邦画ブラボー

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「新・平家物語」

2006年09月05日 | ★ぐっとくる時代劇
市川雷蔵、映画界に入って一年目、
ご本人によれば
「タナボタ的に舞い込んできた」と言う
(『雷蔵・雷蔵を語る』より)
この役を、力の限りに演じていてとても爽快。

溝口映画の主役、それも平清盛役に抜擢されたことは
当時たいへんなインパクトがあったようだ。
映画一年生といっても
すでに11本もの映画に出演していたというのだからびっくり。

だがこの作品で
映画俳優としての自覚がより一層強まったことは間違いないと思う。
監督から学んだものも大きく
「役者は待ち時間に演技の工夫をするべきだ」と言う言葉も肝に銘じたそうだ。

血気に逸る清盛の姿と
俳優として大きく羽ばたこうとしている雷蔵がダブる。

とかく、作りこんだ太い眉毛が取り沙汰されがちだが、
間違いなく太い!太過ぎますわ。

が、そんなこともどうでもよくなってくる
(というか慣れてくる)スケールの大きさ、面白さだ。

物語は、若き清盛が自らの出生の秘密に悩む姿と平行して
朝廷に使われ、山門にでかい顔をされていた武士の地位を引き上げ、
固めようとする段階を描いていく。

いわば、壮大な平家物語の序章だ。

公家の傲慢、比叡山の僧兵たちの横暴ぶりが
描かれ、今に見ておれという清盛の
たぎる思いが前面に出ている。

この清盛主人公で、続きが見たかったものである。

溝口作品には珍しいカラーのこの映画には、
衣装の遊びが随所に見られて楽しい。
溝口監督は時代考証に厳しかったが、調べに
調べた上で「あえて」映画的うそを取り入れたという。

清盛が参殿する際まとっているあざやかな衣裳や
母上のどっきり胸ポロリン衣裳なども目をひく。
ネグリジェのようなセクシーな寝巻きにもびっくりした。

木暮実千代は
「雪夫人絵図」でも、
蝶の羽のような薄物着物を
着せられていた。

溝口監督は真面目なようで
なかなか隅におけない人物だったと私はにらんでいる。(???)

堅い題名でもけっして難しいことはない、
極上のエンターテインメントなのであった。

手に手に松明を持った僧兵の大群、優雅な公家の野遊び
京の都の活気あふれる様子など、
まるで歴史絵巻が目の前で繰り広げられるようで壮観だ。

*映画の中のイイおんな*
木暮実千代:欧米のドレスのように
胸元が開いた着物って、あったんですね!
燃えるような橙色の薄衣を官能的に着こなし
元白拍子の色っぽい悪妻を演じきっております。
妻、母としてより、
ひとりの女として生涯を全うする「母上」でした。

1955年 溝口健二 
原作 吉川英治 脚色 依田義賢 成澤昌茂 辻久一
撮影宮川一夫  音楽 早坂文雄  美術 水谷浩
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