〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉
さて、そろそろ「農への突入と悲哀」という章は終わりを迎えそうだ。そしてそこには再び「贈与」あるいは「贈与者」という用語が次のように沢山登場してきた。
「もうはたらくな
レーキを投げろ
この半月の曇天と
今朝のはげしい雷雨のために
おれが肥料を設計し
責任のあるみんなの稲が
…(略)…
青ざめてこわばったたくさんの顔に
一人づつぶっつかって
火のついたやうにはげまして行け
どんな手段を用ひても
辨償すると答へてあるけ」…投稿者略…
レーキを投げろ
この半月の曇天と
今朝のはげしい雷雨のために
おれが肥料を設計し
責任のあるみんなの稲が
…(略)…
青ざめてこわばったたくさんの顔に
一人づつぶっつかって
火のついたやうにはげまして行け
どんな手段を用ひても
辨償すると答へてあるけ」…投稿者略…
自然の暴力によって破壊された稲にたいし、賢治は「弁償」するといっているのである。…投稿者略…完全なる贈与の世界といったらいいのかもしれない。…投稿者略…
中沢新一は、賢治に真の贈与者を確認している。
「宮沢賢治という人は、そのような贈与者、しかも稀に見る純粋さで、このような贈与の精神を生きた人であったのだろう、と私は考えるのです。宮沢賢治はずいぶん若い頃から、自分をとりまいている自然や、素朴な人々の心の働きや、あるいはそれらすべてを包み込んでいる宇宙に『贈与の霊』がみちている、という直観をいだいていたようです。…投稿者略…………①」(『哲学の東北』青土社、平成七年、一〇頁)
中沢は賢治の全仕事から贈与のおもむきが伝わってくるという。ただ現実世界にあって、贈与者は不幸を背負うことになると次のようにいう。
「しかし、決意して贈与者になろうとしてものは、現世では、けっして幸福にはなれません。…投稿者略…」
「市場経済の世界においては、純粋な贈与などは、かえって嘲笑の的です。」
「しかし、決意して贈与者になろうとしてものは、現世では、けっして幸福にはなれません。…投稿者略…」
「市場経済の世界においては、純粋な贈与などは、かえって嘲笑の的です。」
贈与の精神、犠牲的精神をもって「農民のなかへ」とか「農村のなかへ」という行為は、日本近代史の上で成功した例は皆無にちかい。
そこで私は嬉しくなった。ここに至ってやっと、このシリーズの最初〝「真の贈与」とは〟で抱いた
「真の贈与」とは一体どんなことを意味するのだろうか。
という疑問の答が少し見えてきそうだ、と私は大いに期待できたからだ。しかし、浅学の私にはそれは無理だった。
それは、そもそも中沢新一氏の「確認①」は、同氏がそう考えていることであったり、そう推測していたりしていることであり、実証していないからである。さらに、私は今まで、賢治が「自分をとりまいている自然や……宇宙に『贈与の霊』がみちている」と言っていたということも知らない。そしてもし知っていたとしても、「霊」ということであれば、〝①〟は「研究」というよりは「評論」に近いと私思ってしまうので、これ以上は私はこの件に関して探求をしてみたいとは思わない。私は「研究」はしたいとは思っているが「評論」についてはあまり取り組むつもりはないからである。
ついてはまずは、中沢氏の『哲学の東北』の現物を読んで見ることは少なくともせねばならない。そこで、早速今、アマゾンに注文したところだ。この続きは、それを読んでからまた考え直してみたい。
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************この度「非専門家の調査研究・報告書」だからという理由で「宮城県図書館」から寄贈を拒否された『本統の賢治と本当の露』です***********
賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』本書は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。
〈はじめに〉
………………………(省略)………………………………
〈おわりに〉
〈資料一〉 「羅須地人協会時代」の花巻の天候(稲作期間) 143
〈資料二〉 賢治に関連して新たにわかったこと 146
〈資料三〉 あまり世に知られていない証言等 152
《註》 159
《参考図書等》 168
《さくいん》 175
現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
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