みちのくの山野草

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「松田甚次郎先生追悼会」(昭和18年9月5日)

2020-07-31 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈資料集『松田甚次郎追悼文』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉

 前回の〝弔辞 宮澤清六(『「賢治精神」の実践』所収)〟において、何か変だと疑問に思ったのだが、そのもやもやの半分は解消した。それは、これは一体何故だろうと思って、この投稿のトップに掲げたところの資料集を見ていたならば、次のような資料があったからだ。
【追悼會次第(一八、九、五)】


【松田甚次郎先生追悼會ノタメニ 昭和八年九月五日】

 つまり、〝弔辞 宮澤清六(『「賢治精神」の実践』所収)〟の中のあの日付、
   昭和十八年九月五日
とはこの日にちのことだったのだ。どうやら、あの「弔辞」はこの追悼会の日に読まれたもののようだ。
 しかも、この「次第」の
   3.弔詞
には、清六の名も含めて、誰が読んだのかの記載がない。一方で、先の投稿〝「最後の手紙とその返事」 〟において触れたように、清六は松田甚次郎が亡くなった際に駆けつけることができなかったということだし、「私は苦しみ、時々考へが変わり頭が痛くなつたのでした」とも述べていることに鑑みれば、あの「弔辞」はこの次第に「3.弔詞」において読まれたものだが、それは清六自身が読み上げたものではなく、誰かによって代読されてものであるという蓋然性が高いことに気付く。それは、この頃の清六はどうやら心身共に疲弊していたと推断できるからなおされにである。もし本人が読んでいれば、そもそも追悼会での「弔詞」は最も重きをなす一つであり、「4.朗唱「雨ニモマケズ」菊池暁輝氏」と書かれているように「3.弔詞 宮沢清六氏」と書かれていたはずだからである。
 延いては、あの「弔詞(『追悼』所収)」も、せいぜい代読されたものであったであろうことが示唆される。それ日付が、
   昭和一八年八月
とだけなっていて、
   昭和一八年八月六日
とはなっていないからである。
 ちなみに、松田甚次郎の葬儀・告別式の案内は下掲のとおりである。

             〈資料集『松田甚次郎追悼文』(吉田六太郎編、吉田矩彦氏所蔵)より〉

 さて、さきほど「そのもやもやの半分は解消した」と述べたが、残り半分のもやもやはまだ解消できていない。何かがまだ引っかかっているからだ<*1>。そしてそれは、花巻でも行われた例の松田甚次郎の追悼式が何時行われたかを知れば、解決しそうだと直感している。

<*1:註> その後、確かなルートから、「昭和十八年九月五日」のこの「弔辞」は清六自身が献じたものではなくて、菊池暁輝が代読したものだということを教わった。やはり、清六は8月6日の葬儀の際も、この9月5日の追悼会の際も新庄には行っていなかった、つまり、参列も参加もしていなかったということになる。これでもやもやは更に半分に減った。つまり、あと四半分だけが残った。

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 私は非専門家。
 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。
 そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
 1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
 例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
 2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。
 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。
〈目次〉

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                      電話 0198-24-9813
             
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