若者達が作った言葉の中で、ちょっとおもしろいのがモトカレ（以前の彼氏）で、その逆もモトカノというのだと思うが、そもそも彼氏、彼女とは、どの程度の交際（つきあい）があれば、そう呼ばれることになるのだろうか。私たちの時代のアプローチの第一歩は、ラブレターめいたものだった。その往復が３，４回あって、２人で映画を観に行って～、しかし物語はそこまでというのは、モトカレ、モトカノの関係だろうか。それとも、一夜の夢を共有した経験があって、しかし～となった場合こそモトカレ、モトカノなのか。また、私の叔母は離婚後も前夫と付き合っていたが、これもまたモトカレ、モトカノの感覚か。どうでもいいことだが、どうでもいいことを考えるのも、老人のヒマツブシであって、少なくとも「昔は食べ物で苦労した。毎日が空腹だった」と妙に懐かしんだりするよりも、いい時間だろう。モトカレもいいし、モトカノもいい。目を閉じて思い出そうとしても、その顔がうまく浮かんでこなくてもいい。想い想われ散ってゆく、恋は真っ赤なゼラニウム。あの人もこの人も流れゆく淡い白雲～（『丘は花ざかり』の第３章）。