瀬崎祐の本棚

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花  61号  (2014/09)  東京

2014-11-07 18:50:37 | 「は行」で始まる詩誌
 約80頁、創刊から約20年が経っていて、現在の同人は43人。41人の詩の他にエッセイや翻訳詩も掲載されている。 

 「耳」高島りみこ。
 砂漠の真ん中に落ちている耳は、その耳管が地中につながっているようだ。そして地球のなかから聞こえてくるものを聞きとろうとしていたようだ。幻想的なイメージに社会風刺を巧みに絡ませている。

 「電話」原田瑛子。
 ”曖昧”という抽象的な言葉が、実体を伴うものとなって居間のバランスボールの上にいるというところが、まず面白い。曖昧な会話しかしなかった電話に対する後悔のような思いが、この”曖昧”を誕生させたわけだ。感情を視覚化させた面白さである。

 「拾骨」原利代子。
 焼かれた兄の骨を相方と摘み上げている。それが兄の骨だとは、とうてい思えないのだ。「ねえ お兄様/これはだましっこ?/ためしっこ/骨になった振りをして/またどこかへ行ってしまった/あの時のように」

 「樹木医のように」鷹取美保子。
樹木医は老いた桜の樹を再生してくれた。それならば、「風になったあなたを/甦らせ」てくれる風の医者がいてもよさそうなものだと、かすかなことを考えたりもしているのだ。「そして/手をひろげ/風を抱きしめる用意をする」。ここには、叶わないことが判りきっていることをなおも考えてしまう切なさがある。
コメント
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