トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

トンネルの向こう側

2010-05-23 19:26:32 | ポエム
長く、暗い、迷路のようなトンネルの中にいた。

迷いながら歩いているといつも二本の分かれ道にたった。

『どっちへ行けばいいのだろう』

『どっちの道が出口だろう』

右の道。左の道。

目を凝らすと右の道には薄くぼんやりと灯りが見える。

左の道はどこまでも真っ暗だ。
まるで大きな魔物の口の中を覗き込んでいるようだった。
あまりの暗さに足がすくんだ。

『きっと。右だ。だって遠くに薄明かりが見える。』

ぼんやりと見える灯りを頼りに、ずんずんと進む。

灯りはだんだん大きく見えてくる。

『良かった。やっぱりこっちだった』
出口への期待に胸膨らませ、光に向ってどんどんと進む。

だけど。明るくなりかけたトンネルはまた薄暗くなっていく。
『速く。見失わないうちに』

もう少し。もう少しのところで灯りはふっつりと消えた。

そしてまた二本の道の前に立っていた。

『なぜだ。灯りを目指して歩いたのに』

また右の道。左の道。
目を凝らしてみる。

今度は左の道にうっすらと灯りが見える。
私はまた灯りのともる左の道を進む。

もう少しのところでまた灯りは消えた。

何度も。何度も。私は二本の道を選び続けた。
灯りのともる道を選び進み続けた。

『今度こそ』『きっと次は』そう信じて。
しかし、トンネルの出口にたどり着くことはなかった。

トンネルに迷い込んでから18年目、また私は二本の道の前にたった。

右の道。左の道。

今度は右の道にうっすらと灯りが見える。

とおく誰かの声が聞こえた。
『何度も同じ過ちを繰り返す時、そこに答えが隠されているんだよ』

いつも灯りのともる道を選んだ。
だけど、それは本当の灯りではなかった。
真っ暗な道から目をそらす、己の弱さの灯りなのだと気がついた。

私は真っ暗な左の道を選んだ。

恐くてたまらない真っ暗な左の道。

最初は這って進んだ。

杖を見つけ壁につかまって進んだ。

どこまでも真っ暗な左の道。

先など見えない。

ただ、足元だけを見て。

歩く地面だけを信じて。

私は、転び。傷を負いながらも進んだ。

いつしか、つま先が見えるようになり。
自分の手が見えるようになった。

俯いた顔をあげると私はトンネルの向こう側に立っていた。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (珊瑚)
2010-05-26 12:51:22
すごい納得しました・・・
弱さが駄目ではないけれど
そのことに気が付いて、やっと繰り返したくないと
暗闇の道を選ぶ覚悟があって
トンネルを抜けるんですね
返信する
珊瑚さんへ (ちっこ)
2010-05-26 22:32:13
真っ暗に見えた道も、
実は自分が目を瞑っていただけなんですよね。

暗闇は自分が作り上げていた。
トンネルも自分で作っていた。
今は、あの18年をそんな風に振り返ったりします。

私の言いたい事が伝わってもらえて
嬉しかったです。
ありがとう。
返信する

コメントを投稿