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「黒い画集 あるサラリーマンの証言」

2007年05月19日 | ★人生色々な映画
松本清張「黒い画集」から

監督は堀川弘通、
助監督に恩地日出夫、
カメラは「野良犬」「蜘蛛巣城」など黒澤映画でおなじみ中井朝一
脚本が橋本忍 

中堅どころの繊維会社課長石野(小林桂樹)は
持ち家で妻(中北千枝子)、子供二人と平和に暮らしていた。

会社が終わるとビアホールでちょっと一息入れて
パ××コ屋で50円を資本に暇つぶし。
「味の素」とたばこをしとめる。
その後向かった先は自宅ではなく、
新大久保の裏通りにある小さなアパートだった。

この男には部下の、
若い愛人(原知佐子)がいるんですねえ。

アパートの玄関のドアを開けるとすぐにちゃぶ台っていう環境、現実感がある。
別に貧しいっていうんじゃなく、OL一人暮らしとしては普通だったのだろうなあ。

冒頭のナレーションにこと細かく
主人公の月給、ボーナスの額が説明され、
庶民の生活レベルが浮かび上がる。
このように
一気に物語に引きずり込んでしまうのも橋本忍の妙技。

男は浴衣に着替えて女としばし
いちゃいちゃした後部屋を出る。と、そこで
ばったり家の近所の男に会い
思わず会釈してしまったことから
話はややこしい方向に進んでいく。

男は会社でも如才なく立ち回り、平凡ながら暮らしも安定している。
一見堅実そうな人物でも
ちょっと気がゆるむと人間というのは、隙が出来てしまうのだろうか。

その後ついた嘘によって
自らの首を絞めることになってしまう。
一瞬の判断が運命を左右する。

人間の
少しの心の弱さ、甘さ、隙を
巧みに事件にからめていくのは松本清張の名人芸だ。

小林桂樹はこういう役が本当に上手い。
映画館に行ったという
アリバイを主張するために
映画のプロットを必死に説明するシーンが秀逸だった。

行き届いた配役が嬉しい。
ちょとだけ出る担当刑事も西村晃だったりして、
あんな刑事だったら、とても
逃げられないだろうなと思わせる。

1960年 監督 堀川弘通
脚本 橋本忍
原作 松本清張
撮影 中井朝一
美術 村木忍

*映画の中のイイおんな:
原知佐子:スレンダーで硬質の美しさをたたえております。
フランスの女優さんのように
年を重ねても光っている人だと思っていたけど
この映画では若さいっぱい。
無邪気なOLをはじけるように演じていて新鮮だ。
実相寺昭雄監督の妻としても知られていますね。

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