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「赤い殺意」(1964年版)

2005年04月05日 | ★人生色々な映画
映画の中の三角関係というと
「死んでもいい」もそうだったように
間男=女に夢中 亭主=女に夢中 女=どっちでもない

・・という構図が思い浮かぶ。

男たちは女に執着し、争う。
女は男たちに戦わせ、勝った方と一緒になる。
これって・・・動物と同じ生態だ。

今村昌平監督作品の「にっぽん昆虫記」で
ずばりインセクト・ウーマンが生き抜いたように、
この「赤い殺意」でも男を死なせ、夫を裏切っても、
のほほんと図太く生き抜く女が描かれている。

いったいこれは悲劇だろうか・それともコメディなのか。
昔見たときはエロティックな場面が衝撃!だったが、
今回見たらブラックな、ばりばりの喜劇に見えてきた。

雪国の湿った空気・因習に満ちた風土。暗い家の中。

夫の留守中に忍び込んだ露口茂に犯されてしまう主婦春川ますみ。
電灯が大きく揺れ、ふすまが倒れる。
激しい暴力にたじろぐますみ。(以下ますみ)

男が去った後
「死なねばならない」
電車に飛び込もうとするが死ぬに死ねないますみ。
死ぬつもりだったのに帰るとご飯をぱくぱく食べてしまう。

男は女を執拗につけまわす。

茂(以下茂)は場末のストリップ小屋のバンドマン。
死の病に冒されている。
生きている証を求めるようにすがりつく茂が哀れだ。

ますみは拒みながらも茂と再び関係を結んで
「私ってなんて不幸な女なんだろ」とつぶやき、
さらに食べる!

真面目になればなるほどどこか可笑しい。
春川ますみの肉体はある意味、叶姉妹を抜いていると思う。

夫西村晃が、くたびれた愛人(楠侑子)の部屋で憩う場面もリアルだ。
「腐れ縁」という言葉はこの二人に良く似合う。
晃は神経質で小心で吝嗇でそこそこ好色で病弱で口うるさい。(悪口三昧)

春川ますみ・西村晃・露口茂・このぐにゃっと曲がったトライアングルが素晴らしい。
何もかも包み込んでしまう、女という生き物。その生命力が素晴らしい。

エロティックで哀しくて滑稽な物語。
ポン!と突き抜けた明るさ、ドライなユーモアに感嘆する。
エネルギッシュな作品だ。

1964年 監督 : 今村昌平 原作 : 藤原審爾 脚本 : 長谷部慶治 / 今村昌平

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