いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

のぞき窓

2006年11月21日 09時05分35秒 | 兎に角書きたいの!
 「アンネの日記」で知られるユダヤ系ドイツ人のアンネ・フランクが、オランダのアムステルダムに潜伏中、屋根裏の小さな採光窓から毎日眺めたクリの木が、来年1月にも伐採されるとの報道があった。
 1944年2月23日には、【私の好きな場所で、青い空、枝に水滴が銀色に光る裸のクリの木、カモメやそのほかの鳥たちが風に乗って滑るのを見上げています】と書いている。とそしてそのクリの木は樹齢が150~170年だと言う。
 毎月1回会合を開いている「あじさい会」がある。自分史1号を今年の8月に発刊し仲間は10名ほどである。女性の斉藤先生が毎回指導に来てくださり、自分の文章を朗読しその感想、意味のつながりなど自由に聞き答え和気藹々とやっている。その文章のうち仲間の一人が発表した一文に次のような内容のものがあった。
 【赤いりっぱなとさかのついたにわとりには、つつかれもしたが、畑に行って、ほうれん草や小松菜などを採ってきては、金網の隙間から差し込んで与えた。   がつがつ食べるのや、最初は引っ込んでいてあとから食べるのや、けんかばかりしているのや、おっとりとしているのや、いろいろなにわとりがいた。だから、つい声をかけたくなった。よき私は、にわとりとおしやべりをしていた。それが無性に楽しかった。                               「のうちやんのトイレはながいな」と言われた。それには訳があった。私はトイレの前の小さな節穴から、にわとりを見るのが好きだったからだ。小さな穴から世界が、表の金網越しに餌をやりながら見るのとは、あまりにも違うので、おもしろかった。                                  大人になってから、あの小さな節穴の眺めが懐かしくて、そのときにはあまり使われていなかった外トイレに行って節穴を捜したが、どこにもなかった。     あれは、記憶違いだったのか、とがっかりしながらもなお捜しつづけていたら、下の下、身をかがめてはいつくばるぐらい下の方にその穴はあった。こんな下の穴からながめていたのかと思うと、おかしかった。 】とつづれれている。
 小さな空間を通して物事を眺めると言うことの世界もまた異なものである。毎日の現実と思い出の中にある風景、感じることは同じようだ。物事を感じるのはどのような場所でも環境でもその人の好奇心の度合いによって広く深く光を吸い込んでいくものだと感じた、アンネの屋根裏であった。

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