瀬崎祐の本棚

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花  45号  (2009/06)  東京

2009-09-05 09:07:47 | 「は行」で始まる詩誌
 今号は「創刊15周年記念アンソロジー」として同人43名のこれまでの作品を載せており、壮観である。

 「独語症」山田隆昭。
 砂浜で黙って数時間を過ごしている。砂浜には「生きるものすべてが眠気を誘われる時刻」が流れる。私は何もすることがないので、流木で砂に直線を引いたりしている。やがて太陽の光が失われると、「想いだけが明瞭にな」り、「体内に鬱積したことばが反響」してくる。

  どうしよう
  どうしよう

  捨ててきた数々のしがらみ なにも持って行
  けないから ひとつずつ脱いで裸になって 
  彼岸へ渡る 島はどうして海に囲まれている
  のか 海岸に沿って歩けば 再びここに戻っ
  てしまう
  どうしよう                   (最終連)

 広い砂浜で波や風は茫洋と時を刻んでいて、自分の生だけが何ものかを求めて時間をわたっていく。「どうしよう」という独語は、なにかの行為を探っているのではなく、自分の生が自然の時間の中で移ろっていくことに対して発せられている。自分の中に溜まってくることばを扱いかねているのだ。そのことばは、裸になり海を渡っても、海岸を歩いても、今の自分を取り囲んでいる自然にはなんの意味もないのだ。それなのに、ことばの意味の重さを何よりも痛感しているのだ。深い思いを残す作品。
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