みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

「過去と未来ほども違っていた」

2019-12-23 10:00:00 | 「羅須地人協会時代」の真実
〈『下根子桜の朝』平成23年11月11日撮影〉
【米田利昭の論文「宮沢賢治の手紙」より】

 さらに米田は、こうダメ押ししていた。
 百姓をしながら短歌や俳句を作るといった金のかからぬものでなく、彼の選んだものは金のかかる、バタ臭い、村民の感情を逆撫でするようないわば前衛演劇で、そのために東京駅行きは必要だった。とにかく「教師をやめて本当の百姓になる」の〈本当の百姓〉の中身が、普通の解釈と賢治の意味とでは、過去と未来ほども違っていた。
            〈駒沢女子大学「研究紀要」創刊号 平成六年十月、62p〉
 そしてこのダメ押し「普通の解釈と賢治の意味とでは、過去と未来ほども違っていた」を知った私は、少なくとも賢治の言っていたところの〈本当の百姓〉とは、私たちが思っているような百姓ではなかったのだ、ということを素直に受け入れる必要があるとつくづく覚った。そして、それを素直に受け入れてこそ本当の賢治にまた一歩近づけそうな気がした。

 ちなみに、「羅須地人協会時代」の賢治がポランの広場を上演しようとしていたということは次の新聞報道、
【昭和2年2月1日付 『岩手日報』】「農村文化の創造に努む

から明らかだ。この中で、賢治が「目下農民劇第一回の試演として今秋『ポランの廣場』六幕物を上演すべく夫々準備を進めてゐるが」と発言しているからだ。しかしながら、結局のところそれも含め、賢治がその後に演劇を上演をしたという資料や証言等を私は見つけられずにいる。

 一方の松田甚次郎は以下のように、
昭和2年4月25日   鳥越倶楽部を結成する
   〃 9月10日   農村劇「水涸れ」公演
昭和4年       農村劇「酒造り」公演
昭和5年9月15日   農村劇(移民劇)公演
昭和6年9月     農村劇「壁が崩れた」公演
昭和7年2月     農村劇「国境の夜」公演
昭和8年2月     農村劇「佐倉宗吾」公演
昭和9年       農村喜劇「結婚後の一日」公演
昭和10年12月     「ベニスの商人」公演
  〃  暮     選挙粛正劇「ある村の出来事」公演
昭和11年4月     農村劇「故郷の人々」「乃木将軍と渡守」公演
昭和12年1月10日  「農村劇と映画の夕」公開
            (実家の都合により塾一時閉鎖)
            (昭和13年5月18日  「土に叫ぶ」出版)
昭和13年      農村劇「永遠の師父」公演
昭和14年8月15日  農村劇「双子星」公演
昭和15年       二千六百年奉祝の舞踏と奉祝歌公演
昭和17年2月     農村劇「勇士愛」公演
昭和18年3月21日   「種山ヶ原」「一握の種子」公演
昭和18年8月4日   松田甚次郎逝去(享年35歳)
             <『土に叫ぶ』及び『宮澤賢治精神の実践』(安藤玉治著、農文協)の年譜より抜粋)>
新庄に戻った昭和2年から、急逝する昭和18年まで毎年のように農村劇を上演し続けたということを知れば、「農村劇をやれ」と強く「訓へ」たその本人がそれをその後一度も上演できなかったということは、皮肉なことだし、不思議なことだ。そこから見えてくることは、紛れもない幾つかの真実だ。

 まさに、米田が「過去と未来ほども違っていた」というようなそれもだ。

 続きへ
前へ 
 ”〝米田利昭の論文「宮沢賢治の手紙」より〟の目次”に戻る。
 ”みちのくの山野草”のトップに戻る。
************この度「非専門家の調査研究・報告書」だからという理由で「宮城県図書館」から寄贈を拒否された『本統の賢治と本当の露』です***********
 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』
 本書は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
 1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
 例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。
 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。

〈はじめに〉




 ………………………(省略)………………………………

〈おわりに〉





〈資料一〉 「羅須地人協会時代」の花巻の天候(稲作期間)   143
〈資料二〉 賢治に関連して新たにわかったこと   146
〈資料三〉 あまり世に知られていない証言等   152
《註》   159
《参考図書等》   168
《さくいん》   175

 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,650円(本体価格1,500円+税150円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イギリス海岸(12/21、残り) | トップ | 「スクラップ&ビルドしなけれ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

「羅須地人協会時代」の真実」カテゴリの最新記事