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ジュラシックワールド・新たなる支配者


まあ、恐竜が見たかったのであって、虫じゃないということで。
良い面もたくさんありましたね。多数の恐竜が登場して、アトロキラプトルのチェイスシーンとか、ケツァルコアトルスの襲撃など見せ場もあった。恐竜の映像を見てノンストップアクションを楽しむ分にはよくできた構成だった。

しかし個々の恐竜の活躍が足りないと感じた。つまりストーリーの中心に恐竜がいない。人間のストーリーが前面にあって、恐竜は背景の舞台装置(これはどれかのレビュー動画の方の表現)になっていた。新種恐竜の多くは人間を驚かすためのアトラクションのようであり、T-Rex もブルーもギガノトも、それぞれ活躍が足りない。プロローグで暗示されたT-Rexとギガノトの因縁はなんだったのか。ブルーとオーウェンの絆、ベータとの絆もあっさりしていた。アトロキラプトルに襲われたオーウェンをブルーが助けるような絆が描かれても良かった。ギガノトサウルスは悪役あるいはラスボス扱いするなら、多数の人間を殺しまくるなど、大暴れが必要だった。そうすればギガノトを倒すことに大義名分が立ち、カタルシスがあったはずだが、実際はギガノトは特に悪いことはしていないので、かわいそうなだけだった。

見終わってから4,5本のレビュー動画を見たが、みなさん言語化が巧みでなるほどと思った。あっきーのサブスク映画なんとかによれば、大方の不満は2つのストーリーを描きすぎたことであるという。1つはパーク組つまりグラント、エリー、マルコムのレジェンド達がバイオシンに潜入する、ミッションインポッシブル。2つ目はオーウェン、クレアらワールド組による、恐竜密売組織に誘拐されたメイジーとベータの奪回作戦。2つのストーリーが交互に描かれ、最後に合流して1つの結末に向かう。これ自体はクロスオーバーというよくある手法であるという。しかし、この2つのサスペンスアクションをじっくり描きすぎたため、尺が足りなくなり、恐竜の描き方が軽くなってしまったという。確かに、レジェンド達が活躍するのはうれしいが、それは別の物語にすべきではないかとは思った。

ところが、ぷるーと向井さんによれば、なんとトレボロウ監督はうっかりこのような構成にしたのではなく、最初からイナゴ問題を中心のストーリーにしたかったようである。トレボロウ監督はレジェンド達を登場させるにあたり、これまでにない斬新なストーリーを作りたかった。そこでこれまで活躍していないエリー博士に注目し、古植物学者ならではの視点と、恐竜時代からイナゴはいたという点から、食料問題に行き着いたらしい。つまり監督がやりたい個人的な思いつきと、ジュラシックファンである観客が求めるものとのギャップが初めからあったというのである。そりゃあこうなるわな、ということである。斬新な試みという点ですでに、それはシリーズ最終章でやることじゃないだろ、というコメントがあった。

最後の3頭の戦いは、ストーリー上の必然性がないうえに、残念だった。あれだとティラノは、テリジノの助けがなければギガノトに勝てないことにならないか。あれではティラノもギガノトも嬉しくないだろう。またフォークをケーキに刺すように爪が貫通していたが、ギガノトの体は豆腐かなにかでできているのか。
 ティラノとギガノトはやはり、それぞれの特性を活かして、正々堂々とサシで勝負してほしかった。ティラノが「肉を切らせて骨を断つ」ような戦いをすればよかった。ギガノトに腹部を咬まれてダラダラ流血しながらも、最後にギガノトの頭骨を噛み砕く、くらい壮絶な戦いを描けば、恐竜ファンも「さすがティラノだ」となっただろう。実際にティラノサウルス同士の闘争で顔を咬みあうことはあったはずなので、ティラノがギガノトと対峙した場合、顔を咬みにいくことはありうると思われた。

メイジーの出生の秘密のあたりは一応よくできていた。ゲノムDNAを採取するだけなら誘拐までする必要はなくて、車の中で採血か皮膚片でも採取して解放すればいいだけであるが、きっと全身のいろいろな組織を調べる必要があったのだろう。メイジーの成長、特に「私の両親」と言ったり、もう少しでベータと心を通わせるところまで来たのはよかった。
ちなみに研究者といっても、カオス理論が専門のマルコム博士に、遺伝子組み換え実験施設(飼育室含む)のアクセスキーを渡す必要はない。実験するわけではないから、見学したいときにウー博士が同行して案内すればいいだけの話である。

悪役の描き方も少しずつ足りない。アトロキラプトルを操る女も、007だったらレーザーポインターを奪われて自分に当てられ、アトロキラプトルに殺されるのがお約束だが、そこまでの展開は無理だったのだろう。バイオシンのドジスンも確かに黒幕であり、巨悪なのだろうが、直接残虐な行為をするわけではないので、いまひとつそんなに悪人には見えなかった。つまり殺されてもカタルシスがない。ドジスンの腹心のラムジーは、CIAの潜入捜査官なのだろうが、そのことが後半ではちゃんと説明されていないので、ただの裏切り者にもみえる。ドジスンがこれまでの絆云々と非難するのに対して、「絆はない」と言い放つだけだったが、そこは「あなたの科学にはモラルが欠けていた」とかなんとか、正義のセリフを言ってほしい。

毎回都合よく助けてもらうウー博士のキャラは好きなのだが、今回改心したのはいいとして、イナゴ対策プロジェクトに任命されるだろうか。過去のやらかしからして、連邦政府や州政府当局がウー博士に任せることは考えにくい。いや総集編として、最後にウー博士の更生を入れるのはいいと思いますよ。ただひねくれ者としては、ウー博士の設計したイナゴを放って大丈夫なの?そういうのがいけないんじゃなかったのか。死滅するどころか最強のイナゴが出現して世界の穀倉地帯が壊滅するところまで見えた。

もう一回くらい観てもいいかな。
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