瀬崎祐の本棚

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「Poetry EXOPO 2020」 (2020/11) 埼玉

2020-12-25 21:31:30 | ローマ字で始まる詩誌
上質のA3用紙1枚の裏表に8人の作品が載っている。添えられていた手紙によると、榎本櫻湖が発行しているフリー・ペーパーのようだ。

川島雄太郎は8行ほどの行分け詩3編を発表している。その中の「静かな季節」。
作品は「病葉の 葉さきに擦れた そのひとの/肌をわたしは さわり直した」と始まる。そして直ぐに「さわり直したい」と言いなおす。それは五月の中にいるからであり、五月はそのような季節なのだ。

   この道の
   行く先々 どこもいちように
   ツツジの花が咲き溢れ
   このようなところへあなたは出かけていって
   出かけたきりでいる

少しも余分なものはなく、それでいて言うべき事は言い切られている。人は季節のなかに居るのだが、その季節もまた、人の動作や思いによって形づくられていくのだ。

「バカボン引越センター 豊島園発 西武遊園地行き カルーセル・エルドラドご一行様の巻」野崎有以
まあ、ハチャメチャである。時事ネタを取りこんで大変に俗物的である。しかし、そんな陰口など気にもとめない豪快な勢いに、読まされてしまうのである。椎名町で出会ったバカボンのパパは、先日閉園した豊島園のカルーセル・エルドラド(日本最古のメリーゴーランドだったらしい)の住人たちを、引っ越し先の西武遊園地へ連れて行くところだったのだ。

   カルちゃんとエルちゃんは発車メロディの東村山音頭を知らない。
   「あれは、東村山音頭。このあたりの盆踊りでは必ず踊るの。盆踊りはね、遠
   くへいってしまってもう会えない人のことを思って踊るんだよ」
   「アイーン!」

バカ殿は心の中の王様であり、いつでも「だいじょうぶだぁ」とささやいてくれるのだ。私事になるが、私(瀬崎)は東村山小学校で学んだ。私の弟は志村けんの同級生だった。それはさておき、作者の想念世界にはこんな風なものが詰まっていて、毎日が祭日の遊園地のようにハチャメチャなのだろうか。でも、そうやって一生懸命バランスを取らなければならないものも、また作者は抱えているのだろうな。
コメント
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