鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

栗鼠図鍔 間 Hazama Sahari-Tsuba

2010-10-01 | 
栗鼠図鍔 間


栗鼠図鍔 銘 間

 表に栗鼠、裏には筍を、鐔全面を使って大胆に画き表わした鐔。大きな尾は流れるような線描で、栗鼠の耳の辺りは砂張が変色し、意図せぬ景色となっている。裏の筍と垂れ下がる葉の部分の激しい凹凸は、焼物の肌に似て、これも楽しめる景色。
 こうして眺めてみると、わずか二色の、しかもコントラストを控えた色調であるが故に美しいのであることに改めて気付く。
 子供の頃に鉛を加熱溶融し、型枠に流し込んで鉛の文鎮などを作って遊んだことがある。
 加熱溶融した鉛は、過熱するほどに赤みを帯び、強い金属光沢を呈するのだが、表面は次第に酸化して光沢を失う。それ故に型に流し込む際に表面に生じた汚い酸化皮膜が流れこまないように工夫する。型に入った鉛は、温度が下がるに従って次第に硬化するのだが、この際、表面を掻き混ぜると、鉛の結晶のようなガサガサとした凹凸が生じる。表面には光沢があり、キラキラとして美しいものであった。それが時とともに灰色に変色、光沢を失った。
 子供の頃、光沢を失った金属には興味を示さなくなってしまったが、現在、同じ金属質からなる作品が示す質感に強く惹かれている。