邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「赤線地帯」

2006年09月01日 | ★人生色々な映画
最初に耳に入って来るのは
一風変わった
黛敏郎の音楽だ。
女の歌声のような、ふわふわした実験的な音で
浮かび上がってくる赤線地帯。
ここでも音楽が効果的に使われている。

そしていよいよ
周り舞台から次々と現れるような女たちの登場場面に
ワクワクしないではいられない。

美術監督の水谷浩
この世とは思えないような異次元世界を表現した。
「夢の里」とはナイスなネーミングだと思う。

息子と暮らすのが夢のゆめ子(三益愛子)、
「どうや、八頭身や」のミッキー(京マチ子)、
お金しか信じないやっちゃん(若尾文子)、
通いのママさん娼婦ハナエ(木暮実千代

愛すべきメンバーたち、みな大傑作

独特の「業務用」ファッションにも注目したい。
眼鏡に着物がこれほど粋なのは
栗島すみ子(流れる)と木暮実千代くらいではないか?

売春禁止法案が国会で審議されるというので
戦々恐々としている売春宿の主人に
進藤英太郎、さばさばした女将には
これ以上の適役はいない、沢村貞子。

「うちは吉原の頃から続いているんだ。
必要ない商売なら300年も続くわけがないんだから」
と、見回り警察官ともナアナアの関係。

浦辺粂子のまかないおばさんは
花街ベテランのしみじみイイ味を出している。

入れ替わり立ち代り現れる人物たちの絡みも最高。
人間臭さがムンムン立ち昇ってくるような群像劇である。

一見割り切って稼いでいる女たちだが、
それぞれのっぴきならない事情を抱えていた。

溝口監督は最初どこかユーモラスに
女たちを描いていくが物語は徐々に
シビアに展開していく。女たちにくっついている男たちが
みな不甲斐ないのもバラされていく。

溝口は平安時代、元禄時代、昭和と舞台は変わろうとも、
しょうもない男を、
時に身を犠牲にしてまで愛し、
盛りたてようとする女たちに深い敬意と愛情を感じていたと思う。

そうでなければあんなに女性を美しく哀しく撮れるわけが無い。

*映画の中のイイおんな*
こりゃ~沢山いますばい:デラックス版

京マチ子
この人は洋装和装どっちもいいけど「どや、八頭身や」のミッキーは
米軍オンリーあがりということで
バリバリのアメちゃんスタイルです。
高く結ったポニーテールで化粧はど派手。
ダイナマイトのような女です。
若尾文子:男がボロボロになるほど
翻弄してしまうやっちゃん。なんたる魅力!
しどけない半纏の羽織り方からしてお手本にしたい。
木暮実千代:通いのママさん娼婦、「眼鏡に着物」をやるなら「赤線地帯」のハナエか栗島すみ子を参考にしたい。
くたびれた洋服から一転、
てれてれした着物に厚化粧の仕事姿に変身するところが見ものです。
三益愛子:はっきり言ってコスプレ系。私は好きですが。
あまりの姿に息子も逃げ出す!?

1956年
溝口健二  脚本 成澤昌茂  撮影 宮川一夫 音楽 黛敏郎  
美術 水谷浩
ブログランキングへ