年を取ることを恐れるのは高齢者より20代?―日本人の年齢へのこだわり「老い」への恐怖―
アメリカの調査会社、マッキャンが昨年行った「年齢」に関して世界28市場で20~79歳の回答者約2万4000人
を対象に定量アンケート調査を実施し、それを補うために世界35市場でインタビュー調査も行いました(注1)
この調査から、「死を最もおそれている」のは20代、「年を取ることを最も気にしている」のは30代、年を取
ることを最も気
にしていないのは70代という結果が出たそうです。意外にも、若い人たちの方が年を取ることを気にしている
のです。
これは、ちょっと意外な結果です。一般的に、死ぬこと、年を取ることに対するおそれは、高齢化とともに強
くなるという印象をもっていますが、まったく逆なのです。
これは別の面でも、現れています。年代別の恋愛観をみると興味特徴があります。「恋人を作るのに遅すぎる
ことはない」と考える割合は、世界の平均は、20代は61%、50代は67%、70代では71%と、年を取るにつれて、
むしろ高くなっています。
つまり、世界の情勢としては、「年だから」という意識はほとんどないのが実態です。
これと並行して、自分はどれほど歳をとっているかの質問に、世代による差はほとんどありません。
つまり、実年齢と、自分自身の「老い」にかんする認識とは正比例していないのです。
私が興味をもったのは、若い世代の方が年をとることや死ぬことに対する恐れが強いことです。
例えば、「自分が死んだ後、皆に忘れられるのでは」と一番心配しているのは、20代の53%で、年を取るほど
「心配」の割合は下がってゆき、70代では21%になります。
一般論でいえば、若者が死ぬことを心配するのは、ある意味で理解できます。というのも、20代では、将来に
対する期待がある反面、どうなるか分からい不安もあるからでしょう。
これにたいして、年を重ねるにしたがって、経験に基づくある程度の自信をもてるようになるからです。
以上は、世界の趨勢ですが、日本の状況をみてみましょう。
日本の場合、世界水準と比べて、「年齢・年を取ることを気にしている」人の割合は、かなり高い結果がでてい
ます。
世界の傾向は、年齢を気にする割合は30代をピークにあとは下がっていますが、日本では、全平均でも20%
も高く、20代以降、ほぼ一貫して上昇し、70代以上ではなんと80%を超えています。
これは、世界水準の2・5倍の高さです。
たしかに、「年甲斐もなく」「年相応」「アラサー」「アラフォー」などの表現が日常会話にでてくることは、
いかに年齢や年を取ることを気にしているかを示しています。
私はいつも違和感を感じるのは、日本のニュースなどで取りあげられる人物について、メディアでは、ほとんど
の場合、名前の後に年齢を示します。
このような状況は、たとえば私自身が済んだことのあるオーストラリアでもオランダでも見たことがありません。
今、直ちに説明することはできませんが、年齢にたいする強いこだわりと「老い」にたいする日本人の恐怖がど
こからくるのか興味深いテーマです。
もう一つ、この調査結果を分析したアナリストは、日本ならではの特徴として、若い世代ほど経済的な不安が強
いことを指摘しています。
「年を取ることの最大のマイナス面は何だと思いますか?」という問いについて、「経済的に自立できなくなる
と思う」と答えた割合は20代、30代が最も多く、世界水準よりも圧倒的に高い数字なのです。
この背景には、将来の生活を支える社会保障と政府に対する信頼ないからのようです。
年金保険料の未納率は、政府の公表した数字は2割ですが、実際には40%にも達すると想定されています。
しかし、これは見かけ上の数字で、保険料納付の免除者(384万人)や学生などの猶予者(222万人)を国策で増
やして「納付すべき人(分母)」から除外することで、見かけの納付率をアップさせているのです。
実際の年金保険料未納率は、以下の通りです(注2)。若者の未納率の高さが見につきます。
・20~24歳:78.4%
・25~29歳:68.3%
・30~34歳:61.8%
・35~39歳:57.9%
・40~44歳:57.0%
・45~49歳:57.1%
・50~54歳:52.5%
・55~59歳:46.3%
塚崎公義教授は、「どうせ年金お受け取る事ができないから」という理由で年金保険料をはらわない若者が多いと
述べていますが、それは誤りで、払っていといた方絶対に得だと述べています(注3)
しかし、たとえ理屈では分かっていても、若者が将来に不安を感じるのは無理もないと思います。
一つには、現実の実質賃金が一向に上がっていないことがあります。政府が言う、GDPが何年連続で上がり続け
ても(といっても、年率0・5%という定率ですが)、それが自分の収入増にはつながっていないことを感じてい
るからです。
さらにこの背景には、非正規雇用の増加とともに、年金保険料を払いたくても払えない実態もあると思います。
最後に、人口の推移をみると、将来は高齢者の比率がますます高くなり、自分たちの負担が増えることが分ってい
るからです。
他方で、自分たちが支えられる年齢に達した時、次の世代の人口はさらに減少していると考えられるから、余計に
年金を含めた社会保障をあてにできない、という不安が現在の若者にはあります。
若者に将来の不安を与えないことが、政治と行政の目的のはずですが、残念ながら現在の日本では、両方とも不十
分のようです。
(注1)この調査の全容は、『日経ビジネス ONLINE』http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/022000277/?n_cid=nbpnbo_mlpus. (2018年2月22日)
(注2)http://fxconsulting.jp/gyanburu/mane/nenkin.html
(注3) http://sharescafe.net/49711266-20161012.html
アメリカの調査会社、マッキャンが昨年行った「年齢」に関して世界28市場で20~79歳の回答者約2万4000人
を対象に定量アンケート調査を実施し、それを補うために世界35市場でインタビュー調査も行いました(注1)
この調査から、「死を最もおそれている」のは20代、「年を取ることを最も気にしている」のは30代、年を取
ることを最も気
にしていないのは70代という結果が出たそうです。意外にも、若い人たちの方が年を取ることを気にしている
のです。
これは、ちょっと意外な結果です。一般的に、死ぬこと、年を取ることに対するおそれは、高齢化とともに強
くなるという印象をもっていますが、まったく逆なのです。
これは別の面でも、現れています。年代別の恋愛観をみると興味特徴があります。「恋人を作るのに遅すぎる
ことはない」と考える割合は、世界の平均は、20代は61%、50代は67%、70代では71%と、年を取るにつれて、
むしろ高くなっています。
つまり、世界の情勢としては、「年だから」という意識はほとんどないのが実態です。
これと並行して、自分はどれほど歳をとっているかの質問に、世代による差はほとんどありません。
つまり、実年齢と、自分自身の「老い」にかんする認識とは正比例していないのです。
私が興味をもったのは、若い世代の方が年をとることや死ぬことに対する恐れが強いことです。
例えば、「自分が死んだ後、皆に忘れられるのでは」と一番心配しているのは、20代の53%で、年を取るほど
「心配」の割合は下がってゆき、70代では21%になります。
一般論でいえば、若者が死ぬことを心配するのは、ある意味で理解できます。というのも、20代では、将来に
対する期待がある反面、どうなるか分からい不安もあるからでしょう。
これにたいして、年を重ねるにしたがって、経験に基づくある程度の自信をもてるようになるからです。
以上は、世界の趨勢ですが、日本の状況をみてみましょう。
日本の場合、世界水準と比べて、「年齢・年を取ることを気にしている」人の割合は、かなり高い結果がでてい
ます。
世界の傾向は、年齢を気にする割合は30代をピークにあとは下がっていますが、日本では、全平均でも20%
も高く、20代以降、ほぼ一貫して上昇し、70代以上ではなんと80%を超えています。
これは、世界水準の2・5倍の高さです。
たしかに、「年甲斐もなく」「年相応」「アラサー」「アラフォー」などの表現が日常会話にでてくることは、
いかに年齢や年を取ることを気にしているかを示しています。
私はいつも違和感を感じるのは、日本のニュースなどで取りあげられる人物について、メディアでは、ほとんど
の場合、名前の後に年齢を示します。
このような状況は、たとえば私自身が済んだことのあるオーストラリアでもオランダでも見たことがありません。
今、直ちに説明することはできませんが、年齢にたいする強いこだわりと「老い」にたいする日本人の恐怖がど
こからくるのか興味深いテーマです。
もう一つ、この調査結果を分析したアナリストは、日本ならではの特徴として、若い世代ほど経済的な不安が強
いことを指摘しています。
「年を取ることの最大のマイナス面は何だと思いますか?」という問いについて、「経済的に自立できなくなる
と思う」と答えた割合は20代、30代が最も多く、世界水準よりも圧倒的に高い数字なのです。
この背景には、将来の生活を支える社会保障と政府に対する信頼ないからのようです。
年金保険料の未納率は、政府の公表した数字は2割ですが、実際には40%にも達すると想定されています。
しかし、これは見かけ上の数字で、保険料納付の免除者(384万人)や学生などの猶予者(222万人)を国策で増
やして「納付すべき人(分母)」から除外することで、見かけの納付率をアップさせているのです。
実際の年金保険料未納率は、以下の通りです(注2)。若者の未納率の高さが見につきます。
・20~24歳:78.4%
・25~29歳:68.3%
・30~34歳:61.8%
・35~39歳:57.9%
・40~44歳:57.0%
・45~49歳:57.1%
・50~54歳:52.5%
・55~59歳:46.3%
塚崎公義教授は、「どうせ年金お受け取る事ができないから」という理由で年金保険料をはらわない若者が多いと
述べていますが、それは誤りで、払っていといた方絶対に得だと述べています(注3)
しかし、たとえ理屈では分かっていても、若者が将来に不安を感じるのは無理もないと思います。
一つには、現実の実質賃金が一向に上がっていないことがあります。政府が言う、GDPが何年連続で上がり続け
ても(といっても、年率0・5%という定率ですが)、それが自分の収入増にはつながっていないことを感じてい
るからです。
さらにこの背景には、非正規雇用の増加とともに、年金保険料を払いたくても払えない実態もあると思います。
最後に、人口の推移をみると、将来は高齢者の比率がますます高くなり、自分たちの負担が増えることが分ってい
るからです。
他方で、自分たちが支えられる年齢に達した時、次の世代の人口はさらに減少していると考えられるから、余計に
年金を含めた社会保障をあてにできない、という不安が現在の若者にはあります。
若者に将来の不安を与えないことが、政治と行政の目的のはずですが、残念ながら現在の日本では、両方とも不十
分のようです。
(注1)この調査の全容は、『日経ビジネス ONLINE』http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/022000277/?n_cid=nbpnbo_mlpus. (2018年2月22日)
(注2)http://fxconsulting.jp/gyanburu/mane/nenkin.html
(注3) http://sharescafe.net/49711266-20161012.html