
服を着て露天風呂へ移動。
眺めは望めないが、手入れされた庭が気持ちよい。
空気中に飛散しているのか塩素は匂わない。
かすかに色が付いているように見え、内湯の湯よりは、存在感があった。
今宵泊まる宿は、非温泉。
このあたり、掘っても温泉が出ない・・・らしい。
その話を裏付けるような温泉だった。

唐津城の堀端だった道を海岸へと進む。
天気はよく暖かい。
サイクリングにはもってこいの日和に心が躍る。
桜並木が続く。
桜の頃にはさぞ美しいだろう。

目的地に着いた。広大な敷地にはりめぐらせた石垣も見事だ。
決して威圧的ではない優しい感じがいい。

炭鉱主として成功した高取伊好氏の邸宅として、
明治末から昭和初期に建てられた旧高取邸。
10年程前まで子孫の方が住んでおられたが、唐津市に寄贈され、
今は、国の重要文化財にも指定されている。
建物右側は、暖炉もそなえた応接間。

大隈重信公や朝香宮など、上客が訪れた際使用された玄関にかかる唐破風屋根。

梁に施された透かし彫りや灯具は、当時のままという。
写真が撮れるのはここまで。
館内は撮影禁止なんです。
中庭を挟み、居室棟と大広間棟と呼ばれる客室棟があり、大広間棟には能舞台までしつらえてある。
壁は、漆喰に墨を混ぜたねずみ壁。
欄間には、孔雀や小動物の型抜きがしてあり差し込む陽光で、ねずみ壁に孔雀の影絵が浮かび上がるという計算された意匠に驚く。
床の間の天袋の引き手金具には七宝焼きが施され、ガラスは、ゆらゆら屈折する吹板ガラス。
灯りの照明器具は当時のままのモダンなもの。
そして圧巻は「杉戸絵」と呼ばれる、襖や間仕切り。
杉の一枚板やはぎ合わせの板に、ニカワを塗り、その上に描かれた29種類72枚の杉戸絵。
一般公開に際しても、これらは補修していないらしい。
鮮やかな色彩と様々な絵が、館内のあちらこちらで眺められた。
はぁ~、贅沢なものを見せていただきました。
写真撮影禁止も納得しました。
何時間いただろうか?
何人か見物客がまとまると職員さんが付いてくれて、ずっと説明してくださったので、よ~く分かりました。
唐津の宝です。
高取伊好氏は、教育、文化面にも多大な貢献をされたという。
きっと、あの世で、私がこんなに満たされた想いでいる事を、喜んでおられるのではないかと勝手に想像をめぐらす。
今まで、大切に守ってこられた子孫の方々にも感謝したい。

すっかり時間をとってしまい、約束の時刻まで1時間もない。
唐津くんちの曳山展示場へ行きたかったがゆっくり見ている時間はないだろう。
武家屋敷町だったのだろうか、重厚な石垣や、竹の生け垣が続く界隈を走り駅前へ急ぐ。