代の後半)は地元を拠点に活動した。メイナードファーガソンやマリアン・マクパートランドとも演奏をしていたそうだ。
このセッションは20年ぶりの再会セッションだったという次第。ハナとTOSHIKOがプレーメイトだったとは世の中狭いものだ。
こんなハナの経歴を知ると、きっと今回もハナがこのセッションを企てたのだろうと想像がつく。

郷に入れば郷に従えという訳でもあるまいが、このアルバムに納められている曲はトシコのオリジナルが2曲。後はスタンダード。コンコルドによくあるスタイルだ。
トシコのオリジナルの一曲アメリカンバラッドは、オーケストラのファーストアルバムの「孤軍」の中でもブリッドウッドマンのトロンボーンでじっくり聴かせた曲。今回はトシコのピアノでの挑戦だ。

一方のスタンダードは、ジェリーロールモートンの曲から、ラブレーター、そしてウェストサイドストーリーからの曲まで。ピアノのプレースタイルも微妙に異なるが、バップからハードバップ全盛期の洗礼を受けたトシコのピアノは健在だ。
これまであまりトシコのピアノプレーは聴いたことがなかったが、オーケストラだけでなくピアノも好きになってしまったアルバムだ。

Country Your Blessings
American Ballad
Love Letters
Wouldn’t It Be Loverly
Mr. Jelly Lord
Warning!! Success May Be Hazrdous To Your Health
You Go To My Head
Solvejg’s Song(from Peer Gynt Suite)

Toshiko Akiyoshi (p)
Monty Budwig (b)
Jake Hanna (ds)

Originally released on Concord CJ-69
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新しい門出を祝う一枚のアルバムが、ラストアルバムになってしまうとは・・・

2008-01-06 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
New Life / Thad Jones & Mel Lewis

ラストアルバムというと何も亡くなった時ばかりではない。グループとしてのラストアルバムというのもある。しかし、グループを解散すること、そしてコンビを組んでいた相棒と別れることはジャズの世界では日常茶飯事だ。
しかし、MJQのようにグループ自体が長年続いていた時、仲の良いコンビが長年にわたって続いた時、さらにそのグループやコンビが大きくジャズ界に影響を与えた時・・・・そのラストアルバムは気になるものだ。何が原因で別れてしまったのかと?

サド・ジョーンズとメル・ルイスの双頭ビッグバンドも、1966年に編成されてから10年近く活動を続けていた。それも、世界中で話題になり、「ナンバーワンのモダンビッグバンド」として。最初はリハーサルバンドであったが、国内外のツアーも毎年のように長期間行われるようになり、まるでレギュラーオーケストラのような活動をするようになっていた。それに伴いメンバーの入れ替わりも多くなり、リーダーのメルとしてはそれも悩みであったようである。
そんな状況の中、サド・ジョーンズが突然バンドを去り、実質的にサド・メルのオーケストラが解散したのは78年のことだ。

それでは、「このオーケストラのラストレコーディングは?」というと、多分メジャーなアルバムとしては、AM / HORISONの“LIVE IN MUNICH”であろう。
このアルバムは1976年の秋、ドイツへの演奏旅行の時のライブなので、スタジオ録音というと。その前に発売された、75年から76年初頭にかけて録音された“New Life”であろう。
メンバーの入れ替わりが激しい時期でもあり、アルバム自体もメンバーの異なるいくつかのセッションの演奏の組み合わせになっている。

この“New Life”というアルバムは、サド・メルの生みの親ともいえる、ヴィレッジバンガードのオーナーMax Gordonへ捧げたアルバムとなっている。そして、同時に設立10年を迎えたサド・メルの次の10年の門出を記念する意味を込めて、”New Life”と命名された。
このアルバム制作に対する力の入れ方は、半端なものではない。2人にとって、そして関係者にとってこのアルバムが最後になってしまうとは夢にも思わなかったであろう。

アレンジは相変わらずサド・ジョーンズが中心的な役割を務めているが、新たに加入したCecil Bridgewater、そして古株のJerry Dodgionのアレンジも取り入れられている。
しかし、どちらのトーンもサド・ジョーンズのアレンジに似ている。知らず知らずの内に、サド・メルサウンドというものが築き上げられてきていたのかもしれない。
すでに、8ビートやファンキーなサウウンドを取り入れていたサド・メルであったが、このアルバムでは、今後はもっと新しいものを取り入れていくという意気込みを表明したものの。そのサウンドはひとつの完成されたものであり、特に、今までと大きく変化した訳ではなかった。

10年前、彼らが初めて聴衆を前にステージに立ったとき、オーケストラのレパートリーは11曲しかなかったそうだ。最初のステージで5曲を演奏し、セカンドステージで残りを演奏してしまうと、サードステージはまた同じ曲をやらねばならなかったそうだ。
しかし一方でオーケストラでありながら、アドリブの自由度が高く、複雑なアレンジをこなすかと思えば時にヘッドアレンジのようなシンプルなアンサンブルワークを見せるサド・メルの自由奔放な演奏はこうして生まれたのだった。
同じ曲でもその時の気分でソロをとるメンバーが入れ替わり、いったい何コーラス続くのか分からないような演奏スタイルが、ライブの時のサド・メルの特徴であった。

10年経って完成されたサド・メルのオーケストラは、このアルバムで次の10年に向けてスタート台に立ったのであったが・・・。
結果は、このアルバムが皮肉にも「ラストアルバム」になってしまった。

実は、プレーする方も聴く方も、サド・メルのオーケストラにロックやフュージョンのリズムを多用して更に進化することも、複雑なアレンジを極めるような演奏は望んでいなかったのかもしれない。
リーダーであり、アレンジャーでもあったサド・ジョーンズの心の中の葛藤はここの辺りにあったと想像できる。

かって、ジョーンズがベイシーのオーケストラに在籍していた時に、アレンジャーとしてはいくつかの斬新な曲を提供したが、結局難しすぎるとか、カラーに合わないという理由でベイシーには受け入れられなかった。
メル・ルイスという良きパートナーを得て、自分のオーケストラで、自分の好きなようにこれらの曲を演奏できるようになったが、最終的には自分のバンドでさえ、日常のコンサートではそのアレンジを持て余すようになってくるとは、彼は想像もしなかったかもしれない。

ジョーンズは、サド・メルを去った後ヨーロッパに渡り、いくつかのオーケストラで新たなチャレンジはしてみるものの、最後は、ベイシー亡き後のベイシーオーケストラのリーダーに舞い戻ったりした。
この頃、ジョーンズが、「バンドリーダーとしての自分」と「作編曲家としての自分」をどのように思っていたのか、益々興味が沸いてきた。
バンドリーダーとしても、アレンジャーとしても、もちろんプレーヤーとしても最も好きな一人なので。

Greeting And Salutation
Love And Harmony
Little Rascal On A Rock
Forever Lasting
Love To One Is One To Love
Thank You
Cherry Juice

Produced by John Snyder


Thad Jones (flh)
Al Porcino, Waymon Reed, Sinclair Acey, Cecil Bridgewater, Jon Faddis,Lew Soloff , Steve Furtado, Jim Bossy (tp)
Billy Campbell, Janice Robinson, John Mosca, Earl Mclntyre, Dave Talor, (tb)
Peter Gordon,Jim Buffington,Ray Along,Julius Watkins (fhr)
Don Butterfield (tuba)
Jerry Dodgion, Eddie Xiques (fl,ss,as)
Frank Foster, Greg Herbert ,Lou Marini (ts,fl,cl)
Pepper Adams (bs)
Roland Hanna , Walter Norris (p)
George Mraz ,Steve Gilmore (b)
Mel Lewis , Herb levelle (ds)
Leonard Gibbs(conga)
Barry Finnerly(g)

Recorded at A&R Studio , New York ,
On July 22 ,Dec.16,17 1975 , Jan.10 1976

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ラストレコーディングになるとは思ってもいなかったであろう・・・・

2008-01-04 | CONCORD
GEORGE BARNES PLAYS SO GOOD

レコーディングの機会に恵まれたミュージシャンにとって、その数が多かろうと少なかろうと、デビューアルバムもあれば、ラストアルバムがある。デビューアルバムは本人も確実に記憶に残るし、それがどんな形であっても自分の音楽生活の中で忘れることのできない物になる。

一方で、ラストアルバムはどれだけ本人が意識して制作されるのであろうか?
大部分は、それがラストアルバムになるということなど意識せずに録音しているのではなかろうか。
特に事故で不慮の死に遭遇したプレーヤーは尚更であろう。
しかし、病魔に襲われ、自分に死期が近いことを悟っている場合、もしかしたらこれが最後かも・・・という想いがどこかにあるのかもしれない。

Concordレーベルではベテラン勢が多いにも関わらず、遅咲きのデビューアルバムに加え、復活、復帰となるレコーディングが多い。反対にラストアルバムとなってしまったのは、若いリッチーカムカだった。彼に続いてConcordにラストアルバムを残すことになってしまったのがギターのジョージバーンズだ。彼も働き盛りの50代での他界であった。

前作と同じ、サンフランシスコのBimboというクラブのライブ録音。この録音の半年後に心臓発作でバーンズは亡くなっている。もちろん、これがラストレコーディングになるとは思っていなかったであろう。

このアルバムのタイトルは、当初バーンス自身で、“ASPECTS OF THE TRUTH”と予定されていたそうだ。内容は、前作と同じセッションの録音。追悼の意味も込めて発売されたのだと思うが、ライブならではのリラックスした雰囲気での好演だ。
タイトルは“PLAYS SO GOOD”と変更された。ミュージシャンであれば、誰もが引退を感じさせず、近くに迫った死を何も感じさせることなく、このような楽しい”Good”な演奏をラストアルバムにできたら本望であろう。

Night And Day
I’m Coming Virgnia
The Days Of Wines And Roses
Don’t Get Around Much Any More
On A Clear Day
I’ve Found A New Baby
George Barnes Rap
Honeysuckle Rose
St. Louise Blues
At Sunddown

George Barnes (g)
Bucan James (g)
Benny Barth (b)
Dean Reilly (ds)

Originally released on Concord CJ-67


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正月は昼寝をしながら軽いのりで・・・

2008-01-03 | MY FAVORITE ALBUM
Lost in Translation / Bei Xu

暮れのゴルフで、急斜面を駆け上ったら、右足の太腿を肉離れ。
正月はゴルフもお休みでジャズを聴きながら寝正月。後半は温泉にでも行ってゆっくりすることに。
正月にちなんだ曲でもないかと思ってはみたものの、なかなか思い出せず。
最近の新しいアルバムは人の名前と中身の演奏が結びつかずなかなか触手が伸びないが、昨年買った中の一枚にベイシューのセカンドアルバムがある。
もっぱらIpodで仕事の行き帰りに聴いていたアルバムだったが、その中にユーミンの”A Happy New Year”が入っていた。まあ、正月にちなんだ曲であろう。

ピアノトリオをバックに、新旧の名曲を何の気負いもなく、さりげなく歌っている。名曲を歌うとなると普通は原曲の歌に、それも個性の強い歌手だと余計影響されがちなものなのだが。最近はこんなボーカルが流行なのかもしれない。このユーミンの曲も、他の曲と同様妙にベイシューのペースに馴染んでいる。
このようなボーカルもたまにのんびり聴くにはいいが、個人的にはジャズボーカルは、やっぱりスインギーなジャジーなボーカルがいいと思う。

ジャズボーカルの世界は昔から女性優位であったが、最近はますます女性陣の優勢が強まっている感じだ。女性の場合は歌の上手さとは別に、何かのきっかけで話題性があれば一躍スターに・・。このベイシューもそんな一人だ。
それにしても最近の中国パワーは恐れ入る。経済力だけでなく、スポーツや文化の世界でも。落ち目の日本と較べてすべてにおいて元気がある。もともと上海はアジアのジャズの故郷。ジャズの世界も近い将来中国パワーが世界を席巻するかもしれない。

Ordinary People
It Ain’t Over Til It’s Over
Melody
I love you Porgy
A Happy New Year
Clare
You’re Beautiful
Love Me Tender
You Give Me Something
Introduction of A Happy New Year
Time After Time
All Songs Produced &Arranged by Nori Shiota

Bei Xu (vol)
Cyrus Chestnut (p)
Nori Shiota (b)
Herlin Riley (ds)

Recorded Oct.23,25,26 & Dec.8,2006
コメント (2)
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でんと構える茶色のロールスロイス・・・・・・。

2008-01-02 | CONCORD
AS GOOD AS IT GETS / RAY BROWN・JIMMY ROWLES

アルバムタイトルがジャケットデザインに旨く表現された一枚がConcordにも・・・。
コンコルドに似合わずリッチな車が登場したが、よく見るとこのアルバムはレイブラウンとジミー・ロウルズのデュオアルバムだ。
レイブラウンの“Brown”と、ジミー・ロウルズの“Rowles”をかけて、こんなジャケットデザインにしたのであろう。

ジミー・ロウルズはConcordに初登場だが、彼は元々西海岸の出身。ハーマンのオーケストラやベニーグッドマンのグループなどに参加していたが、彼の特徴は歌伴。
多くの女性歌手、それもビリーーホリデー、ペギーリー、サラボーン、そしてエラなど有名どころのバックを長年努めた。もちろん歌伴以外のセッションにも数多く参加したが、「主役というより伴奏が旨いピアニスト」というのが印象だ。
自分自身がリーダーになったアルバムはあまり多くはないが、このアルバムは・・・・?

70年代の最初には、一時New Yorkに移ってスタンゲッツなどと共演をしていたが、久々に古巣の西海岸に戻ってきた。
このアルバムは、果たしてレイブラウンがリーダーなのかロウルズが主役なのか?いずれにしてもこのアルバムは二人のコラボレーションが聴き所だ。
ロウルズのピアノは、このようなDuo編成になってもいつもと何も変わるところはない。饒舌なピアノというよりは、ツボを得た効果的なフレーズとコードワークが彼のピアノの特色だ。音の数が、他のピアニストよりも少ないのかもしれない。でも少ない音で歌心を感じるのが、歌伴で鍛えたロウルズのピアノの特徴だろう。

デュオのせいもあるが、レイブラウンのベースがいつにも増して耳につく。単にウォーキングベースでバックを努めるというのではなく、ブラウンの得意なフレーズがロウルズのピアノの行間を埋めながら絡みつく。ブラウンのベースは誰が相手でも、相手に合わせたプレーが得意だ。このような小さい編成からビッグバンドまで安心して聴いていられる。

改めて聴いてみると、このアルバムはやはり「レイブラウンは主役でロウルズが得意の伴奏をつけたアルバムだ」と言う方が似合うかもしれない。
それが、ロウルズの特徴なのだから。

1. Sophsticated Lady
2. That’s All
3. Like Someone In Love
4. Looking Back
5. Honey
6. Love
7. Alone Together
8. Rosalie
9. Manha de Carnaval
10. Who Care

Ray Brown (b)
Jimmy Rowles(p)

Originally released on Concord CJ-66
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新たな一年の夜明け・・・「世界は日の出を待っている」

2008-01-01 | MY FAVORITE ALBUM
ALBERT WYNN and his Gutbucket Seven / Chicago-The Living Legends

東京の正月の朝、雲ひとつない空に綺麗な初日を拝めた。
平成も早いもので丁度節目となる20年目。今年は「何か時代の大きな変わり目の年」になるような気がする。
寒さが身に沁みる朝ではあったが、何か新たな緊張感を覚える夜明けであった・・・・。



そして、今年最初に聴いたのは「世界は日の出を待っている」

20年代のシカゴ。
ニューオリンズで誕生したジャズはこの地で花開いた。
シカゴジャズといえば、エディーコンドンやマグシースパニアなど白人の洗練されたジャズプレーヤーが思い浮かぶ。しかし、シカゴのサウスサイドには表舞台の華やかな演奏とは別世界の黒人プレーヤーも多く存在した。
ニューオリンズの伝統を引き継いでプレーをしていた彼らも、1929年の大恐慌以降職を失い、故郷へ、そして異国の地へと三々五々と散っていった。

第二次世界大戦前後、ジャズの歴史の研究が進む。そして、このようなジャズの創世記を支えた黒人ミュージシャンの再発掘が行われ、ジョージルイスなど伝説のプレーヤーが一線に復帰した。
モダンジャズへの進化に合わせて、一方でニューオリンズジャズが再び脚光を浴びたのだった。

そして、シカゴのサウスサイドでプレーをしていたメンバーが久々に再会してセッションを行った。以前プレーをしていた時から、すでに30年の月日が経った1961年のことであった。

60年代初頭のリバーサイドレーベルというと、ビルエバンスに代表される一流プレーヤーを抱え、モダンジャズの最前線を走っていたレーベルだ。
このレーベルが、実は設立当初はトラディショナルジャズの発掘にも力を入れていた。そして、60年代になりアルバムも400番台に入ってから、モダンジャズの名作に混じって”CHICAGO THE LIVING LEGENDS“というシリーズを何枚か出している。

このアルバムも、その中の一枚だ。
アル・ワインというトロンボーン奏者がリーダーだが、メンバーはいずれも昔シカゴジャズを支えた面々。久しぶりに再会を果たし、当時の演奏スタイルをそのままの形で再現している。
当時、売り出し中のエバンスもアダレーも彼らには全く眼中になかった。彼らの演奏は筋金入りのニューオリンズジャズでありブルースだ。タイムスリップしたように、30年前の姿をそのまま再現している。

このアルバムに「世界は日の出を待っている」が入っている。
新年には相応しい曲だが、その生まれた経緯は・・・・。
1919年、前年まで続いた第一次世界大戦の直後、まだ戦後の混乱から抜け出せなかった年だ。暗い話題が日々が続く中、明るい明日を願う歌でその年のベストヒットになったそうだ。

同じニューオリンズジャズの伝道師でもあるジョージルイスがこの曲を十八番にしている。有名なオハイオユニオンのコンサートでも演奏され、ルイスのコンサートでは欠かせない曲のひとつになった。
どのコンサートでも、ローレンス・マレロのバンジョーのプレーがフィーチャーされる。

その印象が強いせいか、この曲はニューオリンズジャズで聴くのが一番。
このアルバムでの主役はピアノのジョン・デイビス。
ピアノが奏でるこの曲もなかなかいける。このデイビス、他の曲でも歌にピアノと大活躍だ。ハウ・ロング・ブルースでは情熱的な歌とピアノでブルースの真髄を聴かせてくれる。

昨年は新しい夢のある話題よりも、偽、事故、殺人、環境、・・・など、どれをとっても暗い話題が多かった。
時代の変わり目だからこそ。新しい先進的な話題に一喜一憂するのもよいが、30年前のトラディショナルパワーを今の時代に投げかけるのも丁度今のような気がする。
このアル・ワインとガットバケットセブンが世に問うたように。我々、団塊の世代の使命かもしれない。

1. Ice Cream
2. Someday, Sweetheart
3. How Long Blues
4. Honey
5. Bourbon Street
6. The World Is Waiting for the Sunrise
7. In the Evening
8. Nobody's Sweetheart

Albert Wynn (tb)
Bill Martin (tp,vol)
Darnell Howard (cl)
Bus Moten (p)
Blind John Davis (p.vol)
Mike Mckendrick (g)
Robert Wilson (b)
Booker Washington (ds)

Recorded in Chicago, September 5,1961



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