不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

塾の片腕となった間宮一

2021-01-04 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』〉

 では今回は、「塾舎の建設――塾の片腕となった間宮一」 という項からである。 それはこう始まっていた。
 第一回の村塾に参加して、塾の朝の行事などの指揮もとってくれた片岡忠穂は、閉塾後郷里に帰り、基営林署の番小屋の片付けに始まり、一〇人の青年が二週間にわたり、農村向上のために魂と魂の火花を散らして磨き合い、働き合ったさまを「懐かしき鳥越」と題して、地元新聞に五日間にわたって寄稿した。
             〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』(安藤玉治著、農文協)114p〉
 ところでこの片岡忠穂とは、以前の投稿〝『最上共働村塾』〟でも言及した例の人物であり、甚次郎自身は『土に叫ぶ』の章「九 最上共働村塾」の中で、その開塾の経緯等について次のようなことなどを述べている。
 昭和七年春、友人が集まつた時、お互ひに夏期の閑に、農場の小屋に集まつて、共に働き乍ら、一週間自炊をして修行しようではなかといふことになつた。…(投稿者略)…この時唯一の第一囘の協力者が現れた。それは昭和六年靑年團指導者養成所で、同じ部屋に床を並べて、二ヶ月間寢食を共にした友人である。…(投稿者略)…別れる時「君の事業で手傳ひの出來る事があつたら何時でも行くから」と約束してくれたのであつた。名は片岡忠穂君で、當時鄕里の小學校の教員をして居り、今は秋田縣の社會教育主事補をして、靑年教化に努力して居る若い意氣のある友人である。
 この片岡君に相談したら、「夏休み中だから」と言つて、直ちにやつて來てくれた。村の靑年と私と三人で元営林署の番小屋…(投稿者略)…片付け、井戸掃除をやり、障子を張つて、いよいよ(昭和7年)八月十四日から二週間の短期村塾が開かれた。第一囘なので名もなし、塾則もなし、まるで創立委員會の樣でもあつた。集まつたのは八名、皆んなで十名であつた。二週間を最有数に、農村向上のため修行硏究をしようと固い誓ひをたて、世にも最上なる村塾としよう、そして我等の共に働くことから出來たのだから、『最上共働村塾』と命名したのである。
            〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)222p~〉
 つまり、片岡は甚次郞が第一回の村塾を開いたときのいわば片腕であった。
 そして、安藤はこう続けていた。
 たまたまその頃、秋田を旅行していた茨城の青年間宮一がこの体験記を読み、感動をおさえることができず、鳥越に松田を訪ねてきた…投稿者略…。
 貧困のどん底にあえぐ農村を救う途は、共にやる気のある青年を育成することが先決だとの、松田の考えに心底から共感した間宮一は、身辺にかかわる一切を振り切って、松田の協力者として鳥越に移り住むことを確約してくれた。
             〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』(安藤玉治著、農文協)114p〉
 こうしてみると、昭和2年3月8日、甚次郞と初めて会っただけで、甚次郞を「小作人たれ/農村劇をやれ」と「訓へ」てそのとおりにさせた賢治も凄いが、紙面を通じてこの青年を山形に移り住まわせた甚次郞も凄い。なお、この間宮一とはもちろん、例の松田甚次郎三十三回忌にあたって作られたの追悼集『寂光「素直な土」』の編集者でもある。
 そして安藤はさらに、間宮の次の回想、
 昭和七年一〇月九日……生と仕事への意欲の夢を満々とふくらませて飛び込んで行った最上の天地! 山形県最上郡山神沢国有地二号地、では俗に苗圃と呼んで居ました。弱冠二十三歳、私と同年配の一青年が伝統ある百十数戸の鳥越のを牛耳る。兎に角あれだけの事業を発想し、運営として当時としては新しき村を方向づけ様とした意欲はたいした事でした…投稿者略…
              〈同115p〉
を紹介し、今度は間宮が甚次郞の片腕となって、最上共働村塾の塾舎の建設に取り組み、昭和8年4月20日に甚次郞は塾舎を完成させたと、述べていた。

 先にも述べたが、羅須地人協会は最上共働村塾に較べると頗る短命に終わったが、それは賢治にはこのような同年配の力強い仲間はいなかったが、甚次郞にはそのような仲間がいたということもその大きな理由ではなかったのだろうかと、私は考えさせられた。

 続きへ
前へ 
 “「松田甚次郎の再評価」の目次”へ。
 ”みちのくの山野草”のトップに戻る。

《新刊案内》
 『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(「露草協会」、ツーワンライフ出版、価格(本体価格1,000円+税))

は、岩手県内の書店で店頭販売されておりますし、アマゾンでも取り扱われております
 あるいは、葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として当該金額分の切手を送って下さい(送料は無料)。
            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
            ☎ 0198-24-9813
 なお、目次は次の通りです。

 そして、後書きである「おわりに」は下掲の通りです。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ボルトの花(白色系)(7/3)(... | トップ | ボルトの花(残り)(7/3)(回... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

甚次郎と賢治」カテゴリの最新記事