みちのくの山野草

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「真の贈与≒真の農への犠牲」?

2020-01-22 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉

 では今回は、新たな章「東北・縄文・鬼」からである。
 そこにはこんなことが述べてあったので、頷いたり、首を傾げながら読み進めた。
 死の直前まで、文字通り生命を賭して農民援助に向かったのは、厳寒と土地制度の矛盾をしりめに、ぬくぬくと栄華を享受してきた宮沢一族への憤怒があった。しかもその憤怒を持ちながら、父親の保護を受けて生きる自分の不甲斐なさに、彼はやりきれない気持ちをもち、それが、貧民救済のための犠牲的精神となって飛翔したのである。
 しかし、そのような農への犠牲的精神というか、贈与の精神は、彼の人生の表面に拡大されたものではあるが…投稿者略…
            〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)95p~〉
 まずは、「死の直前まで、文字通り生命を賭して農民援助に向かった」についてだが、首を傾げてしまった。それは、前回〝昭和8年9月20日の面談〟において、
 文字通り、命をかけての対応である。自己犠牲、贈与の精神が如実に見られる。
 この賢治の献身的努力、そして彼の農民を思う気持ちは、いつもやさしく、温かかった。
については疑問を投げかけたところでもあり、その理由はそこで挙げた菊池忠二氏の問題提起の理由とほぼ同じだ。
 次に、「ぬくぬくと栄華を享受してきた宮沢一族への憤怒があった。しかもその憤怒を持ちながら、父親の保護を受けて生きる自分の不甲斐なさに、彼はやりきれない気持ちをもち」については、前半にはうんうんと頷き、後半にはそうかなと悩んでしまった。まず言えることは、賢治は矛盾していると。いやもっと精確に言うと、賢治が矛盾していることだけをもって批判するつもりは私にはないが、そのことを賢治はそれほど深刻には受け止めておらず、「憤怒を持ち」とか「彼はやりきれない気持ちをもち」ということはなく、あっけらかんとしていると私には見える。そして、それは彼の不羈奔放な性向がなせる技だと私は思っている。
 それから、「そのような農への犠牲的精神というか、贈与の精神は」という記述から、
    贈与≒農への犠牲
という近似式が成り立つと言っているのか、ということを知った。そしてもしそうであったとするならば、おのずから、懸案の「真の贈与」とは、  
    真の贈与≒真の農への犠牲
ということになるのだが、さて、はたして?
 
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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』
 本書は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
 1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
 例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。
 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。

〈はじめに〉




 ………………………(省略)………………………………

〈おわりに〉





〈資料一〉 「羅須地人協会時代」の花巻の天候(稲作期間)   143
〈資料二〉 賢治に関連して新たにわかったこと   146
〈資料三〉 あまり世に知られていない証言等   152
《註》   159
《参考図書等》   168
《さくいん》   175

 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813
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