いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

いさかいのあとで妻に

2008年02月14日 08時37分01秒 | 心に留めた言葉
 
 もしも私がただしいのならそれこそ
 あなたもまた正しいことの証しだと 
 いさかいのあとで
 自分にもあなたにも何ひとつ望まずに
 そう思ったその時の気持ちは祈りに似ていた
 あなたが米をといでくれるのなら
 私は皿を洗おう
 そんな面白くも可笑しくもないことで
 一日が暮れてゆくのだとしても
 人の思いにはかかわりなくいつの世にも
 男と女に未来がありその未来から
 私たちもまた生まれてきたのだ
 もったいないことだと思わないか
 花の木の影が地面に落ちて
 子等は犬を追って林を駆けている
 いさかいにもむつみあいにもある深い闇を
 手さぐりで進むほかないのだが私の手は
 いつもあなたの柔らかい下腹に触れていて
 世界はそこからおぼろげに形を成してゆく

      谷川俊太郎作詩


       
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