簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

四国遍路 尾崎の集落

2010-05-28 | Weblog
随分歩いたと思い時計を見ると僅か5分ほどしか経っていない。
段々に時間の感覚も距離の感覚も鈍くなってきた。
東海岸を行く国道は、この時間には日陰が多くなる。
その日陰に入るととたんに気温が下がり寒くなる。
相変わらず風も強い。



海岸線の先に集落が見えた。
「あの先に見えるのが尾崎の集落ですか?」
通りかかったジョギング中の男性に希望を持って訪ねてみた。
「いやあれは違う、あの先に見える岬を廻って、もう少し先に進んだところが尾崎だ。
集落の中の道が近いから左の道を行くといい」と教えてくれる。
随分歩いたような気がしていたが、後で地図を見ると佛海庵からはまだ1キロほどしか歩
いていない。
僅か1キロが、遠く、遠く感じられるようになって来た。

軒先で佇んでいた老婆が励ましてくれた。
尾崎の集落を尋ねると「まだ2キロほど先だ」と教えてくれる。
佐喜浜の港に臨む町中の道から、都呂の旧道を抜け、その先で再び国道55号に合流する。
ここまで来れば遠くに集落が見えるだろ・・との期待も虚しく、相変わらず見えるのは
青い海に迫る山、南下する国道だけ。
民家の姿は全く見えない。

足は悲鳴を上げている。
右足のマメは完全に潰れているようだ。
踵のマメは腫れ上がっているのだろう。
どうかすると激痛が突き上げる。
こんな右足を庇い続けて歩いてきたため、左足の甲の外側には疲労による鈍痛がある。



海に薄暗い帳が折り始めた6時過ぎ、はるか先に数件の建物が見通せるようになった。
今度こそ間違いなく尾崎の集落だ。
ようやく先が見えてきた。
42キロのゴールが近づいてきた。(続)

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