暗きより
暗き道にぞ入りぬべき
はるかに照らせ
山の端の月
継之助は目をつぶって聞いている。
どうやら人生と仏を詠んでいるらしい。
人の生はいずこからともなく来て
いずこともなく去ってゆく。
「暗きより暗き道にぞ入りぬべき」とは
そのはかない人間を救うがために
仏の誓願は山の端の月のごとく
はるかに照らしてほしい
ということであろう。
「峠」 著 司馬 遼太郎
継之助が聞く紫式部の詩
目をつぶって聞くその姿を想うに
なんと情緒的な感性の持ち主だと嬉しくなる。
薄暗い混沌とした月夜にありながら
月の明かりに人生を考える。
暗いところから暗いところへゆく
考えて見ればつねにはかない人生
そんな生き様を
せめて照らしてくれる山の端の月
目をつぶって聞く継之助も素晴らしいけれど、
歌った紫式部もなんと妖艶なことか
早起き鳥
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人を訪ねることは、
「人を食いにゆく」ことだ、
と継之助はいったことがある。
「食われてもいい」
とも継之助はいう。
食われるに価するならよろこんで
人の餌になってしまってもいい。
そのどちらかでなければならぬ、
と継之助は思っている。
「峠」 著 司馬 遼太郎
人を訪ねる事は、
足を運んで会いに行くこと。
食うか食われるか!
ちょっと言葉は激しいが、
学ぶか、教えるか
という事なんだろうか?
それとも自分の想い、企てを
話しにいくことなんだろうか?
しかし逆に相手の想い企てに
はまってしまうことだろうか?
ちょっと考えてしまう。
でも、以前親しかった古い友、
そして最近の新しい友、
どちらにせよ、足を運んで会いに行くことは、
会いに行くこと自体に、
学びがありそうだ。
その人の足運びの一歩こそ
本当に深い意味があるように思う。
昨日、遠くから、
わざわざ会いに来てくれた人に
十分なもてなしができただろうか…?
早起き鳥
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明智氏がほろび、
このあと羽柴氏が勃興した
高虎は時勢のゆくすえを見ぬき、
縁をもとめて
秀吉の実弟の秀長につかえた。
この機敏さもさることながら、
高虎にはそれだけの実力もあった。
それまでに四度主家を変えてきたが、
どの主家のもとに居たときでも
一度ははなばなしい武功をたてた。
「峠」 著 司馬 遼太郎
仕える主家を転々とし、
常に戦場で人目につく働きをして
武勇、成功を修めた高虎
そして結果的に犬死にする事無く
天命をまっとうした。
そして長岡藩にこだわった継之助
同じ武士といっても、
その生き様には大きな隔たりがある。
自分自身、胸に手をあてて、
考えて見るに
権勢を揺るがす実力者との御縁もないし、
いろんなタイプのトップに
合わせられるほどの度量もない。
ましては常に成功というヒットを
飛ばせることなど夢のまた夢
御縁のあった組織で、
そのトップとの御縁を大切に
その中で生きるしかない!
だからこそ継之助の生き様に
好感を抱くのかもしれない…!
早起き鳥
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武士とは精神の美であるという。
しかもその美は置物の美ではなく、
骨っぷしのたしかな機能美
でなければならない、
と、そういう意味のことを
継之助はいった。
しかもその美の像ができあがるまでに、
徳川三百年という
ながい歳月がついやされている。
「この継之助も三百年かかってできた」
「峠」 著 司馬 遼太郎
武士という言葉を
「日本人」と置き換えて考えて見る。
徳川三百年という期間は違っても、
どれも同様に難しいもの
極端にいうと人間とは
猿や犬と区分する生きものの種の違い、
日本人とか武士とかいうと
また違った意味があり
そこにには生き様がありそうだ。
継之助が問題にした、
人間であって日本人であること。
日本人であって武士である。
武士であって越後長岡藩士である。
と常に意識していたのかもしれない。
長岡藩にこだわった継之助の美意識が光る。
早起き鳥
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星、月、山、川、人間など、
あらゆる実在というものは
本当に実在するのか。
朱子学にいわせると
天地万物(実在)は
ちゃんと客観的に存在する。
が、継之助の陽明学では、
そうは見ない。
それらの天地万物は
人間であるオノレが
そのような目で見、
心に感応しているから
そのように存在しているので、
実際にはそんなものはない。
「峠」 著 司馬 遼太郎
この朱子学と陽明学との
考え方の違い、
なかなか理解できない。
実在する天地万物を人間が認識して
受け入れているかどうかは疑問である。
道ばたに咲く
一輪の花など気にもとめないし、
夜空の星々など、
全く眼中に無い事が多い!
自然、天地万物を愛でる心だけは
持っていたいものだ。
そして朱子学だ陽明学だというまえに
物事がよく見えるこころを
つねに曇らせずに
保っておきたいものだ!
早起き鳥
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