〈『下根子桜の朝』平成23年11月11日撮影〉
【米田利昭の論文「宮沢賢治の手紙」より】次に米田は、大正15年12月12日付政次郎宛て書簡を引いているのだが、その解説文の中に
見合いも作業衣で通した(5)らしいが
〈駒沢女子大学「研究紀要」創刊号 平成六年十月、66p〉があり、この(5)の註釈が、
伊藤チヱの姪の伊藤ツルさんによると、賢治はチヱとの見合いにも普段の作業衣で水沢の伊藤家へ来たという。
〈同76p〉とあった。私はこのような出来事があったということを初めて知ったし、このことは賢治研究者の間にもあまり知られていないはずだ。さりながら、このような出来事が実際にあったということの信憑性は低くない。なぜならば、それは以下のような顛末があって私はこの論文「宮沢賢治の手紙――教師をやめて本当の百姓に、羅須地人協会の頃――」のコピーを貰ったからだ。
この論文のコピーを頂いたのは、遠野時代の露が住んでいた隣家の方からだ。
ある年の3月20日に高瀬露の取材の為に米田がその隣家を訪れて父が対応し、その際、父は米田にこう対応したという。
小学校か中学の頃ツユ先生から賢治との関係を聞いていたので知っていたことを話す。賢治と親しかったこと、賢治を大変尊敬していたこと、性格が明るい人だったことなど、思い出しながら話した。
と。つまり、賢治に関する論考には又聞き、伝聞、孫引き等を基にして論じているものが多いが、米田はこうしてわざわざ現地を訪れて取材しているから、信憑性は低くないと判断できたし、同じように米田はチヱの姪のツルにも直接取材した上での註釈だと判断できるからだ。逆に言えば、賢治とチヱのこと、特に二人の「見合い」に関しての「通説」はそのまま鵜呑みにすることは危険かもしれない。
それから、同書簡に関わって、米田はこんなことも述べていた。
新交響楽協会へ音楽の先生を訪ねて試験されたところ、〈わたくし〉が初めは恐る恐る、とうとう十六頁弾ききると、〈先生は全部それでいゝといってひどくほめてくれました〉は嘘だろう。賢治はセロは下手だったという。オルガンも上手だったとは誰も言っていない。
〈同66p〉このことについては、私も以前に例えば、〝賢治の楽器演奏技能(後編)〟において、
(音楽の先生の前で弾いたオルガンについては)賢治にはちょっと気の毒な気もするが、「先生は全部それでいゝといってひどくほめてくれました」は賢治のついた嘘であり、方便であったということがこれで明らかになったということである。
と「非専門家」の私ではあるが断定したことがあったので、あれでよかったのだと安堵した。それと共に、専門家がこう仰っているのだから、今後はこの断定に従って賢治を論じてもいいのだと確信した。「賢治はセロは下手だった」と、である。だからこそ、延いては、あの名作『セロ弾きのゴーシュ』が生まれたのだと。続きへ。
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************この度「非専門家の調査研究・報告書」だからという理由で「宮城県図書館」から寄贈を拒否された『本統の賢治と本当の露』です***********
賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』本書は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。
〈はじめに〉
………………………(省略)………………………………
〈おわりに〉
〈資料一〉 「羅須地人協会時代」の花巻の天候(稲作期間) 143
〈資料二〉 賢治に関連して新たにわかったこと 146
〈資料三〉 あまり世に知られていない証言等 152
《註》 159
《参考図書等》 168
《さくいん》 175
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