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「生きているものはいつも赤い」 高村而葉 (2024/10) 思潮社

2024-12-19 20:19:33 | 詩集
第1詩集か。121頁に22編を収める。瀬尾育生の栞が付く。

「静かに生きる人の姿勢で」。話者の身体は軽くなって「生まれる前に吹いた風で飛ばされ」てしまうのだ。だから「ひっそりと/心の谷へおりる」のだ。それは暗い場所に言葉を放り込んでみるようなことなのだろうか。その言葉は何かに当たってまた自分のところへ戻ってきてくれるのだろうか。その先は判らなくても、今はただ言葉を発している。

   静かに生きる人が、声も響かない広さを見つめた
   その厚み、その重さ
   足を伸ばして、血を巡らせなければならない、けれど
   空いた席に座り、残された熱でヒヤリとする心

切羽詰まった気持ちから発せられた言葉はたいへんに重い。その重さを大切にして作品を読む。

「無重力のための習作」では7つの課題が出てくる。もうじき地球が傾くので、宇宙へ海も落ちていくわけだ。その状況にどのように対処すればいいのか。「課題1」は「血が固まる前に/斜めからの視線で/無重力空間を/見知ること」なのだ。そして、

   課題4
   それは足です
   と 若い機械工に
   やさしく言うこと

このとりとめのなさが、なんとも無重力の感覚と好く合っていた。ただし、最終課題だけはいささか常套的だったか。

「やわらかくてわずかに苦い」。この世の仕組みはわかるものなのか、それともわからないようにできているのか。話者は「わかることを求めすぎる生活の現場で、芯から冷たくなってゆく」のだ。

   会いたい
   見えないもので満たされた身体中を駆け回ってでも、会いたい
   全速力で
   わたしの交差点を走りぬける!
   わかるでもわからないでもない

揺れながら言葉を発している。それは自分の位置が揺れているからに他ならない。言葉をアンカーとして揺れる自分をつなぎ止めようとしているようだ。
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