みちのくの山野草

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定性的には正しかったのだが定量的には?

2021-01-25 12:00:00 | 賢治の「稲作と石灰」
〈『宮澤賢治と東北砕石工場の人々』(伊藤良治著、国文社)〉

 今回は、『宮澤賢治と東北砕石工場の人々』の「第二章 鈴木東蔵と宮澤賢治・その出会い」、その「一 東北砕石工場の創業」より。
 この出だしには、以前に一度引いたことだが、興味深いこのようなことが書いてある。
 『小岩井農場七十年史』、『小岩井農場百年史』には小岩井農場自体の必須課題「土壌改良工事」に関わる記載があり、
 「次は酸性土壌の改良である。農場の土壌は分析表によると石灰含有量は〇・九%、酸度はPH五~六度であった。…(投稿者略)…」
             〈『宮澤賢治と東北砕石工場の人々』(伊藤良治著、国文社)73p〉
 一方、同書には次のような記述、
 なおわかりきったことながら、念のためここに若干付け加えさせていただきたい。
・「かねて賢治の考えていた土地の改良には是非必要」なものとはもちろん石灰岩抹(炭酸石灰)を指す。…(投稿者略)…
・「農村に安くて大事な肥料(石灰岩抹のこと)を供給することが出来る」とは、もちろん…(投稿者略)…原石のままの石灰石を細かく砕いただけのものだとは記述のとおり。その方が田畑や牧草地、果樹園に極めて有効でありそして安上がりだと、その施用を賢治は生徒に奨めてきたことであり…(投稿者略)…
              〈宮澤賢治と東北砕石工場の人々』(伊藤良治著、国文社)94p~〉
もある。たしかに賢治はそう認識したであろうとは私も思うのだが、それらが皆正しかったのかというと最近の私は自信がなくなってきている。
 例えば先に〝「宮沢先生が石灰岩抹といわぬ日はなかった」〟で引いたあの「修学旅行復命書」の記述、
「北海道石灰会社石灰岩抹を販るあり。これ酸性土壌地改良唯一の物なり。米国之を用ふる既に年あり。内地未だ之を製せず。早くかの北上山地の一角を砕き来りて我が荒涼たる洪積不良土に施与し、草地に自らなるクローバーとチモシーの波を作り、耕地に油々漸々たる禾穀を成ぜん。」
に従えばその通りだとは思うのだが、それはその当時の話であり、はたしたすべて正しかったのだろうか。それは、先の投稿〝小岩井で大量のタンカルを必要とした訳が解った〟で述べたように牧草としてはアルアルファを使いたかった小岩井農場であればそのとおりだろうが、水稲の場合にはそうとは言い切れなさそうだからだ。アルアルファの適正なpHは6.5~7.0だが、水稲の適正なpHは5.5~6.5だからだ。
 言い方を換えれば、賢治の石灰岩抹施用に関しての考え方は定性的には正しかったのだが定量的にははたしてすべて正しかったとまでは言えないのではなかろか? ちなみに、賢治が石灰岩抹の施用に当たってpHの値に言及している資料や証言を私は未だ見つけられずにいるからなおさらにである。

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            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
            ☎ 0198-24-9813
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