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彦四郎の中国生活

中国滞在記

世界に誇る詩歌「漢詩・和歌(短歌)の世界」を特別講座➌—学生の感想➂—なぜ、中国人が日本語を好きになるのか

2025-08-17 06:48:42 | 滞在記

 ■特別講座の4回目は、「日本の俳句」。江戸時代の松尾芭蕉や小林一茶などの俳句を紹介し、大正期に生まれた自由律俳句(種田山頭火や尾崎方哉)も紹介。学生が俳句を作り発表。五回目は、日本の現代歌謡曲である「四季の歌」と「未来へ」(キロロ)の歌唱練習。そして、学生たちによる(1人又は2~3人グループ)日本の歌謡曲の発表(歌詞はPPTに映す)。私は中国語の歌「天路」を中国語で歌った。

🔴この特別講座では、先生が私たちを導いてくださり、中国の漢詩だけでなく、日本の短歌や俳句、そして日本の歌謡曲にも触れることができました。学ぶだけでなく、私たち自身も俳句や短歌を創作し、みんなの作品はどれも面白く、日本の歌謡曲を歌う課程では、一人ひとりが自分の歌声と個性を発揮し、みんなが素晴らしいパフォーマンスを見せました。寺坂先生の「天路」の歌声は非常に美しかったです。この特別講座はとても面白いと思います。私は好きです。(3回生 黄雅靖)

🔴この度は「中国の漢詩、日本の短歌(和歌)と俳句の世界、そして、日本の歌謡曲」という素晴らしいテーマの特別講座に参加させていただき、誠にありがとうございました。講座を通して、中国と日本の詩の深い歴史や文化的つながりについて学ぶことができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。特に、漢詩や和歌、俳句の表現の違いや魅力を丁寧にご説明いただき、とても感動しました。また、日本の歌謡曲を詩の流れの中で紹介していただいたことで、現代文化とのつながりを感じることができました。貴重なお話を聞かせていただき、心より感謝申し上げます。今後の学びらも大いに役立てていきたいと思いました。本当にありがとうございました。(3回生 李楊)

 ■和歌に関してはアニメ映画名探偵コナンシリーズでの「から紅の恋歌」や映画「ちはやぶる」などがある。そのことなども学生に紹介した。今年は、その「ちはやぶる」の続編的なテレビドラマがこの7月上旬より放送されている。

🔴特別講座の勉強を通して、日本の俳句とか、短歌とか、歌曲などについて習った。そして、日本人の視点から中国の漢詩を見て日本語で詠むのと、中国人の自分から見て詠むのとでは、かなりの違うことが、珍しいだ。講座の中、私たちは俳句を書いてみた。中国の詩より、俳句はもっと自由でシンプルな文体だと思った。現代詩みたいな特徴があった。自分の気持ちをうまく表現することができた。最後の講座で、みんなは日本の歌曲を歌った。とても楽しいだ!寺坂先生の講座は、楽しみながら勉強して、おもしろい授業だ。(3回生 鄭鈺才)

—なぜ、中国人が日本語を好きになるのか、また、なぜ世界で日本語学習者が最も多い国が中国なのか—

 現在、中国国内には105万人以上の日本語学習者がいる。また、日本国内に留学して日本語を学習している学生たちの数も中国人が最も多い。近年、中国人の日本語学習者が増加しているのは、日本のアニメや歌曲や映画、ドラマ、日本観光などの文化への関心の高まりや、中国国内の経済不況の長期化による就職難を背景とした日本への留学や就職希望の増加による日本語需要によるものと考えられる。また、中国の大学入学統一試験の「高考(ガオカオ)」で、英語の試験のかわりに日本語の試験を受験することが可能で、近年は日本語を受験する受験生が増加していることも一因だと考えられる。

 日本語の特徴とは何なのか?これについて書かれた名著が2冊ある。➀『日本語(上・下)』岩波新書、➁『日本語教室』ちくま学芸文庫。いずれも著者は金田一晴彦。中国語は「四声」があって発音がとても難しい言語だ。例えば「いくらですか?(値段)」は英語では「How mach?」で、発音は簡単ですぐに通じるが、中国語では「多少銭?(ドウシャオチェン?)」。私はこの発音が通じるのに半年余りを要して苦労した。

 日本語は文法的にちょっと難しい言語だ。文法の難しさベスト3を挙げると、①動詞の変化、➁助詞の使い方、➂敬語の使い方となるかと思う。そして、欧米人にとっては漢字の難しさがある。中国人(中国本土・台湾・香港)が特別に親近感をもっているのは、言うまでもなく日本語の中に漢字があるからだ。そして親近感とともに日本語という言語に好奇心をもっている。(※中国人にとって日本語の漢字学習で最も難しいのは、その読み方だ。中国語の漢字の読み方は一つしかないが、日本語の漢字は音読みと訓読みがあるので、読み方が複数ある。これは中国人にとってもけっこう難しい。)

—日本語はカッコいいという認識が中国人にはあるようだ—

 日本語を好きな理由はいろいろあるが、多くの中国人が「日本語はカッコイイ言語」だと意識しているようだ。特に中国の若者にとって、日本語のかっこよさは、アニメから始まり、日本のドラマ・歌などまで広がっている。それらは日本文化輸出の域にあるものばかりだ。日本語のアニメや歌を通して独学し、日本の名門大学(上智大学や筑波大学など)に合格した学生も私は二人いて二人ともよく知っている。一人は現在は筑波大学大学院の博士課程(教育学)に学び、将来は中国の大学教員になることを目指してもいる。

 「なぜ、日本語を好きになるのか?」という質問をすると、「日本の漫画やドラマを見るためには、日本の文化や歴史、人物への理解が必要だ。日本語を学ぶことで理解が深まる」「友達と一緒にカラオケに行き、日本語の歌を歌うと、注目される」「流暢な日本語で好きな日本のアイドルや歌手、俳優を応援したいから」「日本の礼儀作法が非常に伝統的な文化的感覚をもつ。そこには日本語そのものとつながりがある。」「日本という国に留学したい」「この就職難、チャンスがあれば日本で働いてみたい」などの答えもかえってくる。

 今回7月の参院選では、皮相(ひそう)な「日本人ファースト」、「排外主義」、「在日外国人の問題」などがクローズアップされていたが、中国の若い人たちが、これだけ日本語を学んでいることを、日本人にも理解してほしい。そして、より多面的な中国と中国人を認識してもらいたいと思っている。今回、閩江大学での「特別講座」に対する学生たちの感想を読み、改めてそうも思う。

 現在(2024年調査)では、➊海外での日本語学習者は約380万人。内訳ベスト10の国別では、①中国約106万人、➁インドネシア約71万人、➂韓国約47万人、➃オーストラリア約42万人、➄タイ約18万人、⑥ベトナム約17万人、⑦米国約16万人、➇台約14万人、➈フィリピン約5万人、⑩マレーシア約4万人。

 ❷日本国内での日本語学習者(日本語学校など)は約27万人。内訳ベスト9の国別では、➀中国約7万人(約30%)、➁ネパール約2.5万人(約14%)、➂ベトナム約3.2万人(約12%)、④フィリピン約8千人、➄韓国約7千人、⑥⑦ミャンマーと米国 それぞれ約5千人、➇台湾約4.6千人、➈ブラジル4.4千人などとなっている。

 


世界に誇る詩歌「漢詩・和歌(短歌)の世界」を特別講座で行った➋—日本人の漢詩の学び方・暗唱の仕方—学生の感想➁

2025-08-16 21:13:20 | 滞在記

 ■1回目の講座は、飛鳥・奈良時代から江戸時代、そして明治・大正・昭和初期の時代まで、日本人の教養の根底にあるとされる中国の漢詩を、日本人はどのように学び暗唱、朗読したのかという内容である。『NHK 漢詩紀行』(  石川 忠久   著)や『中国 詩心を旅する』( 細川護熙  著)は、私の中国のアパートにおいてある愛読書の一つ。

🔴この度は大変興味深い講座をありがとうございました。中国の漢詩と日本の短歌や俳句、さらには現代の歌謡曲まで、詩の世界を横断する内容に深く感銘を受けました。この講座を通じて、詩が時代や国境を越えて人々の心をつなぐ普遍的な芸術であることを改めて認識しました。今後は、日常で触れる詩や歌詞にもっと注意深く耳を傾けたいと思います。(3回生 偉安琪)

 ■そして、二回目の講座は、この漢詩と日本の短歌(和歌)との関係。和歌は5.7.5.7.7の31文字の詩(うた)である。この和歌についての説明をし、学生たちに和歌を作ってもらい、一人一人の和歌を朗読。

🔴—短歌と日本語の詩に感じる魅力—日本語の詩歌や短歌に触れるたびに、その表現力の豊かさに感動する。特に短歌の五・七・五・七・七といったリズムは、限られた文字数の中で情感を凝縮する芸術だと感じる。現代詩では言葉の響きそのものが音楽のように心に響くことがある。日本語の持つ柔らかなイメージ力に驚く。昔の歌人たちが自然と対話しながら言葉を磨いたように、私たちも日常の中の小さな感動を言葉にできるはずだ。短歌を作る練習をして、感じたことを素直に表現する難しさと面白さを学ぶ。日本語の持つ奥深さ、これからも探求していきたいと思う。(3回生 陳秀婷)

 

 ■学生たちは小学生の頃から著名な漢詩は学習してきている。漢詩は日本が奈良時代だった中国の唐の時代に、その定型詩が完成した。それ以前のもの(定型ではない)を古詩と言い、唐時代以降を近代詩とも言う。近代詩の定型は主に四つ。➀五言絶句➁五言律詩、➂七言絶句④七言律詩。この定型の漢詩は、5句と7句の文字数(音)から成っている。これは日本の和歌とも共通するので、日本の和歌は漢詩の影響があったのかとも推定されもする。

🔴先生の特別講座は本当に面白かったです。教科書に限らず、私はとても好きです。講座の中で、クラスメートたちは一緒に歌を歌い、笑い声が響き渡っていました。これは私の大学生活において貴重な思い出であり、青春の香りです。(3回生 黄躍真)

 ■日本人はこの漢詩をどのように学習し暗唱・朗読したのだろうか?と学生たちに問いかけながら説明をしていく。例えば中国漢詩の世界の「詩聖」とも呼ばれる杜甫(とほ)の「春望」(国破れて山河あり‥)という漢詩を、学生たちに中国語で詠ませて朗読させる。そして、私のほうで日本人のこの漢詩の日本語での読み方を紹介。日本人は、中国の漢詩に、「カタカナ」「一」「二」「✓」などを補足しながら日本語として学習し、暗唱、朗読することで学んでいった。

🔴今回の特別講座では、中国の漢詩から日本の短歌・俳句、そして歌謡曲に至るまで、東アジアの詩歌文化の多様性を学びました。四季折々の情景や人間の心情を詠む表現の違いを通じて、言葉が持つ奥深さを実感しました。漢詩の格式美と俳句の簡潔さ、歌謡曲のメロディとの融合が印象的で、詩の世界を巡る学びは心に残りました。最後の歌のプロジェクトは、みんながとても上手だと思います。   (3回生 閆興科)

 ■今回の講座では、杜甫、李白、白居易(白楽天)、孟浩然、朱熹(朱子)などの漢詩、12余りを挙げて、それぞれの漢詩の中国語読みと日本語読みを学習した。白居易の「長恨歌」(全120篇)などは、平安時代の貴族階級の必読書(ベストセラー)であり、紫式部も愛読(愛唱)、彼女の書いた『源氏物語』にも大きな影響を与えている。戦国武将の一人・上杉謙信が作った漢詩「九月十五夜」なども紹介した。三回目の講座は、和歌(短歌)集である「百人一首」について説明し、一句一句を全て簡単に紹介し説明。その後、簡易な(23枚の百人一首の札を使っての)百人一首ゲームを行った。

🔴今回の日本語特別講座では、日本語の言葉の美しさをたくさん学んだ。例えば、俳句や短歌などは本当に面白かった。俳句の短い文章の中に深い意味が込められていたり、短歌の美しいリズムが魅力的だった。講座の最後には、日本語の歌を披露する企画があった。私たちは「♪ヤキモチ」を上手に歌うために一生懸命練習した。友達たちと一緒に練習する中で、楽しい時間を過ごすことができたし、歌の技術も上達した。(3回生 王婧)

■二回目の講座では、日本の近現代の和歌の歌人として、石川啄木、俵万智、そして現代の若者たちの短歌なども紹介した。

🔴—中国、日本の詩の世界を巡る—まず、この5回の特別講座を通して、私は日本の詩や短歌などの知識が身についた。真面目に講座を聞いてしなかったけど、内容は大体面白いと思うんだ。この中で最も印象に残るのが、最終回のカラオケ大会だった。とてもとてもおもしろかった。はじめてみんなの歌声を聞いた。ちょっと驚いた。みなさんとの距離が少し近づいたと感じた。それは何よりだ。もし機会があれば、みなさんと寺坂先生と一緒にカラオケに行きたい。以上だ。(3回生 陳炎宝)

※次回に続く。

 

 

 


世界に誇る詩歌「漢詩・和歌(短歌)の世界」を特別講座で行った➊—全5回の講座を2回生、3回生のそれぞれに—学生の感想➀

2025-08-16 18:03:12 | 滞在記

 今年の3月上旬から6月上旬までの3カ月間にわたり、閩江大学外国語学部日本語学科の2回生と3回生たちに、特別講座「—中国、日本の詩の世界を巡る—」を、それぞれの学年に全5回ずつの講座を行った。特別講座は、私が通常に担当している授業(講義)とはまた別の講座のことである。今年の1月上旬に大学側から「特別講座」を何か考えて準備と実施をお願いしますと告げられ、1月上旬から2月中旬の大学の冬休み期間中に、「特別講座を何にしようか?‥‥」といろいろと考えた末に決めたテーマだった。

 閩江大学の教学楼(4~6階建てが6棟ある)の人文学部中国文学学科の教室前廊下には、漢文の詩(漢詩)や書なども掲示されている。その人文学部教室棟に近い、日本語学科の特別教室「日本文化室」(6階)から大学構内の建物群の一角を眺める。

 日本文化室は畳が敷かれ長机が置かれ、座布団などもある。室内には視聴覚の設備(大型スクリーンや投影機など)も整えられ、抹茶(茶道)など淹れられる台所もある。そして、この日本文化室で今回のような特別講座なども行われる。

 今回の特別講座のテーマは少し長いが次のようなテーマとした。「中国の漢詩・日本の短歌(和歌)や俳句の世界、そして日本の歌謡曲—中国・日本の詩の世界を巡る—」。一回目のテーマは「中国漢詩の世界①—※中国漢詩と日本人」、二回目のテーマは「日本の和歌の世界と中国漢詩の世界➁—※短歌(和歌)とは 短歌を作る」、三回目のテーマは「日本の和歌の世界—百人一首➂—※簡易な百人一首をする」、四回目のテーマは「日本の俳句の世界④—自由律俳句—※俳句を作る」、そして五回目のテーマは「日本と中国の現代歌謡曲の世界➄—➊日本の「四季の歌」「未来へ」の歌唱練習、➋日本の歌謡曲を学生が歌う(1人又は2~4人グループ)/歌詞はPPTで映しながら」。全5回の特別講座を、3月上旬から4月中旬までは3回生たちに。4月下旬から6月上旬までは2回生たちにそれぞれ行った。

 世界に誇る詩歌「漢詩と和歌」の世界である。(漢字とひらがなの世界でもある。)

 最終の五回目にこの特別講座の感想を学生たちに書いてもらった。以下、学生たちの講座感想文を3回にわたって紹介します。

🔴短歌の創作を体験。日本語の美しさを感じました。私のお気に入りの短歌は、『サラダ記念日』(俵万智)の「また電話 しろよと言って 受話器置く 君にいますぐ 電話をしたい」。この短歌のせいで、この本を読み始めましたが、短歌はとても面白いです。将来的には短歌に関するものをもっと学ぶことができることを願っています。(2回生 高晨晨)

🔴先日の日本語短歌体験講座、本当にありがとうございました。初めての短歌作りや日本のゲーム(百人一首)で、皆さんと一緒に楽しく過ごせました。講座では、短歌のルールを学びながら、四季や身近な出来事を題材に創作しました。みんなの短歌のアイデアが素敵で、とても刺激的でした。また、グループで日本の歌を歌う時間も忘れられない思い出です。一緒に練習し、協力して素敵なパフォーマンスを披露できたことを嬉しく思います。このような素敵な機会を与えてくださり、本当にありがとうございました。また、皆さんと一緒に日本語や日本文化を学べる日が楽しみです。(2回生 江婉烨)

🔴今回の日本の文化体験講座は本当に素晴らしいです。私にとって貴重な経験でした。私たちが日本語の短歌を書くのは難しいと思っていましたが、先生が説明してくれて、私もいくつか書くことができて、とてもありがとう。日本語の歌を歌うコーナーもあり、メロディに合わせてハミングすると一気にその雰囲気にととけこんでしまいます。日本文化に興味を持たせてくれました。本当にありがとうございます。いつも楽しくてください。(2回生 鄭婧静)

🔴初めて日本語の短歌教室に足を踏み入れた時、私はそれを言語学習の延長と見なしていたが、なんと日本の美学の核に通じる窓になっていた。この講座は、文化のルーツ探しの旅のようだ。短歌に頻繁に登場する自然のイメージは、四季の移り変わりに対する日本人の畏敬と共通の気持ちを反映している。歌人たちは物を借りて叙情的な伝統を持っています。ほんの数回の講座の学習で、私は日本語の短歌に対して特に深い理解と興味を持ちました。(2回生 張風)

🔴初めて短歌を学びましたが、先生が分かりやすく説明してくれて、とても面白かったです。短歌は、5.7.5.7.7の五句で構成され、少ない言葉で深い意味を込めることができます。今回の講座で短歌の魅力に出会えて、とても嬉しいです。最後の講座で、友達と一緒に「ちびまる子ちゃん」の主題歌を歌いました。友達と笑いながら歌う時間は、とても幸せな気分でした。(2回生 鄭敏敏)

🔴この度の日本文化体験講座では、大変勉強になりましたとともに、日本語文化の魅力も存分に感じることができました。日本語俳句には、日本語文化の深い風情を感じさせていただきました。私自身、声に出して読むのが好きなのですが、俳句朗読の情感の込め方や表現方法がどうしてもつかめずにいました。しかしながら、先生のお手本を通して、日本語朗読の要諦を理解することができました。先生がお読みになる日本語詩は、まるで心地よい時間でした。もし、今後また機会がございましたら、ぜひとも先生にご指導を賜りたく存じます。先生の細やかなご指導と、温かいご支援に心より感謝申し上げます。先生のご健康と、ますますのご多幸をお祈りいたします。(2回生 曽麗萍)

※次号に続く

                                                                                                                             


高校生や大学生への時事問題授業(社会科)の重要性について思う—立命館宇治高校青杉教諭の取り組みや私の高校生への特別授業などのこと—秀逸ドラマ「東京サラダボウル」を振り返る

2025-08-11 20:50:07 | 滞在記

 この7月19日(土)の午後、京都市左京区岩倉にある同志社大学付属小・中・高等学校で「京都歴史教育者協議会」の7月例会が開催されたので、自宅近くの駅から京阪電鉄に乗り終点の出町柳駅で下車。この駅で叡山電鉄(京福電鉄)の鞍馬線に乗り換えて三宅八幡駅に向かった。この日も、35度以上の猛暑日の一日。2輌編成の叡山電鉄の電車内に、浴衣(ゆかた)の男女の姿。男性は白の麻地の浴衣の草履、そして白い夏向きの麦わらのくぼみ帽子。とても粋でかっこ良い。私も来年は、このような衣服と帽子を着てみたくもなった。

 同志社大学の付属小中高は、叡山電鉄の岩倉駅か、一つ手前の三宅八幡駅からが近い。この日は三宅八幡駅に初めて下車した。駅から同志社大学付属の学校の方面に少し歩くと、比叡山が正面に見えてきた。あまりの暑さに、「華林唐(かりんとう)」と書かれた喫茶店に初めて入りクーラーにあたることにした。なんとこの喫茶店、「全席喫煙可能」の昭和レトロな店だった。タバコを一服しながら涼をとった。この季節、庭先のブルーベリーの実が色づいていて食べごろを迎えてもいた。

 三宅八幡駅から徒歩15分ほどのところに同志社大学付属小中高の構内があった。とても美しい構内の樹木や建物。向こうには比叡山も見える。午後2時から始まった例会。私はこの京都歴史教育者協議会(略称:京都歴教協)関係の例会などに参加するのは初めてだった。京都歴教協会員の片桐さん(山城社会科研究会例会を毎月、20年間以上にわたって主催していた。)からEメールで例会の案内が送信されてきたので、例会内容を見て、とても興味深いレーポート報告もあったので参加した。

 この7月例会での4人のレポート報告者は、8月2・3日に明治大学和泉キャンパスを会場に開催される「歴史教育者協議会2025全国大会」において、京都からの代表レポートとして報告されるようだった。このうち3人の実践レポートは、そんなにレベルの高いものではなかった。特に同志社高校の女性教師の日清・日露戦争に関する実践レポート「日清・日露戦争はなぜ起こったか」は、「このような詳細な歴史好事家ならいざしらず、高校生に全4回をも使って授業するような内容か‥」と、疑問に思えるレベルの実践レポートだった。他には、「中世・百姓たちの思いを読み解き、授業化する試み—若狭国太良荘の連署起請文を例に考える」(立命館大学講師)や、「6年歴史学習を節に、地域で実感する小中一貫の学び」などもあった。

 この日、一番聞きたかったレポート報告は立命館宇治高校の青杉真理教諭の実践レポートだった。青杉真理さんは、この日は会場には来なくて、オンラインレポート報告だった。かって京都府で教員をしていた時代、青杉真理(あおすぎ・まり)という同僚の女性教員がいたので、今回の青杉真理さんも当然に女性だと思っていたら、オンライン画面に映し出された報告者は50代かと思われる白い眼鏡の男性。青杉真理(あおすぎ・しんり)という名前だった。

 レポート名は「憲法と現代の社会—公共SNSと選挙、選挙前にしておく授業とは」。高校生の時事問題学習に関する実践授業報告。18歳からが成人とされ選挙権も18歳からとなった現代の日本。この社会科における時事問題の高校での授業はより重要にもなったのだが‥。参政党の躍進予測が報道される中、特に選挙権のある10代・20代・30代の多くがSNSやyoutubeから情報のほとんどをとっている現代、日本の政治(時事問題)教育はいかにあるべきか。何が今、高校や大学の授業で時事問題の授業には必要なのか。

 この課題に対して青杉さんは、とても真摯に、高校生たちにも分かりやすく、ポイントをとらえて授業をしていることが報告で分かった。(特にSNSの情報の受け取り方に関して)  全国大会でも、注目されるレポートの一つとなるだろうと思った。私は青杉さんにこの日、この政治・時事問題での授業(教育)に関して、オンライン上で質問したり、意見の交換などを行った。

 参院選挙投票日2日前の7月18日付朝日新聞には、「いちからわかる—SNSのリスクって何?—注目集めるため、過激な内容や偽情報も増えやすい」と題された見出し記事が掲載されていた。

 青杉さんとも意見交換したことなのだが、高校3年生や大学生などに、「この現代社会の中で、政治的・経済的な、そして社会的な解決されるべき政治問題・時事問題の課題とは何なのか?」「選挙において、どのような問題を重視して投票するべきなのか?」を理解してもらうことの重要さについて、私が高校三年生に対して行った特別授業について少し紹介しておきたい。今回の参院選では、SNSやyoutubeなどで在日外国人の問題についての「日本人ファースト」がとても多く参政党サイトからも流されていた。そして、テレビや新聞でもクローズアップされることともなり、参政党への大幅得票増加にもつながったともされる。

 はたして、本当に国民が自覚すべき現代社会の政治的課題(問題)とは何なのか‥。参政党はそれを「外国人問題」などにもすり替えて国民を煽り、ポピュリズム的に支持者を増大させたとも指摘されているのだが‥。

 2020年から22年まで毎年、京都市内の京都御所の東に隣接している京都府立鴨沂(おうぎ)高等学校で、3年生を対象に特別授業を行った。1872年(明治5年)開校の歴史ある高等学校で、「鴨沂」とは鴨川に近いという意味だ。21年12月上旬に行った特別授業は、学校側の要請もあり、「時事問題」に関するものとなった。そこでテーマは、「現代社会の課題(問題)—世界の今、日本の今—現代社会の最も大きな4つの課題とは何だろうか?あなたはどう思う?」であった。そしてもう一つは、「京都という町について」。(午後の5時間目と6時間目の合計90分授業)

 授業の冒頭、まず、上記の時事問題テーマでの4つの課題(問題)について、「あなたたちはどう思う?」と一人一人に問いかけた。生徒一人一人が持っている学習用パソコン(タブレット)に生徒が書き込む。そうすると数分後にスクリーン(白版)に生徒たちの意見が現れ始めた。多くの生徒が答えた課題(問題)はより大きな文字で表示される。生徒たちで最も多くだされた課題は、「地球温暖化(環境問題)」だった。(貧富の経済格差問題を書いた生徒はほんの少数だった。)

 私は生徒たちに語りかけた。「この地球温暖化(環境問題)も、4つのうちの一つだと私も思うが、実は最も大きな課題(問題)は第一に貧富の格差増大の問題です。」と‥。実例として、日本と中国、そして世界における貧富の格差増大の実情に関して詳しく具体的に、より身近に説明した。(そして、「戦争などもこの経済格差・貧富の差のの増大などが根本要因として起きることが多い」とも解説‥。)

 そして、第二に、日本ではそれほど問題になっていないが、世界的には「言論の自由、報道の自由」の問題ですとして、詳しく具体的に説明。

 そして、第三に「地球温暖化などの環境問題」、第四に「高齢化が進む、日本や中国など、人々の生きがい、地域コミュニケーション、家族のあり方」などの問題がありますとして、それぞれを詳しく説明をした。この説明の後、生徒からも報告を受けた。

 このように、「教員の方から、高校生や大学生たちに、現代社会における本当に大事な解決すべき問題を提示し理解してもらうことは、とても重要だ」ということについても、前記の立命館宇治高校の青杉さんとも意見交換をした。人々の不安や憎悪を煽って支持を広げるポピュリズム政党に惑わされることなく、ちゃんとした時事問題教育を高校・大学で行うことがとても重要にもなっている今日なのだが、全国各地の高校の社会科教員はどのような実践が、はたしてどれだけできているのだろうか‥。私は、中国の大学での「時事日本語」という授業などでは、この現代社会の問題を中国の学生に対し行ってもいる。中国の学生たちがどのような社会問題意識を持っているのか、機会があればまたこのブログなどで紹介もしたい。

 今年の1月から3月にかけてだったと思うが、「東京サラダボウル」というとても秀逸な連続8回くらいのドラマがNHKより放送された。録画して毎回見ていたが、日本に在住する外国人たちが、言葉や習慣の違い、偏見などに苦労しながら懸命に生きているのだが、犯罪などにも巻き込まれるという問題も発生する。この在日外国人を日本人通訳や女性警官が支援していくという一話一話の物語ドラマだった。当然に、在留外国人の人権の問題もドラマでは描かれた。

 原作は、傑作漫画「クロサギ」を描いた黒丸氏による新作「東京サラダボウル—国際捜査事件簿」のドラマ映像化。外国人居住者の人たちの暮らしや人生に光を当て、そこに向き合う刑事と通訳人の目線で、異国で生きる人たちの苦労や悩み、葛藤に出会っていく物語だった。

 そして、この7月23日(水)の午後、京都市のJR京都駅近くにある「世界人権問題研究センター」(京都市立芸術大学構内)で、—『東京サラダボウル』と人権(誰の手も離さない・ドラマから考える)—と題された講演会が開催された。講演者は、このドラマのチーフ・プロデューサー(NHKエンタープライズ・ドラマ部)の家富未央さん。私はこの講演会にぜひ行きたかったのだが、同日の同時刻に他の用事が以前から入ってしまっていたため、残念ながら参加できなかった。

■「東京サラダボウル」とは➡ますます未来は多文化が共存する「サラダボウル」になっていく日本。"一つの言葉"への、"一つの異文化"などへの理解"が、"誰かの人生"への理解に繋がれるかもしれない。そして、少しでも理解できれば、その人(日本人)の心も豊かになれるのだが‥。残念ながらも参政党のような外国人排斥につながりかねない主張も影響力を持ち始めた日本の現状‥。

 8月7日付朝日新聞には、「社会に溶け込み 基幹労働を担う—将来像描き 受け入れ方の議論を」と題された在留外国人に関する記事が掲載されていた。そして、とても残念な、怒りたくなるような問題も発生していた。『週刊新潮』(7月31日号)のコラム記事(元産経新聞編集委員の高山正之氏による連載コラム記事)で、「創氏改名2.0」と題して、日本国籍を取り日本名も習得した韓国にルーツを持つ作家の深沢潮さんを侮辱(深沢さんだけでなく、日本国籍を取得した在留外国人全てを侮辱するような)するコラム文章を1ページにわたり掲載した。参政党の「外国人問題」での主張に触発もされたのか、著しい人権侵害の、人間的にとても薄っぺらい問題のコラム論調だった。こんな人物にコラムを長期にわたり依頼している新潮社も新潮社だ。

 深沢さんの抗議会見に対し、新潮社側は即時に謝罪発表を行ったが、高山氏によるコラム記事掲載の中止には至っていない。即時に高山氏のコラム掲載を今後は中止するのが当たり前なのだが。昨日8月11日付朝日新聞の社説は、この問題をとりあげ、「週刊新潮コラム 再び"名前"を奪うのか」と題されて掲載されていた。ものすごく恥ずべき、人権軽視の高山正之という人物のコラム記事。こんな男にいつまでも毎回のコラム記事を新潮社は書かせるつもりなのだろうか‥。

 


参政党の憲法草案(国民主権ではなく國家主権)、この党に投票した約750万人の人に問いたい、それでもこの党に投票してよかったのですか‥‥

2025-08-11 13:22:33 | 滞在記

 7月20日(日)、参議院議員選挙が行われた。21日と22日付朝日新聞には、「自公大敗 議席大幅減—石破首相 続投の意向を表明/立憲横這い 国民・参政大幅増」「自公 衆参過半数割れ 首相続投を正式表明」「有権者の判断 国の行方—○自公連立から 日本型連合政治への転換点 ○立憲スルーした政権批判票 続く多党化時代 ○給付より減税・手取り増、現役世代に響いた」「参政の聴衆 揺れた好感度—外国人政策に共感 差別にならぬか悩み」「自公大敗 参政台頭 欧米の識者は—タブー消え、ポピュリズムの波きた」などの見出し記事。

 同日付の朝日新聞、「戦後政治の大きな転換点」(21日)、「既成政党不信 国民との回路 再構築を」(22日)と題された社説記事が掲載された。同紙の京都版には、「維新がトップ"京に風穴"  自"2議席目勝者なし 共"力不足"」の見出し記事。

 今回の参政党の躍進について、参院選後の7月下旬に発売された『週刊現代』(8/4日号)には、「参政党"躍進"を支えた"新宗教"と"裏金疑惑—オカルトを利用して拡大した政党はカネの動きも不透明 これではまるで劣化版自民党だ—」と題された特集記事が掲載された。

 朝日新聞の紙面には『週刊文春』と『週刊新潮』の広告。『週刊文春』(7月31日号)には、「大躍進!参政党の化けの皮—神谷宗幣の独裁ファースト—参政党に騙されないで」と題された特集記事。『週刊新潮』(7月31日号)には、「大東亜戦争のように戦い抜いてやる—キワモノ"参政党"に、なぜ日本人は熱狂したのか」と題された特集記事が、それぞれ掲載されていた。

 朝日新聞系の週刊誌『AERA』(7月28日号)には、「オレンジ旋風が来た」と題された特集記事が掲載。7月25日付朝日新聞には、「民意の先に(上)—身近な不安 国民・参政に共感」「民意の先に(下)—既成政党、後ろ向きな話ばかり/短いスパンで利益追求に」と題された特集記事。

 注目すべきは、7月25日付朝日新聞に「既成政党の減退 新しい党急伸—参院選比例投票数 国民が野党1位 参政が2位、立憲は野党3位"このまま奈落に"」と題された記事。この記事に掲載された「①22年参院選、➁24年衆院選、➂25年参院選」での各党の比例得票数の推移一覧表だ。それによると次のようになっている。

 自民党—①1826万➁1458万➂1280万、立憲民主党—①677万➁1156万➂739万、国民民主党①315万➁617万➂762万、公明党—①618万➁596万➂521万、日本維新の会—①784万➁510万➂437万、参政党—①176万➁187万➂742万、日本共産党—①361万➁336万➂286万、れいわ新選組—①231万➁380万➂387万

 この一覧表を見るとこの1年間のスパンでは、自民党の得票数の減少(マイナス約180万)、立憲の得票数の減少(マイナス約420万)、そして参政党の得票数の増加(プラス約555万)となっている。つまり、自民や立憲の減少分が参政や国民に流れているともとれる。また、公明・維新・共産ともに60万~90万の減少。自民・立憲・公明・維新・共産の五つの既成政党に対する国民の期待値の減少。(特に、立憲への期待の減少値が大きい。)

 7月25日付朝日新聞には「参政党躍進の背景」と題した見出し記事。記事では○「漠然とした不安感を肯定」○「つまみ食い的主張が増殖」○「葛藤不在 心地よい推し活」と題された3人の論評が掲載されていた。

 そして、7月27日付朝日新聞には、「参院選 政治の岐路—多様な民意くむ理性と胆力を/①自浄作用働かぬ与党➁ポピュリズムの波➂地殻変動に光明も」と題された社説記事が掲載された。また、同日の同紙には、「日本人ファーストに共感 深層にあるのは—訪日急増 物価高‥‥生んだ外国人嫌悪—"安売りされた劣等感 経済苦境"生活よくならない"   既成政党への失望"見捨てられた"感情 参政党主張と共鳴」と題された記事も掲載されていた。

 7月20日の参院選挙を経て7月下旬は、このように新聞各紙でもネットでもテレビ報道でも、参政党の躍進に関する記事がとても多く見られた。なぜかくも、参政党フィーバーが吹き荒れ、少なくない人(約750万人/日本の有権者の1割以上)が熱狂し!?、期待し、参政党に投票したのか‥。まさに、日本の政治の大きな岐路、日本でも欧米と同じようなポピュリズム政党の伸長の始まりとなった政治状況の出現の感がある‥。そして、これら参政党に投票した人たちは、参政党のことを、どれだけ知っていて投票したのだろうか‥。あるいはSNSやYOUTUBEで参政党に洗脳された人々も少なくないかとも思われる‥。

 そして、日本における民主主義は重大な危機に直面し始めた‥の感もある。

 ABC朝日放送の7月下旬の「羽鳥慎一モーニングショー」では、参政党の創憲(憲法草案)作成リーダーの安達悠司氏を招いて、参政党の憲法作成内容について論議を行った。コメンテーターとして、東京大学法学部の石川健治教授も招かれ参加している。

 現在の日本国憲法の三大原則は、「①国民主権、➁基本的人権の尊重、➂平和主義」だが、参政党の創憲法案の三大原則は、「➀國体と国民参加、➁権利の基盤としての国益、➂自立と平和の追求」。➀はつまり、「主権は国民一人一人にあるのではなく、国家(國)にあり、そして國に対しての天皇の権限を重視する。それを基盤として、国民は政治に参加する。」という草案。➁は、「国民一人一人の基本的権利(人権)が第一に優先されるのではなく、国家の利益が第一に優先される」という草案。➂は、「武力・戦力を大きく増大(核兵器所有も含め)し[軍事大国]、力をともなう平和を追求する」という草案。

 この参政党の三大原則に伴い、現在の日本国憲法で明記されている「➀法の下の平等、➁思想及び良心の自由、➂信教の自由、④表現の自由(言論・出版の自由)、⑤裁判を受ける自由、⑥黙秘権」などは、参政党の憲法草案では明記されていない。また、草案では日本人の国籍要件として、「日本を大切にする心を有すること(これはどのように判断されるのだろうか‥)」となっている。

 この番組では、時間が足りなくなり、「国防・自衛権」「報道機関と報道の自由」などの項目に関しては残念ながら説明されなかった‥。コメンテーターの石川教授もこの参政党の憲法草案に対し、明治時代に制定され1945年まで運用されたた「大日本帝国憲法(天皇主権)」に近い(大正時代の大正デモクラシーの時代とも近い)」草案と話していた。

 『参政党と創る新しい憲法』(神谷宗幣監修)の書籍も出版している参政党。神道系宗教団体との関わりも非常に強いとも言われる参政党だが、参政党教の教祖的な存在ともなっているのが神谷宗幣代表とも言えるかもしれないとの指摘もある‥。

 神谷代表は福井県大飯町(若狭地方)の出身だが、彼の祖父や父、叔父など、一家を挙げての神道系宗教団体である「モロラジー道徳教育財団」の熱心な信奉者とされる。そして、神谷代表もこの宗教団体の教えの影響をとても受けていると自認している。「忠孝」「仁義」‥‥などの大日本帝国憲法下での教育勅語で重視された概念などを重視する宗教団体だ。(教育勅語の復活なども主張している。)この「モロラジー道徳教育財団」の主張などとよく似た神道系宗教団体には「生長の家」などがある。また、「日本会議」(日本の右派的政治団体)には、これらの宗教団体のメンバーが多数参加している。

 7月24日配信のインターネットには、「参政党の憲法草案に専門家—日本国憲法の方が100倍いい—憲法に報道機関をこういう風に書くのは、中国・北朝鮮、そういう非民主主義国しかない」と題された記事が掲載されていた。私も長年、中国の大学で教鞭をとっていて日本と中国の憲法比較なども大学の講義で扱っているので、このネット記事の主張もよくわかる。まあ、中国の現行憲法は、日本の大日本帝国憲法とよく似ていて、「天皇」を「中国共産党」に置き換えたようなものだ。その国の憲法とは、「その国をどのような国にしたいのか」をあらわしたものだ。神谷代表(教祖)は、参政党の憲法草案のように、主権は国家にあり国民の諸権利は国家のもとに制限されるべきだという、大日本帝国憲法下の明治・大正・昭和初期の国家観や中国共産党にある意味近い思想の持ち主なのだろうか‥とも思われる。

 8月3日付朝日新聞には、「独(ドイツ)極右AfD党(ドイツのための選択肢)に活動禁止論—与党の一角"主張が違憲の可能性"民主主義の脅威—首相は慎重姿勢、識者"政策論争を"」の見出し記事。ドイツでは極右政党が最近急伸し、外国人排斥などのさまざまな主張をしているが、これがドイツの民主主義を崩壊させる危機にあるようだ。8月2日付配信のインターネットには、「排外主義の病魔—斎藤幸平さんがドイツから問う"日本人ファースト"」と題された記事が掲載されていた。8月5日配信のネット記事には、「参政・神谷氏、独極右の共同党首と会談—SNSに"近く欧州に"」の見出し記事が掲載されていた。参政党はドイツの極右政党との連携を図るようでもある。

 今回の参院選で参政党に投票した人の層は、40代を中心として、30代・20代・50代など多岐の層(男女問わず)に及んでいるようだ。既成政党への不信感、暮らしへの不安、世界情勢への不安など、さまざまな不安感、そしてその人々の不安感をうまくすくい取り、人々にアピールして急速に伸長、日本でのポピュリズム伸長の本格的な始まりとなり、日本の政治、国造りの分岐点ともなっている2025年の夏。

 今回の参院選で参政党に比例票を入れた750万人余りの人に問いたい。それでも参政党に投票してよかったのですか‥。

■自民党内での石破首相おろしの権力抗争は、党の在り方の改革を議論することなく、自民党への不信がさらにつのる参院選後の情況。いったい何をしたいのか、どんな国造りがしたいのかがあまり国民に伝わらない立憲民主党のこの野田代表の1年間。党内民主主義が大きく欠如しているのに改革がなされない日本共産党‥。人々の暮らしが・生活が、そして国際情勢の悪化など、不安が大きな現在。この国の何かを変えたいとの750万人の一票の思いも分からぬではないが‥。それでも、やっぱり、この参政党の正体はしっかりと見ておく必要はあります。