みちのくの山野草

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松田甚次郎の評価(南雲道雄)

2019-03-12 18:00:00 | 甚次郎と賢治
《『土に叫ぶ人 松田甚次郎 ~宮沢賢治を生きる~』花巻公演(平成31年1月27日)リーフレット》

 南雲道雄氏の、次のような松田甚次郎評がある。
 先ず同氏は、松田甚次郎の実践のあらましを、
 その最初の実践は…(略)…農村演劇活動で示される。それがやがて隣保館活動となり、最上共働村塾の農村青年の啓蒙活動へと発展、そして日本協働奉仕団の結成や、東北各県を中心とした農村啓蒙行脚と称する啓蒙活動へと連続してゆく。そして…(投稿者略)…「土に叫ぶ館」建設にまでいたる。「毎日純真な青少年と寝食労働を共にして修業」するという最上共働村塾が松田甚次郎の生涯の中心テーマとなるのだが、その「開塾趣意」の主題は「村塾は現在の学校教育の弊を徹底的に矯正した人格教育であり、勤労教育であり、生活訓練であります」…(投稿者略)…「更に次三男の青年を満鮮の曠野に耕作できる拓殖訓練を授け、強烈なる皇国精神の発動を以って、農村のどん底の立場や、不景気、失業苦のない明るい規範の社会を招来するまで務めねばなりません」と記されている。
〈『現代文学の底流――日本農民文学入門』(南雲道雄著、オリジン出版センター)112p~〉
と紹介し、次に、
 宮澤賢治を師と仰ぎ、その精神主義的な面を受けついだ活動的な知識青年の悲劇のごときものを右の趣意書にみることができるが、運動開始当初は警察にマークされ、刑事の尾行までついたこの啓蒙運動を、数年後には一挙に「強烈なる皇国精神の発動」まで急旋回させたのは何か。それは松田の農本主義精神が、天皇崇拝に直接結びつくものを最初からはらんでいたけれども、直接的には彼の運動と実践力を利用しようとし、「高松家」より出された「有栖川宮記念更生資金」という餌であった。…(投稿者略)…
 しかし、この松田甚次郎の運動または軌跡は、このまま戦争協力者のものとして捨て去るには惜しい幾つかの試みがあった。
〈同113p〉
と評しつつも、惜しんでいた。
 たしかに南雲氏が述べているように、甚次郎はその「趣旨書」の中で、
 更に次三男の靑年を滿鮮の曠野に耕作出來る拓殖訓練も授け、強烈なる皇國精神の發動を以つて、農村のどん底の立場や、不景氣、失業苦のない明るい規範の社會を招来するまで務めねばなりません。各々の立場を意識的に分擔し、お互に信じ、共働し、隣保し、以つて日本農村をして、全人類に先驅する正しい皇道日本たらしめねばなりません。
〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)226p〉
と述べている。
 しかし、これはあくまでも「趣旨」なのであって、実際に「次三男の靑年を滿鮮の曠野に耕作出來る拓殖訓練も授け」とまではたして言い切れるのだろうか。ちなみに、甚次郎は『土に叫ぶ』に、
    「一〇 日本協働奉仕團の結成」で「祖国愛」 

    「一四 農村最近の動向と時局」で「満州移民」
という小論を載せているが、そこからはそうは言い切れないと私は判断した。それは、もしこの2項目を含むようなことが仮に実践されていたとしても、甚次郎の実践の総体の中ではほんの一部にしか過ぎないからだ。
 また実際に、甚次郎と「寝食労働を共にして修業」した者は「青少年」ではあるが、その中の何割りが「滿鮮の曠野」へ行ったというのだろうか。私にはそのような塾生を見つけることはできなかった。がしかし、仮に行ったとしても、六原の青年道場出身者や内原の訓練所修了生の数に比べれば微々たるものであろう。したがって、戦後松田甚次郎が無視された理由の一つの、彼が満蒙開拓の推進者という漠然とした評価があったやに私は聞き及んでいるが、もしそれが理由であったとしたならばそれはあまりにも不公平なことだ。満蒙開拓の推進者とした責められるべき人物は東宮鉄男石原莞爾加藤完治等を始めとして他にもっと沢山いるだろうに。

 だからここは、虫の眼になるだけではなく鳥の眼にもなって、松田甚次郎や最上共働村塾の総体を見て判断すべきではなかろうか。南雲氏も指摘するように、「松田甚次郎の運動または軌跡は、このまま戦争協力者のものとして捨て去るには惜しい幾つかの試みがあった」と言えると私も思っている。

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