(以下、新聞から転載)
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介護 進む国際化
人手不足、1年で6割増
お年寄りの歯磨きを介助する横尾ルイ知之さん。丁寧な仕事ぶりが評判だ(特別養護老人ホーム白雪で)
県内の介護施設や介護関連事業所で働く外国人が、2009年度と比べ約6割増えていることが県の調査でわかった。就業先も09年度の1・8倍に増えたほか、外国人を雇用していない施設でも約半数が「雇用の予定がある」「機会があれば雇用したい」と回答した。雇用情勢は全体としては依然として厳しいが、介護や福祉の現場では人手不足が言われて久しい。言葉の問題や文化の違いなどからこれまで外国人の雇用に慎重だった施設側の意識に変化がみられ、介護の現場に新たな流れが起きている。(星聡、黒羽泰典)
■80か所で雇用
県長寿政策局は10月5~15日に、県内の介護保険施設や訪問介護などを行っている事業所に調査票を送り、介護関係の人材の雇用状況などを調べた。349件の回答の中で、外国人を雇用していると答えた施設・事業所は80か所。09年度より77・8%増えた。雇用人数も59・8%増の131人だった。雇用していない269施設・事業所でも、138か所が「雇用予定がある」「機会があれば雇用したい」と回答した。
雇用されている外国人の数を施設・事業所の種別でみると、特別養護老人ホームが61人と全体の46・6%を占め、前年度より28人増えた。61人中14人が、日本との経済連携協定(EPA)に基づいて来日した外国人。以下、介護老人保健施設(28人)、介護療養型医療施設(10人)と続いた。
出身国別では、フィリピンが前年度から35人増えて54人となり、前年度トップだったブラジルの31人を上回った。54人のうち、EPAで来日したのは17人で、ブラジルは2人減った。ほかペルー14人、中国11人となっている。
■ヘルパー2級
介護や福祉の仕事は、デスクワークとは異なって文字通り人間に触れるため、外国人はなじみにくいと従来思われてきた節がある。だが、日本人職員の人材不足は介護の現場に否応なく新たな対応を促している。
「歯、洗いましょうか」。11月27日、御殿場市川島田の「特別養護老人ホーム白雪」。日系ブラジル人職員の横尾ルイ知之さん(46)が滑らかな日本語で声をかけ、利用者を洗面台に連れて行った。「口を開けて下さい」「口、ぶくぶくしましょうか」。動作を説明して歯磨きをしていく。「一つ一つの動きを丁寧に説明するよう気をつけています」と横尾さんは話す。
「白雪」は今後の事業拡大を見込み、09年から市と協力して外国人職員を募集し始めた。採用試験では3日間の就業体験と感想文の提出などを求め、日本語の能力を試した。現在は約170人の職員のうち12人が外国人。全員、介護現場で働くのは初めてだが、ヘルパー2級の資格を持ち、利用者の入浴や食事など日本人職員と同じ仕事をこなす。
外国人職員の働きぶりについて、高橋利典・施設長は「とてもまじめ。遅刻や無断欠勤もほとんどない」と高く評価する。利用者の評判も、「外国人も日本人もしてくれることは一緒。不安はない」(85歳・女性)、「最初は言葉が通じるか心配だったが、外国の方も優しい。ずっと介護してほしい」(79歳・女性)など上々だ。
県の調査では、課題(複数回答可)として48・1%の施設・事業所が「介護記録がうまく書けない」、13・0%が「日本人職員や入所者・利用者とコミュニケーションがうまくとれない」を挙げるなど、言葉の問題が上位を占めた。
「白雪」では介護の方法をスペイン語などで書いたマニュアルを用意したり、日本語教室を開いたりして外国人職員をサポートしている。ただ外国人を受け入れ働いてもらうだけでなく、施設・事業所側にも外国人の定着に向けた努力や工夫が求められる。
県は11月15日、国に「構造改革特区」として、EPAで来日した介護福祉士候補者の外国人が資格を取得しやすくなるように、在留期間を4年から10年に延長するよう提案した。
県長寿政策局の宮城島好史局長は「製造現場から人材が流れてきている。今後、介護人材の不足が予想され、20年間で介護従事者を2倍に増やさなければならない。県としてどんな支援ができるか考えていきたい」と話す。今後の高齢社会への対応として、行政の側の取り組みも欠かせない。
(2010年12月15日 読売新聞)
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介護 進む国際化
人手不足、1年で6割増
お年寄りの歯磨きを介助する横尾ルイ知之さん。丁寧な仕事ぶりが評判だ(特別養護老人ホーム白雪で)
県内の介護施設や介護関連事業所で働く外国人が、2009年度と比べ約6割増えていることが県の調査でわかった。就業先も09年度の1・8倍に増えたほか、外国人を雇用していない施設でも約半数が「雇用の予定がある」「機会があれば雇用したい」と回答した。雇用情勢は全体としては依然として厳しいが、介護や福祉の現場では人手不足が言われて久しい。言葉の問題や文化の違いなどからこれまで外国人の雇用に慎重だった施設側の意識に変化がみられ、介護の現場に新たな流れが起きている。(星聡、黒羽泰典)
■80か所で雇用
県長寿政策局は10月5~15日に、県内の介護保険施設や訪問介護などを行っている事業所に調査票を送り、介護関係の人材の雇用状況などを調べた。349件の回答の中で、外国人を雇用していると答えた施設・事業所は80か所。09年度より77・8%増えた。雇用人数も59・8%増の131人だった。雇用していない269施設・事業所でも、138か所が「雇用予定がある」「機会があれば雇用したい」と回答した。
雇用されている外国人の数を施設・事業所の種別でみると、特別養護老人ホームが61人と全体の46・6%を占め、前年度より28人増えた。61人中14人が、日本との経済連携協定(EPA)に基づいて来日した外国人。以下、介護老人保健施設(28人)、介護療養型医療施設(10人)と続いた。
出身国別では、フィリピンが前年度から35人増えて54人となり、前年度トップだったブラジルの31人を上回った。54人のうち、EPAで来日したのは17人で、ブラジルは2人減った。ほかペルー14人、中国11人となっている。
■ヘルパー2級
介護や福祉の仕事は、デスクワークとは異なって文字通り人間に触れるため、外国人はなじみにくいと従来思われてきた節がある。だが、日本人職員の人材不足は介護の現場に否応なく新たな対応を促している。
「歯、洗いましょうか」。11月27日、御殿場市川島田の「特別養護老人ホーム白雪」。日系ブラジル人職員の横尾ルイ知之さん(46)が滑らかな日本語で声をかけ、利用者を洗面台に連れて行った。「口を開けて下さい」「口、ぶくぶくしましょうか」。動作を説明して歯磨きをしていく。「一つ一つの動きを丁寧に説明するよう気をつけています」と横尾さんは話す。
「白雪」は今後の事業拡大を見込み、09年から市と協力して外国人職員を募集し始めた。採用試験では3日間の就業体験と感想文の提出などを求め、日本語の能力を試した。現在は約170人の職員のうち12人が外国人。全員、介護現場で働くのは初めてだが、ヘルパー2級の資格を持ち、利用者の入浴や食事など日本人職員と同じ仕事をこなす。
外国人職員の働きぶりについて、高橋利典・施設長は「とてもまじめ。遅刻や無断欠勤もほとんどない」と高く評価する。利用者の評判も、「外国人も日本人もしてくれることは一緒。不安はない」(85歳・女性)、「最初は言葉が通じるか心配だったが、外国の方も優しい。ずっと介護してほしい」(79歳・女性)など上々だ。
県の調査では、課題(複数回答可)として48・1%の施設・事業所が「介護記録がうまく書けない」、13・0%が「日本人職員や入所者・利用者とコミュニケーションがうまくとれない」を挙げるなど、言葉の問題が上位を占めた。
「白雪」では介護の方法をスペイン語などで書いたマニュアルを用意したり、日本語教室を開いたりして外国人職員をサポートしている。ただ外国人を受け入れ働いてもらうだけでなく、施設・事業所側にも外国人の定着に向けた努力や工夫が求められる。
県は11月15日、国に「構造改革特区」として、EPAで来日した介護福祉士候補者の外国人が資格を取得しやすくなるように、在留期間を4年から10年に延長するよう提案した。
県長寿政策局の宮城島好史局長は「製造現場から人材が流れてきている。今後、介護人材の不足が予想され、20年間で介護従事者を2倍に増やさなければならない。県としてどんな支援ができるか考えていきたい」と話す。今後の高齢社会への対応として、行政の側の取り組みも欠かせない。
(2010年12月15日 読売新聞)