百菜健美☆こんぶ家族ラボ

おいしい
と感じることは生きる喜びに
そして笑顔になります。
舌で味わい、
目は閉じていても
耳は心で。

家庭料理はごちそうでなくていい。ご飯とみそ汁で十分。土井善晴さんが「一汁一菜」を勧める理由

2017-03-31 | Weblog

献立の基本は一汁三菜。
私たちはあまりにも長いあいだ、この思い込みにとらわれてきたのではないだろうか?

土井善晴さんという料理研究家がいる。1957年、大阪府生まれ。「きょうの料理」「おかずのクッキング」といった人気料理番組のメイン講師を長年務める大ベテランだ。

その土井さんが「三菜じゃなくていい」「家で作る料理はおいしくなくもていい」と言う。なぜか? 作る人と食べる人、皆が幸せになれる家庭料理の在り方を丹念に検証した最新の著書『一汁一菜でよいという提案』について話を聞いた。

2017-03-23-1490267256-3650581-01.JPG
料理研究家 土井善晴さん

2017-03-23-1490267478-8488162-food.JPG
一汁一菜の食事スタイル。撮影:土井善晴

■日本の家庭料理のハードルはなぜこんなに高くなった?

――土井さんが提案している「一汁一菜」という食事スタイルについて教えてください。

ご飯を炊いて、あとは具だくさんのお汁を作ったら十分。家庭の料理は毎日、毎食、この一汁一菜でいいんです、という提案です。料理を作ることを義務だと感じている人、毎日の献立を考えるのが大変だという人にこそこれを実践してほしい。基本はご飯と、みそ汁。毎食これだけでもちゃんと健康は維持できるんです。

献立の基本形は「一汁三菜」だと長いこと言われてきました。でも私はその常識をずっと疑っていたんですね。一汁三菜の成り立ちについて調べてみると、そもそもは神様へのお供えであり、お公家さんが食べるハレの日の料理なんですよ。ところがいつのまにかそれが和食の基本だと誤解されるようになってしまった。

一方で、高度経済成長期以降の日本では、アメリカナイズされた豊かな食卓が庶民の憧れとされるようになりました。専業主婦の女性たちは目をキラキラさせて料理学校に通って、そこで覚えた新しい料理を家で披露するのが「いいお母さんの鑑」とされていたんですね。こういった要素が組み合わさって、家庭料理のハードルがだんだんと上がってしまったのが今の日本の食卓なんです。

でも毎回の食卓で一汁三菜、つまりおかず3つを作るって大変なことですよ。そこに使う時間、エネルギー、発想力、献立のバランスと統制力を考えたら、できなくって当たり前。専業主婦のお母さんでも大変だし、仕事をしながらだったらなおさら無理でしょう。そうなったら三つ星レストランのシェフより忙しいかもわからんかも(笑)。

つまり絶対にできないようなことを要求されているのが、今の日本の女性たちなんです。男女平等といわれながらも、やっぱり女性のほうが家庭に対してより強く責任を強く感じているから、どうしてもそうなってしまうんですね。奥さんが家にいる男の人は、女性たちがそういうプレッシャーを感じていることをあまり知らない。

2017-03-23-1490267402-140720-02.JPG
食べ物が体を作っていることを実感させられる、心身ともに健康的で若々しい土井さん

■手間はたんなる労力、おいしさとは比例しない

――土井さんご自身が「女性のほうが家庭に対して責任を強く感じている」と考えるようになったきっかけはなんでしたか?

私ね、ちょっと前から時間が空いたときなんかに、「大人の食育」というテーマで勉強会を開き、ボランティアで料理を教えていたんですよ。

そこに来た既婚女性や、子育て中の女性たちが「晩御飯の献立で何を作ればいいかわからない」って口を揃えて言うんです。そのときの私にはそれがそんなに深刻な悩みだとわからなくて、「そんなのよく考えたらええねん」なんて言っていた。

でもよくよく話を聞いてみると、今の人たちってごちそうが家にある状態を当たり前だと思っているんです。お寿司とかお肉とか、口に入れた瞬間に「おいしい!」って感じるようなごちそうを、お父さんも子どもたちもみんな食べたがる。お母さんが全部手作りでその声に応えようとしたら大変なことになりますよ。

――「『料理はやっぱり“ひと手間”ですよね』とはよく聞かれる言葉ですが、それは労力を褒めているのであって、必ずしもおいしさにつながるものではありません」(『一汁一菜でよいという提案』)と書かれていますが、手間が美徳とされている風潮は確かにありますね。

家庭料理は、当たり前の下ごしらえ以上に手を掛ける必要はないんです。手を掛ければ手数が増えるので、その分だけ食材が傷んでしまう。ひと手間掛けることを愛情だと誤解している人が大勢いますけど、それは自分で料理のハードルを上げて自分を苦しめているだけ。

心をこめて飾り立てるハレの日の料理と、日常の料理を一緒くたにする必要はないんです。家庭料理がいつもごちそうである必要はないし、いつもおいしくある必要もない。

――おいしさすら重要でない? 

家庭の料理には教育機能が備わっています。たとえば、子どもがお母さんに料理を作ってもらうとき、一回の食事だけでも膨大な情報がやり取りされています。子どもは野菜を切ったり炒めたりする音を聞き、その匂いを嗅ぎ、食べて「おいしい」「今日のみそ汁はしょっぱい」と味の感想や違いを言ったりする。

意識していなくても子どもは食べる経験を通してたくさんのことを教わり、親からの愛情を受け取っている。その繰り返しが情緒を育みます。

作る側と食べる側。料理にはこの両面があります。作り手が気を張って手間暇かけた料理を出すよりも、「今日はこれしかないからごめんね~」と笑って出してくれる料理のほうが家族はみんな幸せになれる。

ご飯を炊いて、そのあいだにおかずを兼ねた具だくさんのみそ汁を作れば5分、10分で一汁一菜の食事が完成します。みそ汁の具は何を入れてもいい。これなら誰でも作れるし、毎日続けられます。男女の区別もありません。

「おいしい」って舌先で味わうものばかりじゃない。食べた後に「なんだか体の中がきれいになった気がする」と感じたこと、あるでしょう? 口の中に入れて体から出て行くまでが「食べる」という行為だとしたら、細胞のひとつひとつが喜ぶような、「心地良い」というおいしさもある。一汁一菜はその柱となる食事のスタイルなんです。

2017-03-23-1490267550-2486133-03.JPG
毎日基本の「一汁一菜」を作ることに、男女の区別はないと語る土井さん

■この本は男性にも届けばいいなぁと思って書いた

――共働き家庭の増加によって、日常的に料理をする男性も増えてきています。『一汁一菜でよいという提案』の思想に共感する男性の声もSNSでは多く見受けられました。

ああ、それは嬉しいですね。私はこの本をそういうところに届けばいいなぁと思っていたんです。前半部分はとにかく大変な女性たちを救いたいという気持ちで書きましたけど、後半では「科学的根拠はなんだ」「出典はどこだ」とすぐ考えがちな男性読者にも納得してもらえる材料を提示したつもりです。1冊全部読んでもらったら伝わるやろう、って。

――手早く作れる一人分のみそ汁レシピの他に、一人で食べるならお膳を使うという楽しみかたもあるなど、「一人で食べることが多い人」への提案もありますね。

そうそう、独身の人だって同じですよ。一汁一菜は誰でも簡単に応用できる食事の形ですから独身でも既婚でも関係ない。お膳を使うと食事というものにちゃんと向き合える、清らかな空間がそこにできるんです。それが自分の心の置き場にもなる。料理をすることで、自分を大切にしてください。

ひとつ予想外だったのは、毎日のごはんを一汁一菜にすると決めた人が「今晩のおかずどうしよう」という義務感から解放されたことで、逆にすっごく料理をする気が湧いてきて楽しく作るようになった、という話(笑)。結構聞くんですよ。そういう反応は想像できなかったと言うか、思わぬ副産物やったと思いますね。

2017-03-23-1490267619-8319320-04.JPG
「料理をすることは、自分を大切にすること」と土井さんは笑顔で言う

■家庭料理にイデオロギーはいらない、どこまでも自由でいい

――ご飯とみそ汁というスタイルは和食ならではですが、一汁一菜のスタイルは日本以外の国でも応用できそうでしょうか?

もちろん。たとえばフランスなら野菜スープをベースにして、あとはパンやチーズ、果物なんかがあれば十分。日曜に家族が集まったときに作ったローストの残りを、ちょっと食べるくらいで。どこの国にも毎日食べても飽きない基本の料理が必ずあるんですよ。それは絶対にすべての民族が持っているはず。それでないとやってられないでしょ。

米もみそも自然が作ったものだから飽きないんです。でも頑なにそこにこだわらなくていい。ご飯がパンやパスタに、みそ汁が野菜スープに変わっても一汁一菜はできる。好きなもの、あるものを食べればいいんですよ。

パスタにみそ汁はおかしいとか、イタリアンはこうあるべきだとか、そういうイデオロギーみたいなことは家の中に持ち込まなくていいんです。

うちのおじいちゃんは100歳くらいまで生きましたけど、ご飯に牛乳かけて食べてましたわ(笑)。家庭料理はそれくらい自由でいいんです。

2017-03-26-1490491008-162532-book.jpg

本の帯は味噌汁の色だという『一汁一菜でよいという提案』

前編「『うちの嫁が』と言う男性には違和感しかない」 土井善晴さんが訴える、家の仕事の再認識

(取材・文 阿部花恵

 |  執筆者: 阿部花恵

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

てるみくらぶは、どこで失敗したのか? 格安旅行会社の異常な実態

2017-03-31 | Weblog

格安旅行で若者を中心に支持を集めていた

「てるみくらぶ」が先日、東京地裁に破産を申請しました。

同社を利用した海外渡航中のツアー客は現在も2,500名程度いると見られ、

事態はますます深刻化しています。

今回の倒産劇について、無料メルマガ

店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業

の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、

「格安旅行会社の宿命」とした上で、

今後も破産に追い込まれる会社も出てくるだろうとの見解を記しています。

 

「てるみくらぶ」の破産からわかる格安旅行会社の現状

佐藤昌司です。

自社のインターネットサイトで格安旅行を販売する旅行会社「てるみくらぶ」が3月27日、

東京地裁に破産を申請しました。格安旅行会社の置かれた経営環境の厳しさが浮き彫りとなりました。

帝国データバンクによると、てるみくらぶの2011年9月期の売上高は約134億円でしたが、

2016年9月期は約195億円に達していました。

近年はヨーロッパ旅行やクルーズ旅行など付加価値の高い商品をシニア向けに販売していました。

積極的な広告展開が功を奏していたようです。

しかし、積極的な広告展開で経費がかさみ

対面販売や添乗員の増員等で人件費が増加し

経営を圧迫したといいます。

旅行業は利益率が低いビジネスです。

えば、直近10年のJTBの売上高純利益率は-1.3~1.1%です。

HISで0.1~2.2%です。

大手でも経費がかさめば利益はすぐに吹き飛んでしまう業界構造であることがわかります。

体力がない中堅以下の旅行代理店であれば、

なおさら経費コントロールが重要となることは言うまでもありません。

近年はオンライン販売の競争が激化しています。

「楽天トラベル」や「じゃらんnet」、

「Yahoo!トラベル」といった大手のオンラインサイトが幅を利かせています。

中堅以下のサイトは厳しい状況にあります。

 

格安旅行のビジネスモデルを確認します。旅行代理店は航空会社から個人向けの割安航空券を仕入れ、売り上げに応じて支払われる販売奨励金(キックバック)の分を値引きして販売します。この方式では旅行代理店は商品自体に付加価値をつけることが困難です。行きたい旅行先の航空券があるかないかが利用者にとっての最大の価値となるためです。旅行代理店に最も求められることは、価格以外では「仕入れ力品揃え」になります。

販売力がある旅行代理店は販売奨励金が優遇されます。そのため、販売力のある旅行代理店は販売奨励金を還元する形で低価格で航空券を販売することができます。付加価値がつけづらいビジネスのため、低価格で販売し品揃えが豊富な旅行代理店に消費者は集まります。消費者が集まる代理店は航空会社からの販売奨励金が優遇されます。規模が大きくなるため、品揃えも豊富になります。こうしたサイクルが強く働き、かつ利益率が低いという業界の特徴もあるため、中堅以下の代理店では利益を確保することが難しいのです。

格安旅行の先駆けといえばHISでしょう。今でこそ珍しくない格安航空券ですが、もともとは違法商品とも言えるものでした。世界の主な航空会社が加盟するIATA(国際航空運送協会)が航空運賃の下限を設定し、それを下回った金額で販売することを禁じていたのですが、HISはそれに異を唱える形で格安航空券を販売していきました。

こうした経緯からも分かる通り、旅行商品は基本的に価格が決め手になる特徴があります。一方、消費者の旅行ニーズの多様化などにより、価格以外の付加価値も求められてきています。穴場の観光地や現地の最新情報といった付加価値情報を提供できるかが問われる時代にもなっています。ホテルやレストランなどは次々に開発され、入れ替わっていきます。そういった現地の情報をリアルタイムで提供できるかが問われています。

HISは旅行事業において国内294拠点、海外66カ国141都市232拠点のネットワークを誇ります(2017年1月末日時点)。ネットワークを生かして現地の情報を素早くキャッチアップすることで、価値がある情報を提供することができます。安いホテルの空き部屋があればその情報をいち早く消費者に提供できるので、ホテルの空き部屋を低価格で販売するといったこともできます。

旅行商品の付加価値という点ではJTBも外すことはできません。例えば、町おこしに成功した地域を実際に訪ね、その成功事例を学ぶといった旅行を取り揃える「地恵のたび」という旅行商品を扱うなど、付加価値のある旅行を提案しています。

てるみくらぶが近年力を入れていたヨーロッパ旅行やクルーズ旅行といったシニア向けの商品は付加価値があるといえます。しかし、競合も力を入れていて簡単な市場ではありませんでした。例えば、渡航先の大半がヨーロッパで、クルーズ船の運用も行なっている「ニッコウトラベル」という旅行代理店があります。60歳代以上で全体の95%を占め、シニアに人気です。成長性と相乗効果を見込み、三越伊勢丹が買収したほどです。ニッコウトラベルは1976年の設立で、古くから少しずつ成長していきました。

HISやJTB、ニッコウトラベルなどの旅行代理店は時間をかけて付加価値を築き上げていきました。一朝一夕で出来上がった訳ではありません。一つ一つを慎重に積み上げてここまできました。旅行業は利益率が低いため、少しの経費でも利益が簡単に吹き飛びます。より慎重さが求められるビジネスであることを理解していたのです。

てるみくらぶは慎重さを欠いていたといえます。東京商工リサーチによると、2016年9月期の前受金は70億円でしたが、破産を申請する直前の3月23日には100億円で、30億円も膨らんでいたとしています。前受金とは、商品などを提供する前に受け取る代金のことです。借入金(借金)が9億円増えているため、負債は39億円の増加です。一方、資産の現金及び預金は12億円減少しています。そのため、債務超過額が51億円増加していました。

前受金と借入金、現金及び預金以外の変動がありません。そのため、前受金の30億円の増加はおそらく大半が売り上げによるものと考えられ、債務超過額の51億円の増加はおそらく大半が経費の増加によるものと考えられます。かけた経費が売り上げに貢献していなかったのです。2017年3月30日付東京新聞は「最後の決算となった一六年九月期は、決算書上は営業損益が一億一千万円の黒字となっているが、実際は十五億円以上の赤字だった」とも報じています。

てるみくらぶが破産に追い込まれたのは、身の丈に合わない投資を行ったことにあります。企業体力に見合った経費の使い方が求められていました。業界の利益率の低さを考慮した慎重さも必要でした。性急さで足元をすくわれたといえます。

格安旅行会社の経営環境は厳しさを増しています。今後、破産などに追い込まれる企業がさらに出てきてもおかしくない状況といえるでしょう。格安旅行会社は正念場にあるといえそうです。

 by: まぐまぐニュース

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする