A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

やはり、持つべきものは良き友人たち・・・・

2007-11-10 | CONCORD
Windflower / Herb Ellis & Remo Palmier

同じような境遇にある2人が知り合い、意気投合しお互いの未来の夢を語る。しかし、何かのきっかけで全く別々な人生を送るようになることはよくあることだ。特に男と女の関係になると。
片方が順風満帆な人生を過ごすことができて、一方が不幸な人生を送ることも。しかし、多くの場合2人はその後出会うことも無く、お互い何をしているかも知る術もなく、それぞれの人生を歩むことになる。

ところが、この2人は違った。
何十年ぶりかに出会って、再び意気投合し二人で共演をし、さらにアルバムを作るまでに。そして、再び関係を深めることができた。
この共演でお互い幸せなひと時を過ごし、その後も自分のやりたいことをやりながら人生をエンジョイするようになる。

やはり、持つべきものは友である。

このアルバムは、お馴染みのハーブエリスと同じギターのレモ・パルミエリの共演。
レモは全くの無名であり、これが初のリーダーアルバムだ。もちろん自分にとっても全く意識の外にあるプレーヤーだった。
少し、彼の経歴を遡ってみる。
すると、彼はジャズの歴史のメインストリームにちゃんと登場している。
パーカーとガレスピーの有名なクラフトセッション。この中の45年録音の3曲
Groovin' High
All The Things You Are
 ここで、パルミエリにギターソロも聴ける。
Dizzy Atmosphere
で共演しているのだ。
たしかに、パーソネルには彼の名前のクレジットが。まったく記憶が無かった。他にも、それまでの間レッドノーボやコールマンホキンスと共演し、録音も残している。
モダンジャズの歴史作りに彼も参加していたのだ。

エリスとパルミエリが出会ったのは1940年。まだエルミエリが17歳のときだった。
New Yorkのクラブに出演していたエルミエリの演奏を聴いたエリスが、
「君ののホーンのようなギターのプレーが好きだ」と言ったというのが最初の出会いだったとか。皆、チャーリークリスチャンのように、どうしたらギターが弾けるかを学び競っていた頃だ。

その後、何年かしてからシカゴで再会した時は、レモはレッドノーボのグループ、エリスはトミードーシーのオーケストラのメンバーの一員だった。レモは、その後ビリーホリデーのバックを努め、パーカーとの共演など表舞台を歩見続けていた。

ところが、その直後、突然病気を理由にクラブでの活動を辞め、スタジオミュージシャンとなり第一線から退いてしまう。医者から夜の過酷な仕事を控えるように言われたのが理由だそうだ。
これで、レモはジャズの表舞台から消えてしまう。
スタジオで演奏するのはジャズとは縁遠いものになってしまう。

一方のエリスはその後ピーターソントリオへの参加を経て、表舞台を歩み続ける。
2人はまったく別の道を行くことになる。
好きなジャズを断念しなければならなかったレモ・エルミエリの心中は推して知るべし。好きな恋人と別れ、張り合いのない人生を迎えたような心境であったろう。

しかし、'72年になり、幸か不幸かレモが長年スタジオワークの中心にしていたCBSテレビの“Godfrey Show” が中止になる。レモもこれで、レギュラーのスタジオの仕事を失うことに。
“Godfrey Show”で一緒に仕事をしていたハンクジョーンズに誘われ、共にクラブやホテルに出るようになる。パールベイリーが東海岸でステージがある時は、ルイベルソンのオーケストラに加わることもあった。彼らとも古い知り合いだったそうだ。
皆、友人付き合いをしていたからこそ、一緒にできた仕事であったのだろう。

エリスとは関係を続けていたが、そのような時にエリスから「レコーディングをしてみないか? 久しく君のプレーを聴いていないよね」と申し出を受ける。
エリスの肝入りでジェフェアーソンからConcordに招かれることになる。そして、いつもと同じConcordの復活劇が始まる。
コンコルドジャズフェスティバルに招かれエリスとの共演で舞台に上ると、その後すぐに、このアルバムが作られることになる。
コンコルドでは珍しいニューヨーク録音だ。エリスがバニーケッセルとコンサート開くために、New Yorkに行った時に作られたものだ。

この、2人の出会い、そして再会はレモ・パルミエリにとってその後の人生を変えるきっかけになった。コンコルドにとってもまた復活劇の歴史に新たな一幕が加わることになる。
アネスティンアンダーソンのレイブラウンに続き、今度はエリスが「いい出会いの橋渡し役」を務めたアルバムだ。友が友を呼ぶいいサイクルに入っていった。

演奏の方はというと、エリスのアーシーなギターに加えて、パルミエリのギターも素直な良くうたうギターだ。時にカントリー風の色合いを感じるエリスよりは都会的なセンスを感じる。ニューヨーク住まいが長いせいか、スタジオでありとあらゆる音楽をこなしたせいなのか。

スタンダードな曲は比較的ストレートな解釈。そして、最後は、自分が大好きなジェロームリチャードソンのグループマーチャントで終わる。ファンキーな曲であるが、2人はあまりソウルっぽく無く、2人のスタイルでスインギーにプレーしている。百戦練磨の2人の演奏に派手さは無いが、何気ない大人のプレーの心地よさを感じる一枚だ。

1. Windflower
2. The Night Has A Thousand Eyes
3. My Foolish Heart
4. Close Your Eyes
5. Danny Boy
6. Walkin'
7. Stardust
8. Triste
9. Groove Merchant

Herb Ellis (g)
REMO PALMIER (g)
George Duvivier (b)
Ron Traxler (ds)

Recorded at Bell Sound Studio . New York , October 1977
Originally released on Concord CJ-56


ウインド・フラワー
ハーブ・エリス&レモ・パルミエ,ハーブ・エリス,レモ・パルミエ,ジョージ・デュヴィヴィエ,ロン・トラクスラー
ビクターエンタテインメント

このアイテムの詳細を見る


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする