人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

長いセンテンスの原点は?~川上未映子著「六つの星星」(対話集)を読む

2012年10月12日 06時57分25秒 | 日記

12日(金)。昨日、西新橋一丁目町会のお世話でANA(全日空)メンテナンスセンターの見学に行きました まず、新橋第一ホテルでバイキングの昼食を取って、貸切バスで羽田に向かいました。参加者は西新橋、内幸町地区のビル管理関係者など総勢45人で,当社からは6人が参加しました メンテナンスセンターに着いて,最初に日付・日時入りの入館パス(下の写真)を受け取り,見学に当たっての注意とANAの航空機の概要について説明を聞いて,3つのグループに分かれて見学に移りました なお,この入館パスは持ち帰ってもよいとのことだったので,見学の記念に持ち帰りました

          

          

 

格納庫に入るとさすがに航空機を何機も収納してメンテ作業をするスペースだけあって,広々としていました.驚いたのは柱が1本もないことです 昨年の3.11の大地震にも十分耐えたとのことです

 

          

 

前輪のタイヤが並んでいます.タイヤの溝は縦に入っています.基本的に航空機は直線で進むからとのことでした

 

          

 

ボーイングのエンジンが台車に乗せられていました.この台車が勝手に動くことを”ボーイング・マイ・ウェイ”と,言いません

 

          

 

格納庫から滑走路を見るとジャンボ機が停止していました.ここで,次々に着陸してくる航空機を見ながら,案内係の女性が「飛行機は風に向かって飛び立ち,風に向かって着陸します」と説明してくれました 離陸時は風による浮力を利用して飛び立ち,着陸時は風をブレーキ代わりにしてスピードを落とす訳ですね それと,私は滑走路は離陸用と着陸用が別々になっていると思っていましたが,風の向きによって離陸用にしたり着陸用にしたり切り替えているとのことで,私にとっては”目から鱗”でした

 

          

 

私は終始,当社のZ氏と行動を共にしていたのですが,彼は中学時代には飛行機が大好きで”非行少年”,もとい,”飛行少年”と呼ばれていたほどだったようで,その名残か,小型カメラで片っ端からバチバチ写真を撮っていました 気のせいか案内係のお姉さんにカメラを向けている場面が多かったように思います 本人は完全黙示,もとい,完全否定すると思いますが・・・・・・まあ,後でデジカメを見せてもらえば一目瞭然ですからね

ところで,最初の「見学の注意」で,写真は自由に撮影しても差し支えないが,ホームページやブログにアップする時は,撮った写真をANAあてにメール送信して許可を取るようにとの注意がありました 上にアップした写真はすべてANAの了解をとったものです.いちいち面倒くさいなぁとは思うものの,企業のコンプライアンス上の措置として仕方ないですね

参加者の日頃の行いが良かったせいか良い天気に恵まれ,普段見られないスポットを見学できました.お世話をして下さった町会のOさんはじめ関係者の皆さまありがとうございました.参加された皆さまお疲れ様でした いま,”工場見学”が流行っていますが,全日空はANA場です

 

          

 

  閑話休題  

 

川上未映子著「六つの星星(対話集)」(文春文庫)を読み終わりました 川上未映子は1976年,大阪府生まれ.2007年「わたくし率 イン 歯ー,または世界」が第137回芥川賞候補となり,2008年「乳と卵」で芥川賞を受賞しました 2010年には”いじめ”をテーマにした「ヘヴン」が芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました.「ヘヴン」はこのブログでも取り上げました

「六つの星星」は,精神科医・斎藤環,生物学者・福岡伸一,作家・松浦理英子,歌人・穂村弘,作家・多和田葉子,哲学者・永井均との対話を収録しています

この対話集を読んでみようと思ったのは,彼女の文章の魅力の秘密はどこにあるのか,また,読点でセンテンスを続けていき,いつ終わるか分からない長い文章を大阪弁で書いていく彼女の原点はどこにあるのかを知りたかったからです

彼女の文章の魅力をひと言で言い表しているのは作家の多和田葉子さんです 会話の冒頭で彼女は語っています.

「私が川上さんの本で一番はじめに読んだのは『先端で,さすわ さされるわ そらええわ』なんですが,これが非常に面白かった 内容もだけど,なんといっても言葉のリズムが面白いんです.このふたつは切っても切り離せないものなので,分けて考える方がおかしいんだけど.読んでいるとリズムを感じて,音楽的にも素晴らしいと思いました

その通り,彼女の文章の魅力は”リズム”です.では,長い文章の原点はどこに・・・・・それは作家・松浦理英子さんとの対話の中で,川上さんが自ら発言しています

「処女作を発表したとき大阪弁を使っていたり,ミュージシャン出身であったりということで町田康さんと比較されることがあって,もしかしたら体言止めを多用するあたりがそう見られるかもしれませんが,自分自身は似ているとはあまり思わなかったんです むしろ句点が極端に少なかったりするのは,樋口一葉の影響なのではないかと感じました

「評論家の石川忠司さんに,川上未映子の文章にマルが極端に少ないのは,完結して終わらせたくない絶対保留への意思である,といったことを書かれたのですが,あ,そういう側面もあるかもしれない,と率直に納得してしまいました.ひたすら読点でつないでいって,句点が全然ないから,どこで終わらせたらいいのかわからない.でも,私たちの会話に『.』って,実際にあまりないんですよねえ

これで川上未映子の文章の原点は樋口一葉にあったことが分かりました

6人の中で,とくに内容が面白いと思ったのは生物学者・福岡伸一さんとの対話です

福岡:「生きているとは”動的な平衡状態”を保っていること.人間を含めすべての動物は,臓器→細胞→タンパク質→アミノ酸という風に分解していくと,最終的にはみな分子の連なりということになります しかも分子は自ら分解され,再構築されるというサイクルを繰り返すことで,どんどん入れ替わっている.川上さんだって,半年や一年経てば,体の中身はすっかり入れ替わって別人になっている

川上:「じゃあ半年前に約束した締め切りは,別の分子構造が約束したことなのでなかったことにできますかね」(笑)

福岡:「分子が入れ替わっているのに見かけ上同じに見えるのは,生命体に秩序=平衡状態を回復しようとするメカニズムがあるからです.そこが石や金属といった無生物との違いですね

それぞれ専門分野が異なる6人と対等に対話できる川上未映子さんは凄いと思います 彼女は歌手だったことから,歌のリズムが体に染みついていて,それが右脳を刺激して文章に反映するのかもしれないな,とも思いました.それにしても,この本の対話を読んだ後でも「わたくし率 IN 歯ー,または世界」の”率”と”歯ー”の意味が未だによく分かりません.文学的センスがないからでしょうね

 

          

 

コメント
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