第4詩集。美しい木炭画の装画をつけたソフトカバーで、131頁に1編の序詩のような行わけ詩と9編の散文詩を収める。とても共感できた川口晴美の栞が付く。
作品9編は独白調の散文詩で、どれもかなりの長さである。話者は高層ホテルでセックスの妄想をだきながらひとりで誕生日を迎える女であったり、ブランド品の服を買うためにいかがわしいアルバイトをする女子学生だったり、ストーカーまがいの男だったりする。彼らの語る世界は独りよがりに歪んでいて、自分のよりどころが極端に変位している。
そうだわたしは本当に愛してくれる男とホワイトチョコを食べていたんだった
1日が30時間あればいいのに白い外灯が区画ごとにつぎつぎ消えていって明日が
昇るあたしは幼い頃の真っ暗な浴槽からひとりで這い上がったときのことを思い
出す
あのとき世界がくるんって捲れ上がった気がしたんだったそうだそんなすごいこ
とがあたしにもあったんだと思ったら何だかお腹がすいてきた
(「また来てね」より)
どの作品でも、圧倒的な物語世界が展開されている。話者の存在している地点が揺れ、それに伴って見えている風景が揺れる。その揺れを支配しているのは、表面的には肉体的な、あるいは皮相な欲望であるように見えるのだが、それを呼び起こしているのは話者の皮膚感覚であり、理屈を越えた生理的な欲求である。
このように作者が自己とは離れたところに存在する話者を借りてまで語りたかったことのすさまじさに、思わずたじろいでしまう。それほどの力業に満ちた詩集であった。
作品9編は独白調の散文詩で、どれもかなりの長さである。話者は高層ホテルでセックスの妄想をだきながらひとりで誕生日を迎える女であったり、ブランド品の服を買うためにいかがわしいアルバイトをする女子学生だったり、ストーカーまがいの男だったりする。彼らの語る世界は独りよがりに歪んでいて、自分のよりどころが極端に変位している。
そうだわたしは本当に愛してくれる男とホワイトチョコを食べていたんだった
1日が30時間あればいいのに白い外灯が区画ごとにつぎつぎ消えていって明日が
昇るあたしは幼い頃の真っ暗な浴槽からひとりで這い上がったときのことを思い
出す
あのとき世界がくるんって捲れ上がった気がしたんだったそうだそんなすごいこ
とがあたしにもあったんだと思ったら何だかお腹がすいてきた
(「また来てね」より)
どの作品でも、圧倒的な物語世界が展開されている。話者の存在している地点が揺れ、それに伴って見えている風景が揺れる。その揺れを支配しているのは、表面的には肉体的な、あるいは皮相な欲望であるように見えるのだが、それを呼び起こしているのは話者の皮膚感覚であり、理屈を越えた生理的な欲求である。
このように作者が自己とは離れたところに存在する話者を借りてまで語りたかったことのすさまじさに、思わずたじろいでしまう。それほどの力業に満ちた詩集であった。
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