鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

波に菊文図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2010-10-27 | 
波に菊文図鐔 古金工


①波に菊文図鐔 古金工


②波に菊文図鐔 古金工

 ①鐔の造形的な様式は葵木瓜形と呼ばれる太刀鐔に倣っている。猪目と蕨手を組み合わせ、典雅な形としている。図柄は全面に波を意匠して菊花と丁子を散し、文様としている。背景の波は明らかに主題を装うための文様でしかない。この波文の発想は、四方に配された蕨手の立ち上がりが、風に立つ波を思わせるところからのものであろうと想像される。このように、地文としての波文が次第に意味を持ち、意匠の要となってゆく。□
 ②は桃山時代と推測される古金工の鐔。全体を覆っている波は明らかに古典的な文様。これに枝菊を散して心象風景としている。これらのような作品も、後の絵師の心をくすぐったことであろう。櫃穴は江戸時代に開けられたもので時代観は降るも、製作は桃山時代とみられる。