みちのくの山野草

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「産業組合とは何か」より

2020-11-19 12:00:00 | 甚次郎と賢治
《『昭和戦前・戦中期の農村生活』(板垣邦子著、三嶺書房)》

 今回は、『昭和戦前・戦中期の農村生活』(板垣邦子著)によって「産業組合」について学びたい。というのは、先に信用組合とか販売組合、購買組合はたまた購買組合という組合が登場したが、その中身を知りたかったからだ。ちなみに、板垣氏は、「産業組合とは何か」という項において、
 一言でいえば産業組合とは、現在の農業協同組合(農協)の前者といえよう。産業組合は…投稿者略…資本主義経済組織の中で、「中産以下人民」の利益を守るために協同するというもので、品川弥二郎、平田東助らの官僚がドイツで立案した。「組合員ノ産業又ハ其ノ経済ノ発達ヲ企図スル為」に、資金の貸し付けと貯金の便宜を与える信用組合、組合員の生産物を売るための販売組合、必要な物を買い入れるための購買組合、必要な設備を利用するための利用組合の四種類の組合があった。
            〈『昭和戦前・戦中期の農村生活』(板垣邦子著、三嶺書房)3p〉
というように、それぞれを簡潔に説明していた。これで、私にもこの四種類の組合の中身が少しイメージできた。さらに板垣氏は、次のように続けていた。
 産業組合は官庁の保護と監督の下に育成されたが、本格的な発展は日露戦争後からであった。明治三八年には大日本産業組合中央会が創設され、これが明治四三年産業組合中央会となり…投稿者略…中央の指導機関が確立された。当時の大部分は農村部にあり、信用事業のみの組合が圧倒的だった。
            〈同4p〉
 そこで私は知った、この記述に従えば、当時の農村部での産業組合の実質的な機能・役割は、「資金の貸し付けと貯金の便宜を与える」協同組合だったのだ、と。

 それから、板垣氏はこんなことも続けて述べていた。
 第一次大戦後には産業組合は全国に普及し…投稿者略…(大正一四年の)農業者組合の農家戸数に対する比率は四八%であった。商品経済の農村への浸透により、販売、購買組合が成長したこともめだっている。主要販売品目は生糸と米、主要購買品目は肥料で、その他日用生計品となっている。…投稿者略…
 産業組合は、昭和一八年農業団体法により農会など他の農業団体とともに、食糧の供出、肥料など資材の配給、生産統制、労働力統制という戦時統制を強力に行うために設立された農業会に統合された。農会は明治三二年公布の農会法によって定められ、農業の発達と・改良を目指すことに始まり、地主的な農政運動を展開した団体である。産業組合と並ぶ戦前の主要農業団体の一つであった。農会は日中戦争後は産業組合よりも先に農業統制機関として統制事業に協力していた。農業団体法により二大団体である農会と産業組合が農業会に一元化され、戦時統制を担った後、昭和二二年公布の農業協同組合法にもとづいて発足した農業協同組合(農協)に農業会の機能と財産がけいしょうされていった(三浦虎六『協同組合史』・全国農業協同組合中央会・昭40、『新版協同組合事典』・家の光協会・昭61、他)。
            〈同4p~〉
 この記述によって、農業団体の発足・統合などの流れのあらましが分かってきた。それから、「農会」という用語には今迄しばしば出会ってきたが、それが「地主的な農政運動を展開した団体」であったということを初めて知った。
 最後に、何となくわかってきた大事なことが、「戦時統制を強力に行うために設立された農業会」の設立が昭和18年であれば、やはり、「時流に乗り、国策におもね、そのことで虚名を流した」と松田甚次郎が一方的に揶揄される根拠はやはり希薄だということである。それはとりわけ、昭和18年頃の甚次郞の体調はおもわしくなく、同年8月4日に甚次郎は急逝したからである。

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