みちのくの山野草

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仙台 山田二郎

2020-08-23 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉

   仙台 山田 二郎  
余り晴れた朝は、かへつて涙の流れるものです。今、静かに座して〝水五則〟を朗唱し、あなたの恩師、宮澤賢治氏の「雨ニモマケズ」を口吟むとたちまち憂態が湧きます。
昨年の十一月、西欧文化に毒され乍ら、典型的な知識人であるという自惚れに手のつけられなかつた従弟を、あなたにお願ひしやうとした時、あなたが寄せられた温情溢れる手紙や電報が机上にあつて涙を誘ひます。機を得ずしてあなたの御薫陶を享けさすことが出来ませんでしたけれども、従弟は今、中支の戰野に逞しく闘つてゐます。きつとあなたに喜んで頂けると思つてゐます。アジヤ解放の黎明近き銃後にあつて、日本農民精神の上に捨身決死、投身の弧を描いて逝かれたあなたに、衷心から感謝を捧げます。そしてあなたが導かれた夛くの方々の中から㐧二、㐧三のあなたが復活へられる日を待ち望みます。
             〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)35p〉

 さて、今回は仙台の山田二郎からの上掲のような「追悼」についてである。今まで宮城県からの「追悼」は引いてこなかったので、初めてのものだ。
 まず、この〝水五則〟だが、それは下掲のような内容である。
【水五則】

 ちなみに、これは『新庄市立図書館』の「松田甚次郎コーナー資料」をコピーさせて貰ったものであり、甚次郎の手によるものであろう。
 そして『土に叫ぶ』によれば、最上共働村塾の「終了鑑」は、
  塾生に贈つた終了鑑は、何を以つてしたか。それは「水五則」である。今もなほ塾長室に掲げ、自らの座右の銘ともして居る。
             〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)241p〉
ということだから、おそらく山田二郎は最上共働村塾の終了生であったのであろう。それ故に、山田は手のつけられなかつた従弟を最上共働村塾に入塾させようと甚次郎にお願いしたに違いない。そしてそれに対して甚次郎は温情溢れる応諾の返信をしてきたのであろう。もともと、甚次郎はとても優しい人物であろうことは分かっていたつもりだが、これで改めてそのことを私は確信した。

 なお、松田甚次郎が指導した花巻の南城共働村塾の修了証にも〝水五則〟が用いられていたということを、あの南城組合長の照井又左ヱ衛門語っている

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