彦四郎の中国生活

中国滞在記

超厳格な「ゼロコロナ政策」の中国と「コロナ共存政策」の多くの諸国—日本の対策は‥

2021-08-20 13:55:40 | 滞在記

 東京オリンピックに出場した中国選手団777名と中国からの大会関係者など千数百名、その多くはオリンピック閉会式翌日の8月9日に中国に帰国した。88名のメダル獲得選手なども含め、その再入国者全員が3週間~4週間の厳重な隔離生活を帰国後から過ごしている。今日8月20日で隔離生活10日目あたりとなるのかと思う。

 海外からの渡航者に対する隔離措置は、より厳しくなることはあっても、一貫して絶対に緩めないのが中国だ。(※空港周辺の隔離者用ホテルで2週間、自宅で1週間の合計3週間の隔離生活が多い。しかし省や市によっては2週間の自宅隔離を義務付けるところもある。) オリンピック金メダリストであっても隔離政策に容赦はない。

 私が勤める中国の閩江大学から日本の広島大学への留学生(3回生)は10日ほど前に中国に帰国した。また神戸の女子大学に交換留学をしていた学生たち3名(3回生)は、今日20日に成田空港より中国に帰国する。3週間の隔離措置があるため実家に戻ることはできず、隔離終了後はすぐに9月上旬から始まる予定の大学の授業に参加する。日本からの帰国後、彼らが故郷に戻れるのは来年の1月になるようだ。

 春節開始を今年の2月10日頃に控えていた中国では、今年の1月上旬頃から中国北部の山西省や北京市、中国東北部の遼寧省や吉林省などで新型コロナウイルスの従来株の感染拡大が起きた。そして、1月中旬ころにはさらに感染拡大が広がり、ようやく春節前の2月上旬に新規感染者を激減させた。このため、春節期間は他の省への渡航や帰省は特別な事情がない限り強力に規制された。そして約1カ月間あまりで感染を収束させていった。

 それから半年後の7月10日、再び感染拡大が起きていた。今回はロシアのモスクワの空港から中国江蘇省南京の空港への入国者のうち7人ががデルタ株に感染していたことが空港のPCR検査で判明した。乗客はすべて濃厚接触者として隔離施設に送り込まれたが、7月20日の定期的な空港従業員全員のPCR検査を行ったところ、機内清掃員17人が陽性であることがわかった。ロシアからの飛行機の清掃にもあたっていた清掃員たちだった。

 彼等は、このモスクワからの飛行機の清掃にあたっても、防護服に身を包み機内清掃にあたっていたのだが、防護服を脱ぐ時に感染防止の注意が行き届かなかったらしい。これらの清掃員は、国際便だけでなく国内便の清掃にもあたっており、このため、南京市内だけでなく、中国各地にデルタ株の感染が広がっていった。8月6日には中国全土での一日の新規感染者数は100人あまりにのぼる。中国の武漢でも1年ぶりにコロナ感染者が報告された。

 一人でも新規感染者が確認された市では都市封鎖が行われ、住民全員のPCR検査が実施された。また、7月10日以降の感染や濃厚接触者のルート(クラスタールート)は徹底的に調査され、中国国民の携帯アプリにそのルートが知らされているというその徹底ぶりには改めて驚かされる。7月10日以降からの全国の感染者総数は2500人あまりに上ったが、8月10日以降は新規感染者数は減少し、8月15日になり、コロナ感染新規拡大は江蘇省や河南省、湖北省の3省の地域での24人までに抑え込んでいるので、8月中には新規感染者ゼロを達成できる見通しがたってきている。この中国での感染拡大におけるデルタ株の特徴としての空気感染(エアゾール感染)の怖さが改めて確認された。

 世界の多くの国々が「コロナとの共存」政策をとる中で、中国は「コロナゼロ政策」を徹底してとってきている。「世界で最も厳格」と誇る「ゼロコロナ政策」だ。ある中国在住の日本人は、「中国国内を移動した際に、万一、移動先で感染者が1人でも確認されれば、何週間もその地で足止めされる。1000万人を超える市民がPCR検査を義務づけられる。中国に滞在する私たちにとって日本はどんどん遠くなっている。一旦、中国を離れれば、再び中国に戻るためには3週間の隔離が待っている」と語る。

 そのような世界一厳しい「ゼロコロナ対策」に対し、中国の著名な感染症専門家で上海復旦大学の張文宏教授は、「ウイルスとの共存政策」も考えるべきとの提唱を最近行った。反響は大きく、ネット上には賛否両論が相次いだ。しかし、中国当局は「ゼロコロナ政策」への懐疑が広がることには強い警戒感を示している。このため、張教授を学会から締め出す動きともなっているようだ。また、中国江西省の教師が8月10日、この張教授のウイルス共存論に同調するSNS投稿を行った。すると地元警察は「不適切な言論で社会に悪影響を与えた」として、教師を拘束し、15日間の拘留を決定したので、今も拘束中かと思われる。

 全人口14億1200万人の中国では、この8月中旬までに18億3500万回のコロナワクチン接種を行っている。それにともない7億7000万人が2回の接種を完了していると報告された。これは中国人口の55%にあたるが、今年中には2回接種者を全人口の70%を目指している。

 この7月16日、WHOのデドロス事務局長は、加盟国との会合で、「(今年1月に行われたWHOの中国での調査だけでは、武漢ウイルス研究所流出説など)いずれの仮説をも否定するには十分な科学的根拠がないと判断される。コロナの起源を調べるために初期の感染者データ・感染の疑いのある人の血清調査などが第二回目として必要」として、武漢ウイルス研究所も含む追加調査を提案した。

 この提案に対し、中国側は強く反発し、調査協力に応じない姿勢を示している。あと半年後に迫った2022北京冬季オリンピックへのボイコット問題を払しょくするためにも、このWHO提案に応じた方が賢明なのだか、なぜか中国政府は応じない‥。

 米国のバイデン大統領はこの5月に「90日以内にコロナ起源の新たな証拠や資料を調査し発表せよ」と関係機関に命じた。その90日期限は来週に迫っている。

 日本における第五波感染の爆発的傾向が続いている。昨日8月19日には一日に2万5000人の新規感染者数を超えた。このまま推移すれば、8月下旬には3万人超となるかと思われる。この5月の京都大学医学部の西浦教授の「第五次デルタ株による感染者のピークは9月下旬から10月上旬頃」との予測が現実味をもってきている。

 IT大手のYahoo Japanによる最近のインターネット投票調査では、約80万人の検索読者のうち80%の人が「ロックダウン(都市封鎖) をすべき」に投票していたのにはちょっと驚いた。それほど日本国民の間に、このデルタ株による第五波の爆発的感染拡大に危機感をもってきている証の一つなのだろう。このような調査結果も念頭にいれてか、吉村大阪府知事は「ロックダウンに準じた措置も必要な事態」と一昨日に発言した。PCR検査がほとんど行われていない日本の感染対策下、「無症状感染者による感染誘爆・隠れ陽性者 把握困難」(夕刊フジ)などの状況となっている。早いところでは今週末から小中高校は夏休みが終わり新学期も始まる。このデルタ株は、小学生などの子供への感染事例も多く報告されるようになった。

 先日、NHKスペシャルでこのデルタ株の特徴についての説明がされていた。それによると、①感染力がとても強く、従来株の2倍の感染力をもつ。それは、人体の細胞にいち早く多く感染させる力をもつため、ウイルスの量も多くなり、ヒトへの感染力が倍化している。また、感染者は重症化しやすい。②コロナワクチンを2回接種して、コロナ免疫システムをもつ人でも感染をする。それはこの変異種ウイルスは免疫防御システムから発見されにくい特徴をもつからだ。

 国民のワクチン2回接種率が世界で最もすすんでいる(80%)イスラエルでは、最近ではコロナワクチンの有効率は64%との報告がされている。イギリスでも国民の75%の接種が進んでいるが、最近の7月のピーク時には1日5万人もの感染者数が発表されているが、その死者数はこの1月のころの同程度の感染種数の時と比べて、ワクチン接種が進んだため重症者数が大きく減少し、死者数も10分の1程度となっている。日本ではワクチン接種率はこの8月中旬時点で、一回接種者は国民の50.34%、二回接種者は40%程度となった。

 「ブレークスルー(ワクチン2回接種者も感染する可能性)も多くなる状況下、3回目の接種も不可避」(夕刊フジ)も必要となってきているようだ。先日、河野ワクチン担当相は「3回接種のための量は確保している」と報告していた。また、あらたに南米からの「ラムダ株」の日本上陸も伝えられた。

 今のところ日本では、「ワクチンを2回接種すれば、デルタ株への感染可能性比率は半分以下となり、もし感染しても重症化が防止できる」ということは確かデータのようだ。隣国の韓国での1回目のワクチン接種累計は2300万人と、総人口の43.6%。日本と似たような接種率状況だ。(英国アストラゼネカ製ワクチン1066万人、米国ファイザー製ワクチン962万人、米国モデルナ製ワクチン94万人)  2回の接種を受けた人の割合は全人口の20%と報告されている。

 日本の新型コロナ対策は典型的な「コロナとの共存政策」だ。陽性者を探り出すためのPCR検査はほとんど進めず、都市のロックダウン政策はしてきていないし、法的にも現在のところロックダウンができない。しかし、やはりコロナ対策の基本は、「①PCR検査の広範な実施、②陽性者(無症状者含む)の隔離が基本中の基本だ。さらに、③ワクチン接種、この①②③を実施しない限りいつまでもコロナ禍は安心できるものとはならないだろう。

 そして④感染者(陽性) を軽度・中度・重度にかかわらず病院で治療する医療体制の整備が重要だ。コロナ分科会の尾身会長などは、「人出の5割削減」や「オリンピック・パラリンピック開催への疑問」などは提言するが、この医療体制に対する提言はこの1年間、何も行ってきていない。自身が3つの大病院を経営するためだろうかと思われる。自宅療養者が何万人にも達していて命の危機が叫ばれている中、一般病院でのコロナ病床の増設や野戦病院的な施設の設立などが緊急に求められているにも関わらずである。①②に関しても尾身氏は何も言ってこなかった。

 安倍前首相の政権下からコロナ対策はこのような状況で、菅政権下でも組織的な戦略を確立できていないままずるずると1年半が経過してきている。ひたすら今は③のワクチン接種率の進みぐあいに頼るだけのものとなっているのは、根本的な戦略の転換が必要だ。

 ワクチン接種のかなりすすんでいる米国でも、この8月に入りデルタ株による感染爆発が再び起きていて、1日の新規感染者数が20万人超となっているようだ。特にワクチン接種がすすんでいない州での感染が多いとの報告。

 思うに、日本はコロナ対策で最も緩い国の一つになっているようだ。やはり、コロナ対策の基本①~④を実行する政治力が必要となっている。ロックダウン待望論も出てきているが、これだけ全国に感染者が増大するなかで、はたして東京や大阪などの都市のロックダウンをとっても効果がでるのかどうかも疑問だが。

 緊急事態宣言が13都府県、蔓延防止措置が16道県の合計29都道府県に適用されている現在。このお盆に故郷の福井県南越前町にお盆帰省を妻と共にした。娘たち夫妻や孫たちも南越前町に一泊予定で来る予定だったが、コロナの状況や連日の大雨の状況を考えて来ることを取りやめとした。ちょっとさみしいが静かなお盆を、母と妻と私の3人で過ごした。

 妻の実家のある京都府京北町にこの8月16日と19日に行きお墓参りなどをした。道沿いに「居酒屋の灯を消すな—コロナ自粛には補償を―」と書かれた日本共産党の看板が立てられていた。今回の第五次感染拡大に伴う飲食店の休業・時短・禁酒要請に、かなりの飲食店やパブが閉店をやむなくされることが予想される。飲食店は大変だ。

■あと4日後の8月24日、東京パラリンピックが開催される。思えば、7月24日の東京オリンピック開会式に、安倍前首相は欠席をした。今回の東京五輪・パラリンピックを開催した中心的な人物の恥も外聞もない突然の欠席には、唖然とさせられた。こんな人でもあったのだ‥。

 

 

 

 

 

 

 


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