トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

酒と暴力 4

2006-06-30 12:46:10 | アルコール依存症
「そんな事分かりませんよ。本人じゃないんだから」
その言葉に全ての希望を潰された様な気分に陥った

あの時はなんて思いやりのない医師なのだろう怒りすら沸いた
でもあの医師の言った事は間違ってはいなかった

今なら分かる
「本人じゃないから分からない」
そんな当たり前の事が私には納得いかなかった

私は舅の気持ちを先回りしていつも一生懸命考えてきた
本当はお酒を止めたいと思っているに違いない
本当は苦しくて助けて欲しいと思っているに違いない

私には分かる
舅の気持ちが分かる
きっと辛かったんだ。
まだ救いがあるに違いない
何か手を尽くせば舅はきっとアルコールをやめられる筈だ

病院へ入って同じ仲間と話が出来ればきっと舅のうめられない寂しさも解消されて
生活できるようになる
姑も家に帰れてまた月一回くらい通って皆で穏やかに暮らせるはずだ

アルコールをやめる事ができたなら・・・
捨てられない希望だった

警察を呼んでから、舅は来なくなったが電話が鳴り止まなくなった
切れては鳴り、鳴っては切れた

留守電に変えると苛苛したようなため息や突然切れたように
「テメーラ!出ろー!コノヤロー」と怒鳴り散らした
朝だろうと夜中だろうと鳴った

仕方なく夜は電話線を抜いた
昼間も抜きたかったが抜くと夫の会社に掛けて迷惑が掛かるので
抜く事が出来なかった

一週間が過ぎて突然実家の父と母がやってきた
父は家に来るなり
「舅さんを玄関で門前払いした上に警察まで呼ぶなんて、どういうつもりなんだ。
お姑さんの介護で疲れていただけだろう。謝ってお姑さんも帰ったほうが良い。
お前も電話を掛けて謝って許して貰え!」とまくしたてた

「でも・・・」と口ごもると
「いいか?常識で言っても身内を警察に連絡するなんて、話せば分かる事じゃないか」

「常識」父の口癖。
父の中で身内が警察に連絡する事や姑が家出をしたりする事など考えられないのだ

「みっともない。世間がどう思うか」そう言いたそうだった
父には私が大げさに騒いでいるようにしか思えなかったのだろう

父は姑に「お姑さんもこのままって訳にはいかないでしょう。帰ったほうが良い。
私がお舅さんに話してあげますから」と言った
姑は困惑したように俯いたまま返事もしなかった

父は私に「とにかく今からお舅さんに電話して警察を呼んだ事を謝れ。それからじゃないと話し合いも出来ない」

嫌だった。電話などしたくなかったし警察を呼んだ事を後悔もしていなかった

でも八方塞がりだった
病院へ入れる方法も暴力を止める方法もない。
父が説得すると言う。それも方法なら試すしかないのかもしれない

混乱に疲れ果てその辺にある藁なら何でもかんでも摑まりたい心境だった
私は舅に電話を掛けた

舅はすぐ電話に出た
「ちっこです。警察を呼んだりしてすいませんでした」と謝った

「おー。反省してくれたか。警察を呼ぶなんて本気じゃなかったんだろう」
本当に警察が来たことを知らないようだった
私は黙っていた

「いやー。反省してくれたら良いんだ。いつかあさん帰ってくるんだ」と上機嫌で聞いてきた
「今は無理です。お姑さんはお舅さんの暴力が恐くて会えないと言ってます。」

「俺、全然覚えていないんだ。何があったんだ。教えてくれ」

はらわたが煮えくりかえるようだった
覚えていない・・・いつもの口癖だ
何か問題を起こすと必ず「酔っていて覚えていないんだ」

今までそう言えば全てが許されてきた
姑もどんなに暴力を振るわれても
「飲んでて覚えていないから。」
「酔っていたから、言っても無駄」といつも許してきた

でもあの時の舅は酔ってなどいなかった
お墓参りに行くまで舅は飲んでいなかった
帰りに一本のお酒を買い一口口にして暴れだしたのだ

お酒を咎められた事が引き金だった
でも舅は泥酔はしていなかった
飲みながら暴力がエスカレートしていったが200ミリのワンカップ
を帰るまでの間に飲み干しただけだった

絶対に忘れてなどいない。
玄関に来たときもお土産を持って来るほど冷静だった
声を聞けば長い付き合いでどれ位酔っているか分かるようになっていた

あの時も泥酔などしていなかった
それなのに舅は酒のせいにして、自分のした事をうやむやにしようとしていた

許せないと思った
この数日間にどれ程恐ろしい思いをし、子供も怯え傷つけたのに
何一つ認めようとしない

全てはお酒のせい。
酔っていたから分からないと言えば全てが許され済まされると思っている
舅を絶対に許せない

初めて舅を憎いと思った
(つづく)









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