みちのくの山野草

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賢治のいう〈本当の百姓になる〉とは

2019-12-22 10:00:00 | 「羅須地人協会時代」の真実
〈『下根子桜の朝』平成23年11月11日撮影〉
【米田利昭の論文「宮沢賢治の手紙」より】

 米田は、こうも述べていた。
「おれたちはみな農民である ずゐぶん忙がしく仕事もつらい/もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい」
「曾ってわれらの師父たちは乏しいながら可成楽しく生きてゐた/そこには芸術も宗教もあった/いまわれらにはただ労働が 生存があるばかりである/宗教は疲れて近代科学に置換され然も科学は冷く暗い/芸術はいまわれらを離れ然もわびしく堕落した/ いま宗教家芸術家とは真善若くは美を独占し販るものである/われらに購ふべき力もなく 又さるものを必要とせぬ/いまやわれらは新たに正しき道を行き われらの美をば創らねばならぬ/芸術をもてあの灰色の労働を燃せ」(農民芸術概論綱要)
 これだ。プロレタリア意識はあるが、階級闘争へは向かわず、芸術創造に向かう。労働が、科学と宗教に結びつき、芸術を生む。賢治のいう〈本当の百姓になる〉とは、これだった。
            〈駒沢女子大学「研究紀要」創刊号 平成六年十月、61p〉
 私は米田の「賢治のいう〈本当の百姓になる〉とは、これだった」というこの断定表現を見て、胸のつかえが下りた。それは次のような理由からだ。

 先の投稿〝当時の普通の百姓になろうとしていた訳ではない〟で主張したように、賢治が言うところの「本統の百姓になります」とは当時の普通の百姓になることではなく、佐々木多喜雄氏が言っているような百姓になることだったと私は判断していた。したがって、米田が断定しているような「賢治のいう〈本当の百姓になる〉とは、これだった」の〈本当の百姓〉とは完全に一致しているわけではないものの、前回の〝賢治は自分では水田は作らなかった〟のことも併せて判断すれば、賢治は「当時の普通の百姓」になること、端的に言えば自分たちが作った米さえも満足に食べられないような小作人になることは考えていなかった、という点では少なくとも米田と佐々木氏の見方は一致していると私は思えたからである。
 言い換えれば、賢治は「おれたちはみな農民である」と高らかに謳い上げてはいるが、そのような強い連帯感が現実にははたして如何ほどあったのだろか、と私はますます不安になってきた。
 というのは、先に私が〝賢治は「百姓」になろうとしたこともなかった〟において導き出した、
 小作農のような「百姓」になることを当時の賢治はもともと考えていたわけでもなければ、なろうとしたわけでもなく、またならなかった。
が、どうやら間違っていなかったと言えそうだということに気付いたからだ。松田甚次郎には「小作人たれ」と強く「訓へ」た賢治だったが、自分自身はそのようなことは実は考えていなかった、ということにである。

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************この度「非専門家の調査研究・報告書」だからという理由で「宮城県図書館」から寄贈を拒否された『本統の賢治と本当の露』です***********
 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』
 本書は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
 1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
 例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。
 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。

〈はじめに〉




 ………………………(省略)………………………………

〈おわりに〉





〈資料一〉 「羅須地人協会時代」の花巻の天候(稲作期間)   143
〈資料二〉 賢治に関連して新たにわかったこと   146
〈資料三〉 あまり世に知られていない証言等   152
《註》   159
《参考図書等》   168
《さくいん》   175

 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813
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