谷光司さんとは同人誌の会で知り合った。夫人の汎子さんが「Fの会」というやはり同人誌に参加されていて、私もそこの会員だった。F誌に興味を持たれた光司さんはご自分で新しい誌会を作るべく汎子夫人に仲間集めを託され、Fの会に所属する神奈川県在住のメンバー10数人に声をかけ、小さな誌「I」ができた。私もそこに参加した。
吉田満さんの書いた『戦艦大和』という本が話題になった時期がある。40年も前になるだろうか。映画化もされた。その中に臼渕巌大尉という人物が出て来る。臼渕大尉は米軍から魚雷の集中攻撃を受け、沈みゆく大和の艦内で部下達に「戦争はやがて終わる。俺たちはそのあとに来る平和のために死ぬのだ」と語る。
谷光司大尉と臼渕巌大尉は海軍兵学校の同期である。谷さんは神戸一中を優秀な成績で卒業し、京大へは行かずに、海兵に進んだバリバリの軍人であり、海の男である。その男ぶりに惚れたのが臼渕さんであった。戦争末期、戦艦大和への乗り組みを命ぜられたとき、別の艦に乗る谷さんに「俺の妹を頼む」と告げる。「お前の嫁に」という意味だ。臼渕退院は大和とともに海中に沈むが、谷大尉は人間魚雷回天に乗る寸前に終戦となって復員する。臼渕さんの言に従い、妹の汎子さんを訪ね、結婚する。
一度だけ同人誌メンバー数人と谷邸で酒をご馳走になったことがある。静かな、広い家だった。谷さんは、海事会社の社長をなさっていて、保土ヶ谷から東京の丸ビルに通勤されているらしかった。出されたウィスキーはロイヤルサルートで、私もおおいに呑み、お礼に海兵の歌(江田島健児の歌)を唄った。15ほど年下の私がそんな歌を知っているのが、谷さんにも汎子夫人にも不思議だったようだ。「古鷹山下水清く 松籟の音冴ゆるとこ 明けはなれ行く野見島の・・・」。谷光司さん、汎子さん、御存命なら100歳ちょうどか。
吉田満さんの書いた『戦艦大和』という本が話題になった時期がある。40年も前になるだろうか。映画化もされた。その中に臼渕巌大尉という人物が出て来る。臼渕大尉は米軍から魚雷の集中攻撃を受け、沈みゆく大和の艦内で部下達に「戦争はやがて終わる。俺たちはそのあとに来る平和のために死ぬのだ」と語る。
谷光司大尉と臼渕巌大尉は海軍兵学校の同期である。谷さんは神戸一中を優秀な成績で卒業し、京大へは行かずに、海兵に進んだバリバリの軍人であり、海の男である。その男ぶりに惚れたのが臼渕さんであった。戦争末期、戦艦大和への乗り組みを命ぜられたとき、別の艦に乗る谷さんに「俺の妹を頼む」と告げる。「お前の嫁に」という意味だ。臼渕退院は大和とともに海中に沈むが、谷大尉は人間魚雷回天に乗る寸前に終戦となって復員する。臼渕さんの言に従い、妹の汎子さんを訪ね、結婚する。
一度だけ同人誌メンバー数人と谷邸で酒をご馳走になったことがある。静かな、広い家だった。谷さんは、海事会社の社長をなさっていて、保土ヶ谷から東京の丸ビルに通勤されているらしかった。出されたウィスキーはロイヤルサルートで、私もおおいに呑み、お礼に海兵の歌(江田島健児の歌)を唄った。15ほど年下の私がそんな歌を知っているのが、谷さんにも汎子夫人にも不思議だったようだ。「古鷹山下水清く 松籟の音冴ゆるとこ 明けはなれ行く野見島の・・・」。谷光司さん、汎子さん、御存命なら100歳ちょうどか。