(以下、日本経済新聞から転載)
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外国人介護士を帰国させていいのか
2012/1/22付
外国人介護福祉士候補が、29日に初めて国家試験に挑戦する。日本で働き続けるためだが、ハードルは高い。不合格なら帰国しなければならない。
高齢化で介護分野の人手不足は深刻だ。せっかく来日した人材を追い返すような試験をしては、国際社会の信頼も失う。定着できる制度に改めるべきだ。
経済連携協定(EPA)に基づき、2008年度からインドネシア、09年度からはフィリピンの看護師・介護福祉士候補が来日している。すでに1300人を超えた。今回、受験するのは08年度にインドネシアから来日した介護福祉士候補ら96人だ。
政府は受け入れにあたり厳しい資格要件を設けたうえに、日本で働き続けるには、看護師なら3年以内に、介護福祉士は4年以内に国家試験に合格するよう義務付けている。看護師は毎年の受験が可能だが、介護福祉士の場合は3年間の実務経験が必要で、実質的には1回しか受験できない。
一足先に外国人の受験が始まった看護師では、日本人の9割が合格するのに、難解な日本語が壁になり09年度の合格者は3人、10年度も16人で合格率は5%にも届かない。政府は一定の要件を満たせば1年の滞在延長を認めたが、不合格者51人が日本を去った。
介護福祉士の国家試験は日本人でも合格率50%の難関だ。このままでは多くの不合格者が出るのは目に見えている。候補者は母国で大学や看護学校を卒業し、看護師や介護士資格を持つ。現場での評判もいい。今度の試験で不合格になっても猶予期間を与え、再度受験の機会を与えるべきだ。
そのうえで試験の仕組みも変える必要がある。すでに資格を持つ人に「介護の基本」といった筆記試験を日本語で受けさせる必要があるのか。一定期間の実務経験を積めば、仕事で必要な日本語能力を試験すれば十分ではないか。どうしても必要な科目があれば、日本人とは別に試験すればいい。
厚生労働省の試算では25年には看護職が30万人以上、介護職は70万人以上不足する。日本人だけでまかなうのは難しい。
政府は昨年、ベトナムからも人材の受け入れを決めた。環太平洋経済連携協定(TPP)でも、人の移動は柱の一つだ。優秀な人材は国際的な獲得競争が始まっている。こんな試験を続けていては日本を素通りしてしまう。
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外国人介護士を帰国させていいのか
2012/1/22付
外国人介護福祉士候補が、29日に初めて国家試験に挑戦する。日本で働き続けるためだが、ハードルは高い。不合格なら帰国しなければならない。
高齢化で介護分野の人手不足は深刻だ。せっかく来日した人材を追い返すような試験をしては、国際社会の信頼も失う。定着できる制度に改めるべきだ。
経済連携協定(EPA)に基づき、2008年度からインドネシア、09年度からはフィリピンの看護師・介護福祉士候補が来日している。すでに1300人を超えた。今回、受験するのは08年度にインドネシアから来日した介護福祉士候補ら96人だ。
政府は受け入れにあたり厳しい資格要件を設けたうえに、日本で働き続けるには、看護師なら3年以内に、介護福祉士は4年以内に国家試験に合格するよう義務付けている。看護師は毎年の受験が可能だが、介護福祉士の場合は3年間の実務経験が必要で、実質的には1回しか受験できない。
一足先に外国人の受験が始まった看護師では、日本人の9割が合格するのに、難解な日本語が壁になり09年度の合格者は3人、10年度も16人で合格率は5%にも届かない。政府は一定の要件を満たせば1年の滞在延長を認めたが、不合格者51人が日本を去った。
介護福祉士の国家試験は日本人でも合格率50%の難関だ。このままでは多くの不合格者が出るのは目に見えている。候補者は母国で大学や看護学校を卒業し、看護師や介護士資格を持つ。現場での評判もいい。今度の試験で不合格になっても猶予期間を与え、再度受験の機会を与えるべきだ。
そのうえで試験の仕組みも変える必要がある。すでに資格を持つ人に「介護の基本」といった筆記試験を日本語で受けさせる必要があるのか。一定期間の実務経験を積めば、仕事で必要な日本語能力を試験すれば十分ではないか。どうしても必要な科目があれば、日本人とは別に試験すればいい。
厚生労働省の試算では25年には看護職が30万人以上、介護職は70万人以上不足する。日本人だけでまかなうのは難しい。
政府は昨年、ベトナムからも人材の受け入れを決めた。環太平洋経済連携協定(TPP)でも、人の移動は柱の一つだ。優秀な人材は国際的な獲得競争が始まっている。こんな試験を続けていては日本を素通りしてしまう。