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《『日蓮主義とはなんだったのか』(大谷栄一著、講談社)の表紙》
さて、次は「上京、創作、妹の死」という項からである。ここには、よく知られている、
・父親と激しく対立
・大正九年十月、賢治は正式に国柱会に入会、
・保阪にも日蓮主義への帰依を迫った
・翌年一月二十三日家出して上京
・国柱会訪問
・高知尾から「法華文学ノ創作」を勧められた
・同年(大正十年)八月に帰郷するまで、本郷に下宿し印刷所で校正係<*1>
・国柱会で『天業民報』の発送作業等の手伝い
・同年十二月稗貫農学校教員
・翌年十一月二十七日同信の妹トシ結核で死去
・国柱会の会員として「国性芸術」の創作に励む国性文芸会員としても活動
〈『日蓮主義とはなんだったのか』(大谷栄一著、講談社)307p~〉・大正九年十月、賢治は正式に国柱会に入会、
・保阪にも日蓮主義への帰依を迫った
・翌年一月二十三日家出して上京
・国柱会訪問
・高知尾から「法華文学ノ創作」を勧められた
・同年(大正十年)八月に帰郷するまで、本郷に下宿し印刷所で校正係<*1>
・国柱会で『天業民報』の発送作業等の手伝い
・同年十二月稗貫農学校教員
・翌年十一月二十七日同信の妹トシ結核で死去
・国柱会の会員として「国性芸術」の創作に励む国性文芸会員としても活動
ということなどが紹介されている。そして最後に、
しかし、けっきょく、保阪や政次郎の入会は実現せず、賢治の日蓮主義的な法華信仰は次第に影を潜めていくことになる。
〈同308p〉と大谷氏は断定していた。
そこで気になったことが二つ。一つ目は、改めて、やはり約7ヶ月だなということ。つまり、1月に家出をして帰花したのが8月だから、その期間は約7ヶ月ということがである。
そして二つ目は、「賢治の日蓮主義的な法華信仰は次第に影を潜めていくことになる」ということがである。つまり、いつ頃からどの程度まで潜めていったのであろうか、と。
<*1:投稿者註> 鎌田慧著『反骨――鈴木東民の生涯』(講談社)の帯に、
徹底した反ナチス報道で追放され、なお軍部の言論弾圧に屈せず、敗戦後には読売新聞大争議を指導、のち釜石市長として反権力・反公害運動を展開、一生時流に媚びず反骨に生きた男の破天荒の生涯!
と書かれている鈴木東民は「本郷に下宿し印刷所で校正係」をしていた賢治を識っていたという。それは、『宮澤賢治研究』(草野心平編、筑摩書房、昭和33年)所収の「筆耕のころの賢治」の中で、 宮澤賢治と識つたのは、一九二〇年の初冬であつた。そのころ東大の赤門前に「文信社」という謄寫屋があつた。そこの仕事場で私は識り合つたのである。…投稿者略…アルバイト學生だつたわたしはそこヘノオトを貸して一冊につき月八圓、ガリ盤で切つた謄写の原稿の校正をして、四ペエジにつき八錢の報酬をうけていた。賢治の仕事はガリ盤で謄寫の原稿を切ることであつた。かれはきれいな字を書いたから、報酬は上の部であつたろうと思うが、それでも一ペエジ二○錢ぐらいのものだつたろう。この仕事を専門の職業としている人でも、一日に一〇ペエジ切るのは容易ではないといわれていた。…投稿者略…
そのころのかれは袴を必ずつけていたが、帽子はかぶらなかつた。今でこそ無帽はあたりまえのことになつたが、當時、袴をつけて無帽というのは異様に感じられたものだ。その袴の紐にいつも小さい風呂敷包がぶらさがつていた。最初、わたしはそれを辨當かと思つていたが、童話の原稿だということだつた。もしこれが出版されたら、今の日本の文壇を驚倒させるに十分なのだが、殘念なことに自分の原稿を引き受けてくれる出版業がいない。しかし自分は決して失望はしない。必ずその時が來るのを信じているなどど微笑を浮かべながら語つていた。そういうときのかれの瞳はかがやき、気魄にあふれていた。
〈『宮澤賢治研究』(草野心平編、筑摩書房、昭和33年)247p~〉そのころのかれは袴を必ずつけていたが、帽子はかぶらなかつた。今でこそ無帽はあたりまえのことになつたが、當時、袴をつけて無帽というのは異様に感じられたものだ。その袴の紐にいつも小さい風呂敷包がぶらさがつていた。最初、わたしはそれを辨當かと思つていたが、童話の原稿だということだつた。もしこれが出版されたら、今の日本の文壇を驚倒させるに十分なのだが、殘念なことに自分の原稿を引き受けてくれる出版業がいない。しかし自分は決して失望はしない。必ずその時が來るのを信じているなどど微笑を浮かべながら語つていた。そういうときのかれの瞳はかがやき、気魄にあふれていた。
と追想しているからだ。
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