tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

小説 デジャ・ヴ(グロ注意)

2007-01-06 18:59:07 | エッチ: よい子は立ち入り禁止

15.水色のワンピース
「大丈夫?また、うなされていたわよ」
前ボタンの水色のワンピースを着たヨーコが、ベッドに腰をかけ心配そうにぼくを見ていた。ぼくは、ホテルのダブルベッドの上で寝ていた。窓からは、シチリアの陽光が差し込んでいる。時計を見ると昼過ぎだった。
「あー夢か!」
ぼくは、なんとも嫌な悪夢の残滓にやりきれない思いを募らせていた。夢の名残のせいか、体中に痛みを感じるような気がする。寝違えでもしたのだろうか。手首を見ると、やや赤くはれているようにも見える。
<どんな夢を見てたの?>
ヨーコの質問に<落下する夢>と答える。本当の夢の内容は、言うにはあまりにもひどすぎた。
<落っこちる夢って、何かを失ったりすることへの不安や恐れの現れじゃなかった?>
<フロイトにしろ、ユングにしろ、きょう日、夢判断を信じる人はいないっすよ>

中国の想像上の動物の獏は、形は熊に似、鼻は象の如く、目は犀の如く、尾は牛の如くで、頭小さく、人の悪夢を食らうと言う。其の皮を敷き、或いは絵に描いて持てば邪気を避けるらしい。ぼく心に住み着き、さきの悪夢を食らえば食べきれないほどの量かもしれない。夢は白黒と言われていたように思うが、先ほどの悪夢は、血の色が妙に印象的なフルカラーだった。普段、夢を見ないか見てもすぐに忘れてしまうが、よっぽどタカオカの言っていたダルマの話が強烈に心に焼きついていたのだろうか、妙に辻褄が合った長い長い夢に不思議な感覚を覚えていた。ヨーコが目の前にいる今と、さっきの悲惨な悪夢とどっちが現実なんだかしばらく混乱していたのだ。夢は実体験を元に見るものと思っていたが、一度も体験した事の無い未体験の事まで見るのであろう。いつしか見たスプラッタ映画などリアルな映像により、未経験の体験まで自分の体験として記憶してしまっているのであろうか。

「ほかの皆は?」
聞くと、タカオカとニシザキとアヤカはバスでタオルミーナに出かけたらしい。洗濯物がたまっていたヨーコは、でかけずにホテルで洗濯。
「心配だったんだから・・・」
ヨーコは言う。今朝、タカオカとニシザキに案内されてホテルへ到着した彼女は、彼女達の部屋のはずのダブルベッドで寝ているぼくを見て、しかも、あまりにもうなされているので心配になったらしい。
「ありがとう」
ぼくは、朝、部屋にチェックインするや、ベッドで眠りこけてしまったようだ。そうか、ホテルから一歩も外に出ていないのか。ぼくは、平穏な現実に今いることに感謝の気持ちで一杯だった。
「洗濯物があったら一緒に洗濯して上げるわよ。ただ、バスルームに干してある下着は見ないでね。」
ヨーコが言う。
「いいよ。それよりお腹が空いた。どっか食べに行こう。」
「いいわよ。何が食べたい?」
「チーズとスパゲティ以外」
「変な人」
ヨーコが答える。結局、ぼく等は、メッシーナの町の市場めざして、ぶらぶら市内見物をすることにして出かけた。


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