A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

たまにはワンホーンでやってみようか・・・・

2007-11-28 | PEPPER ADAMS
EPHEMERA / Pepper Adams

ビッグバンドのソロプレーヤーとえども、なかなか自分のアルバムを出すに至るには時間がかかる。それにアルバム作りには何かきっかけや運も左右するかもしれない。
やはり本格的なリーダーアルバムを作るとなると、バンドを辞めて独立し、自己のグループを持つようにならないとなかなか難しいものだ。
ビッグバンドの全盛期には、ビッグバンドはある種の研鑽の場。バンドでの演奏だけでなく、その後の仲間たちのアフターセッションなどで鍛えられ、このようなプロセスを経て皆一流になっていったものだ。

ところが、同じオーケストラでもリハーサルバンドとなると多少勝手が違う。
元々他の仕事を持っている同好の仲間が集ってくる。スタジオ中心のミュージシャンもいれば、すでに自分のバンドを持っているメンバーも。腕達者がオーケストラでの演奏を楽しみに集ってくる。単なる新人達のOJTの場ではない。

サドジョーンズ・メルルイスのオーケストラはその代表的なバンドだった。
もともとサド&メル以外もリーダー格のメンバー達の集まり。揃ってオーケストラで演奏する以外にも、メンバー同士が三々五々集ってセッションを行うことが多かった。
それも、オーケストラの演奏旅行で各地を廻っている間に、その土地土地で。
日本に来た時も何枚かアルバムが残されているが、イギリス公演中にも一枚のアルバムが作られた。

このセッションのリーダーとなったのは、バリトンのペッペーアダムス。
サドメルに入る前はオーケストラ以外にもコンボで演奏する機会も多かったが、必ずと言っていいほど相棒のホーンプレーヤーがいた。ドナルドバードとのコンビが一番有名だ。
このアルバムは珍しくアダムスのワンホーンアルバム。彼のリーダー作としても、ワンホーンは初めての試みだったそうだ。
メンバーは一緒にツアーをしていた、ピアノのローランドハナ、ベースのジョージムラツ、ドラムは御大メルルイス。サドメルオーケストラのリズムセクションがそのまま参加している。
いつも、一緒にプレーしている仲間同士。それにツアーの最中は、いつも行動が一緒。本拠地での週一回の演奏の時よりも実は親密度が増していたかもしれない。

ワンホーンだと、曲のイントロからメインのテーマ、そしてアドリブへと、全部自分一人で組み立てなければならない。ここではピアノのハナがいいサポートをしているが、アダムスのバリトンが主役だ。

バリトンはもともとソロをとるには扱いにくい楽器だ。指も動かしにくいし、タンキングも難しい。そもそも、図体がでかくて重いので立ってソロをとるのも一苦労。
アダムスはこの扱いにくい楽器をいとも簡単に操る。巨漢な体格であれば納得はできるが、見た目あのおとなしそうな風貌から想像できないようなエモーショナルな音が飛び出てくるから不思議だ。ジャケットの表紙一杯の柔和な表情とは程遠い演奏である。

一曲目のエフェメラ。短命なもの、蜻蛉(かげろう)という意味らしい。雰囲気がでている。
続く、バドパウエルのバウンシング・ウィズ・バドでアダムスは炸裂する。よどみなく歯切れのよいソロも健在だ。まだまだ衰えをみせていない。
一転して、次のシヴィライゼーション・イッツ・ディスコンテンツではバラードプレー。演奏を言葉で表現するには難しい。特に自分は不得手であるが。
ライナーノーツには「音を消したTVの画面の中で、静かな入江に一直線に入ってくる船のモーションのようなアダムス」と。このように表現されている。なかなか言い得て妙である。
バリトンでこんなに綺麗な曲ができるのもアダムスの一面。マリガンとは少し違った味付けのバラードプレーだ。
トランペットであればミュートを使ったりして変化を付けられるが、サックスはそれ一本で色々な音を聞かせなければならない。特にバリトンで多彩な音を聞かせるのは名人芸ともいえる。
そして、急速テンポのジターバックワルツで、限界への挑戦といった感じであるが余裕綽々でこなす。
サド・メル在籍時はコンボでの録音はズートシムスとの共演の“Encounter”以外なかったが、久々のアダムスのコンボ演奏での好演だ。

1. EPHEMERA
2. BOUNCING with Bud
3. Civilization And Its Discontents
4. Jitterbug Waltz
5. Quiet Lady
6. Patrice
7. Hellure(How Are You’re)

Pepper Adams (bs)
Roland Hanna (p)
George Mraz (b)
Mel Lewis (ds)

Produced by Tonny Williams

Recorded at EMI Studios,Manchester Square,London on Monday , September 10 , 1973
コメント
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