邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「九十九本目の生娘」

2006年09月17日 | ★恐怖!な映画
レンタルビデオ屋にも無く、
やっと見ることが出来た映画。

題名からして

怪しい老婆がキャンプ中の若者を襲い
女の子が連れ去られてしまう。

この老婆が
新東宝 
亡霊怪猫屋敷
怪猫お玉が池
でお馴染み、怪奇な婆さんスター五月藤江だ!
出だしからこの人の顔を見ただけで
嬉しさで笑いがこみあげてきたが
今回は八面六臂の大活躍で、主役級の扱い!
実に祝着至極であった!

山歩きをしていて
いきなり髪を
桃割れに結った女の子が飛び出してきたら
びっくりしますよね?
隠れ里のような集落に住む人々の
江戸時代のままの暮らしぶりやその特異な姿が
いやおうなしに好奇心をかきたてる。

10年に一度の奇祭のシーンは
興奮状態の村おさ、吊り下げられた裸同然の娘たち、
奇怪な面をつけ太鼓を打ち鳴らす男たちが
畳み掛けるように映し出され、
異様な緊張感をかもしだしていた。
村おさの目がぎらぎらと異様に光り、怖い!

太鼓の音というのは、
人の気持ちを高揚させる不思議な力を持っている。
その場のテンションは最高潮に達し、
見ている方も危うくトランス状態に
陥るかと思いました。
あのまま5分くらい続いたらどうなっていただろう?と
思うと空恐ろしい。

恐るべし、新東宝!

「火づくり祭」に奉納されるという
なんと!処女の生き血で鍛えられていた。
祭りのために猟奇殺人が行われ
血塗られた妖剣が奉納されていたわけである。
そしてついに最後の九十九本目に至って問題発生。
「失敗した!」
娘の血は穢れていたのだ!
お色気ムンムンの三原葉子(ちょい太め・順子ではない)
では当たり前というべきだろうが、それを知って
最高にムカつく村おさ!怒り爆発。

代わりの生娘をみつけたときの老婆の顔が
獲物を見つけた「妖猿」のようで場内大爆笑!
どこか「いや~ん」な新東宝。

映画館で鑑賞する幸せを感じた瞬間だった。

宮司役の沼田曜一は珍しく大人しい役でしたが、やはり上手い。

若き菅原文太はけっこう目立つ警官役で
出演してますが、、
あまりにも初々しすぎてとまどいました。

絶対的な「村の掟」の恐ろしさは人心を呪縛する。

毒々しい絵の具で塗りたくられたような
(といっても白黒ですが)
猟奇風味たっぷりの映画に、
大満足で円山町を後にした。
(どうしても円山町が気になる)

曲谷守平監督作品
脚本 高久進 藤島二郎
原作   大河内常平
撮影   岡戸嘉外
音楽   井内久

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「獣人雪男」

2006年09月16日 | ★恐怖!な映画
構成よし
撮影よし
特撮よし
演出満点
脚本もよし、
雪男はもちろんよし!哀愁あり!

こんなにワクワクしたのは久しぶりだ。

シートに腰を下ろした瞬間
映画館の暗闇で胸を躍らせた子供の頃を思い出した。

開演と同時に
雪山をバックに書かれた「獣人雪男」のロゴを見た途端、
興奮は最高潮に!

壮大な雪山のロケと
キッチュな山小屋などのセットシーンがバランスよく組まれ、
なんともはや・・・素晴らしくて絶句

山の天気は変わりやすく
2人の仲間が遭難してしまう。

彼らが残したメモには
「恐ろしいものをこの目で見た・・」と記されていた。
宝田明、中村伸郎、河内桃子らが
捜索に向かうが、悪徳動物ブローカーたちも絡んで
ややこしいことに・・

案外あっさりと登場する雪男は
その風体といい隠れ家といい、
「雪男」はこうあって欲しい!という期待に
十分答えるものだった。
加えておまけ(子供)もついている!!(喜)

その怪物を山の主とあがめる集落には
異形の民が住んでいた。
後年、姉御役が多かった根岸明美がまだ初々しい娘っ子
まぶしい太腿をさらしている。
村おさに
「七人の侍」の爺様、高堂国典が扮し貫禄十分だ。

アナログな映像に温かみがあり、
無骨な獣人の顔も味わい深い。

監督は本多猪四郎 特撮は円谷英二、
そして
助監督に岡本喜八の名がある!

恐ろしげな姿形のため、怪物は恐怖の対象だ。
が、人間には怪物よりも卑劣で
醜い心を持つものがいる。

我が物顔で自然破壊してはイカン!
のである。

集落の描写等がひっかかって
これも地上波放送や
DVD化は難しいかもしれない。
でも傑作であることには変わりありません。

1955年 本多猪四郎 
原作 香山滋
脚本 村田武雄
撮影 飯村正 
音楽 佐藤勝
美術 北辰雄

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「水戸黄門漫遊記」

2006年09月15日 | ★痛快!な映画
お馴染みの話だが、
水戸黄門に森繁久彌とくれば見ずにいられない。
アナウンサー出身の森繁は
カツゼツが素晴らしく良いので、
時代劇の台詞もまるでその時代に生きた人のように
流れるようにこなす。
天下の副将軍役であろうともすんなりきまる。
加えて素晴らしい表現力で
何でもない台詞も実に聞かせる。

もちろんギャグも!

脚本は社長シリーズ、クレージーシリーズの笠原良三だから
ノリはあくまでもあくまでも軽い。

まあ、月形龍之介の水戸黄門とは
対極にあると思ってください。

ご老公の、気ままな「何でもみてやろう、やってやろう旅」
のお供(宝田明と高島忠男)は
当初は「すけべえ、かくべえ」と名づけられたが
それはちょっと勘弁してください・と、助さん、格さんに落ち着いた。
出だしからすでに可笑しい。

二人とも
長身痩躯のイケメン(だった)ながらも
ギャグもしっかり押さえて東宝花形スターの匂いを撒き散らしている。

絶頂期のコント55号や
てんやわんやなどお笑い陣の絶妙な掛け合いに
中村勘九郎、三木のり平
池内淳子、草笛光子など脇もにぎやかに揃って
実に華やかな東宝らしい時代劇。

監督は千葉泰樹。

浦辺粂子
女郎屋のおかみが個人的にツボだった。

これは一作限りで
シリーズにはならなかった。森繁、この頃忙しすぎたのか。
森繁黄門をもうちょっと見たいような気持ちにさせるのもさすがである。

1966年千葉泰樹 監督作品

脚本 笠原良三
撮影 長谷川清
音楽 佐藤勝 美術 中古智

「水戸黄門比べ」の記事

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「座頭市と用心棒」

2006年09月12日 | ★ぐっとくる時代劇
「フレディVSジェイソン」とか
「エイリアンVSプレデター」
など、
企画ものってたいていコケますよね、
それがこの作品に限っては・・超がつくほど面白い!

だって岡本喜八がメガホン&脚本も書いているのだものね。

冒頭、嵐の中にいる市を見た途端、
これはすごい!」と誰もが思うだろう。
凄まじい殺気と恐ろしいばかりの美しさに満ちているのだ。
カメラは宮川一夫。

「もう地獄は嫌だ。」

いいですねえ~そうだそうだ市さん!
市の頭は「不知火検校」を思い出させる剃髪。
シリーズ最初の頃はたしかこんな風につるつるだったはず。
このほうが断然凄みが出る。

風がびゅうびゅう吹く町が似合いすぎる「用心棒」は
黒澤の「椿三十郎」「用心棒」から抜け出してきた三船敏郎
キャラ設定といい、台詞といい、顔で人をぶった斬るところといい
オマージュ的な匂いがぷんぷん。

ファンにはこたえられない。
ただし呼び名はあくまでも
「せんせい」「しぇんしぇい!」だ。

大暴れするシーンの音楽を伊福部昭が「ゴジラ」のように
ドラマチックに彩ってくれているのが嬉しい!

かつて平和だった里は荒れ果て、
真っ青な顔の殺し屋岸田森
同じく顔面蒼白夜叉顔メイクの米倉斉加年
修羅場もたっぷり魅せるさすがの滝沢修
ミスター「肉弾」寺田農
濃いぞ細川俊之、おおアラカンも出ているし・・
くんずほぐれつの地獄絵が繰り広げられる。

赤一点に
梅の花のような若尾文子

岡本喜八の得意とする
大人数による殺陣シーンもたっぷり用意されており、
「化け物」と「けだもの」、
「座頭市」と「用心棒」、どっちのファンも楽しめる娯楽作に仕上がっている。

餓鬼が争う、
この世の地獄のようなシーンの音楽にもうなった。
市は悪くなきゃねえ。そして乾いたタッチが良い!

この映画は残念ながら地上波では絶対放送されないであろう。
放送禁止用語だらけなのですから。

なにしろパワーがある。

こういう映画を見ると元気が出る!

*映画の中のイイおんな*
若尾文子:文子さまも花である。崩した着物の着方が仇っぽく、
寒々しい荒野にぽっと咲く紅い梅の花のようである。
振るいつきたくなるような色香を漂わせていまっせ!

1970年.  岡本喜八 監督作品
脚本   岡本喜八 吉田哲郎
撮影   宮川一夫
音楽  伊福部昭
美術 西岡善信

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「散歩する霊柩車」

2006年09月07日 | ★人生色々な映画
その映画館
渋谷・円山町のラブホ街にある。

「中年の男性に寄り添う、伏し目がちの若い女、
訳ありげなふたりが早足で駅の方に急ぐ・・・・」そんな
アベックももしかしたら見ることが出来るかも・・

てな想像は、通りに足を踏み入れるやいなや、あっさり打ち砕かれた。
学生のグループがワイワイ騒ぐ横を
若い男女が爽やかに談笑しながら、スタスタと通り過ぎていった。

あまりの屈託の無さに泣きて三歩歩まず・・

こ、こんなの円山町じゃないよう!
もっとこう・・・何かあるでしょう???
後ろめたさとかドロっとしたものとか・・

今どき「上村一夫」の劇画に出てくるような
情念の世界を期待した私がバカだったのだろう。
「アベック」という言葉だけで「すでに昭和」だし。

少しばかりへこんだ気持ちは
散歩する霊柩車」が始まって
すぎ江(春川ますみ)のシュミーズ姿(これも昭和)を見た途端、
すっきりと立ち直った。

なんてビートがある肉体なのだろうか。

ワンピースにギュウギュウ押し込まれた
はちきれんばかりの体とリキッドアイライナーで縁取られた目。

春川ますみの存在がメインヴォーカルだとしたら
ダンナのタクシー運転手
ミスター悪党、西村晃は(またの名を黄門様とも言う)
その歌声に絡むヘビーなテナーsax、いやウッドベース・・だろうか??

思わずこの名コンビによる「赤い殺意」を思い出して
にんまりしてしまったが、
うかうか聞き惚れてばかりもいられない。
しこたま毒がある音楽なのだから。

二人は、
「すぎ江が死んだ」と偽って霊柩車に乗り込み、
かつて関係があった男たちの元へ金をせびりに行く計画を立てる。

洒落た題名「散歩する霊柩車」は樹下太郎の原作。

欲と欲が絡み、もみ合い破滅していく人々を
ブラックなユーモアをたたえて描く。
監督は「吸血鬼ゴケミドロ」の佐藤肇。

霊柩車の運転手は面白い役回りなのだけど
意外な人選で新鮮だった。

脇は渥美清、金子信雄、曾我廼家明蝶、
加藤嘉、小沢昭平、花沢徳衛、岡崎二朗
大辻伺郎、浜村純と、不思議なくらい豪華。

辛口な展開で緊張した気分は
ラストの西村晃の歌で一気に開放される。
岩谷時子作詞、西村晃作曲のイカス歌。
ぜひCDが欲しいものだ。

浮かれ気分もすぐに吹っ飛ぶブラックなオチも用意されていて
それもまた最高だった。

*映画の中のイイおんな*
春川ますみ :豊満、グラマー、いい響きですねえ。
最近聞かれなくなった言葉だけど。
針で突くとぱちんとはじけ飛びそうな体を
ジッパーで洋服に押し込めるシーンが良いです。
ついでに小柄な西村晃もはじけ飛びそうです。
太く黒く、目じりでキュッとあがるアイラインが
60年代テイストでステキ。
ハイヒール履いて歩く姿がコケティッシュ。

監督 佐藤肇
脚本 松木ひろし 藤田伝
原作  樹下太郎  撮影   西川庄衛
美術 進藤誠吾
音楽   菊池俊輔

主題歌 「散歩する霊柩車」
作詞 岩谷時子
作曲   西村晃
編曲  菊池俊輔
唄 西村晃 春川ますみ

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