新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
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ナラノヤエザクラ:奈良の八重桜(話題豊富な八重桜)   

2010-05-04 18:04:39 | 植物観察1日1題

一度見たいと思っていたナラノヤエザクラ:奈良の八重桜(バラ科サクラ属)が満開というので、快晴の5月3日、知人に奈良春日野近辺を案内してもらいました。
“いにしえの 奈良の都の八重桜 けふここのへに 匂ひぬるかな”小倉百人一首の伊勢大輔の有名な歌は知ってはいましたが、漠然とかつ単純に、昔奈良に咲いていた八重桜が今日はもっと見事に咲いているくらいに解釈していました。ところが最近Mc Millan氏による英訳百人一首(One Hundred Poets, One Poem Each、集英社新書)でこの歌が
The eightfold cherry blossoms
from Nara’s ancient capital
bloom afresh today
in the new palace of Kyoto
with its nine splendid gates!
と訳されているのを読み、もっと深い意味があることを知りました。
平安の昔、一条天皇の中宮・彰子が興福寺境内の八重桜の名声を聞き、宮中に移し植えようとして抵抗され、代わりに毎年八重桜の一枝が献上されることになります。その受取り役は本来は彰子に仕える古参女房の紫式部であるべきところ、彼女が意地悪して伊勢大輔にその役を務めさせます。受け取るときに歌を詠まなければならないので、新参の大輔に恥をかかせようとしたのですが、大輔は見事にこの歌を詠んで、喝采を博したという説話が残っているそうです。
九重は、八重・九重と語を重ねて見事に咲くさまと、禁中・皇居を意味する九重をかけたものとされています。
ところで、ナラノヤエザクラは、一般名称ではなく、ちゃんとしたサクラの品種だそうです。
諸説ありますが、一般にはカスミザクラが重弁化したものとされます。
花期は遅くて4月下旬から5月上旬で、つぼみは濃い紅色、花が開くと白に近い紅色になり、散り際にはまた紅色になります。花弁は楕円形で先端がやや深く切れ込みます。花びらの数はふつう20~30枚、ときには100枚近いものもあるそうですが、それほど厚物の感じがしない上品さがあります。
奈良県の県花であり、奈良市の花でもある“奈良の八重桜”は、今、におうがごとく盛りです