瀬崎祐の本棚

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詩素 8号 (2020/05) 神奈川

2020-06-05 19:11:15 | 「さ行」で始まる詩誌
 詩誌「洪水」を発行していた池田康が中心となっているようだ。22人の同人に、今号では2人の寄稿者。87頁。

 「甘い苦しみの後に苦い死はやってくるだろう」小島きみ子。
 寓話のような世界が展開されている。異様な決まり事が支配している社会のなかでは、個人の感覚が先鋭化するのだろう。希望や絶望が余分なものを剝ぎ取られて剥き出しになる。そして作品の中では色も乱舞している。灰色の男や金髪の女、白い壁と黒い穴。そして基調を支えているのがピンク色である。

   ピンク虚無にはピンクを超絶望するという超絶パワーがある。
   と、いう説があるがこれは嘘である。「絶望の上に希望はやってくる」という(ローマ
   人の手紙)もあれも実は嘘である。正しくはピンク虚無の上には超絶望が訪れる。

 このピンク色に作者が重ねようとしたものが何であったのか、残念ながら読み取ることはできなかった。しかし、まるでホドロフスキーの原色悪夢映画のような凄まじさがある作品だった。

 「夢の、ものの木」海埜今日子。
 同じ夢でも、この作品では名付けられたものの輪郭は滲み、その佇まいも危うくしている。その木は夢と現の両方の世界に根を下ろし、枝は相反するもの方向に等しく伸びていくのだろう。
 
    空がまぶしい。空が暗い。土があたたかい。土がしめっている。死んでいること、夢と
   日々、生きていること。根と葉、雨が降った、落葉と花。空が晴れた、幹がうるおう。

 「もの」の手触りを確かめようとして言葉が彷徨っている。タイトルの「、」で呼吸を休めたときに入り込んでくるものは何だろう。言い切ることが出来なかった夢の木はにがく、だからこそ生命をうるおす雨の気配を感じると「あまいものがほしくなる」のだろう。うっとりとするような、たいへんに眩暈に満ちた彷徨いの作品だった。

 「アンケート」と題した頁で各同人が掲載作品の感想を書いており、興味深く読んだ。
コメント
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