毎号読みでのある手造り100部発行の二人誌。池井の手書き文字で、B5版18頁。
「老楽」粕谷栄市。
老らくの日々になると自分の分身があらわれるという。別の自分が本を読んでいる間に、私は女と「遠い四月の花畑で、抱き合って寝て」いることもできるのだ。自分の死のことばかりを考えて暮らす老いらくでは、死から解放されているもう一人の自分が必要なのかもしれないのだが、
私が一生を終えると、世界は終わる。全ては消滅する。
あ、そのとき、どこかで、別の世界も消滅しているか。
今号の賓客作品は時里二郎「佐飛島(さびしま)」。
「地図にないさびしまのあたりを/わたしの指はなぞりかえし」ていて、見えない鳥も鳴いている。詩集「名井島」の作品につながる風景を思い浮かべながら読んでいる。ここでも、どこにもない島の名は「ふるいうたのは」から立ち上がってきている。
行ったことのない島から
わたしは帰ってきて
いつかの朝からとどいたはがきには
けしいんもない
池井昌樹の4編中3編は平仮名だけの行分け詩で、この「銀河系」が散文詩。
私は「珍しいものを匿している友を訪ね」るのだが、記憶は私を裏切り、私を危うくもする。しかし実は、記憶を信じたくない私がいたのではないだろうか。
・・・口外できない、目には見えない壁を戴く掌
をそっと閉ざすと、壁は消え掌紋も消え私も
消えて、何処からか、長閑に鶏の声がする。
視点が記憶から解き放たれると、その途端に私は銀河の塵になってしまうのだろう。
「老楽」粕谷栄市。
老らくの日々になると自分の分身があらわれるという。別の自分が本を読んでいる間に、私は女と「遠い四月の花畑で、抱き合って寝て」いることもできるのだ。自分の死のことばかりを考えて暮らす老いらくでは、死から解放されているもう一人の自分が必要なのかもしれないのだが、
私が一生を終えると、世界は終わる。全ては消滅する。
あ、そのとき、どこかで、別の世界も消滅しているか。
今号の賓客作品は時里二郎「佐飛島(さびしま)」。
「地図にないさびしまのあたりを/わたしの指はなぞりかえし」ていて、見えない鳥も鳴いている。詩集「名井島」の作品につながる風景を思い浮かべながら読んでいる。ここでも、どこにもない島の名は「ふるいうたのは」から立ち上がってきている。
行ったことのない島から
わたしは帰ってきて
いつかの朝からとどいたはがきには
けしいんもない
池井昌樹の4編中3編は平仮名だけの行分け詩で、この「銀河系」が散文詩。
私は「珍しいものを匿している友を訪ね」るのだが、記憶は私を裏切り、私を危うくもする。しかし実は、記憶を信じたくない私がいたのではないだろうか。
・・・口外できない、目には見えない壁を戴く掌
をそっと閉ざすと、壁は消え掌紋も消え私も
消えて、何処からか、長閑に鶏の声がする。
視点が記憶から解き放たれると、その途端に私は銀河の塵になってしまうのだろう。