邦画ブラボー

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新藤兼人の「触角」

2007年10月14日 | ★愛!の映画
新藤兼人監督・脚本による
精神的近親相姦ともいえる濃密な心理劇。
ギリシャ悲劇チックな台詞も入る。

はっきり言ってキモチワルイお母さんと息子の過剰な密着。

高名な画家の未亡人(乙羽信子)は
忘れ形見である息子(大丸二郎)と海辺の瀟洒な家で静かに暮らしている。
そこへ全くの他人である、若い女八重(太地喜和子)が入り込むことで
平和な生活のバランスが崩れていく。

こういうパターンは「鬼婆」でも見られた。
それなりに調和している世界に入り込んでくる脅威。

言葉に表さないまでも母子の脳裏には甘い、
密やかな「思い」が渦巻いている。

すぐに何かを感じ取る八重。
こういう気配って、敏感な女だったらすぐわかりますよねえ。
二人を見る「目」がピカピカ、きらきら光ってイイ!

太地喜和子は濃厚な色気が発酵し始める(?)直前。
すっきりとした均整のとれたプロポーションで、
無邪気で感性豊かな女の子を清潔に演じている。
夏の太陽と海が良く似合う、健康的なイメージ。

晩年の匂うような色気もよかったけど、
いたずらっぽい動物のようなたたずまいが素晴らしい。それと
演技がうま~~い。大変な才能を感じる。

後半になって
ドロドロした葛藤の中に反戦思想も盛り込まれ、
問題はもっとややこしくなる。
母親そっくりの娼婦(乙羽の二役)が息子の前に現れるのだが、
顔半分がケロイドでただれておるのだ。
このあたりの禍々しさは
さすが新藤監督と、汚れ役どんとこいの乙羽サンである!
乙羽信子は惜しげもなく裸身もさらけ出していて
ど根性に恐れ入る。

また書いてしまうけど、
たまらなくおどろおどろしい作品になるところ、
太地の溌剌とした魅力が我々を救ってくれる。

時折挟まれるシュールな映像、
妙にシャレた?音楽もあやういバランスを保つことに
一役かっていることも付け加えよう。

1970年
監督 新藤兼人 脚本 新藤兼人
撮影 黒田清巳
音楽 林光  美術 赤坂太郎

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